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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第128話 セイ、こいつはスピロの作戦だ

 コリントスの戦車の妨害をすり抜けた——。


 セイはほっとひと息をつきそうになったが、それで危機を脱したわけではなかった。今度は真横に並んできた戦車が、セイの戦車をさらに外側に送り出そうと、外に幅寄せをしてきた。

 テーベの戦車だった。

 さらにセイにまんまと前に抜けられたコリントの御者がいきりたって、うしろからセイの戦車を突き上げんばかりに接近してくる。

 もうすぐ折り返し点の標柱にさしかかる。


 このまま外側に追いやられたら、曲がり切れない——。


 そのときセイは、南の土手にある『タラクシッポス』の祭壇の上に暗雲のようなものが集まっているのに気づいた。その雲が千々にみだれ、なにやら形づくりはじめた。

 はっとして真正面に迫ってくる観客席のほうに目をむけた。かなたに群衆のなかから頭ひとつ抜きんでてみえるマリアの姿が見えた。マリアは腕をつきあげて、なにかをしようとしていた。

 ふと、セイはレース前にマリアが自信満々に声をかけてきたことを思い出した。


『いざというときはオレがセイを助けてやるぜ。観客が大喜びするようなやり方でな』

『なにをするつもりだい。無茶してレースが中断されるのは勘弁だよ』

『まかせておけ、セイ。こいつはスピロの作戦だ』

『スピロの?』

『あぁ。だから中断どころか、観衆は大興奮間違いなしだ』


『セイさん、馬の目をそらしておくんなさい』

 ふいにゾーイの声が頭に響いた。

 それだけでマリアがなにをしようとしているかわかった。セイはあわてて馬を内側にむけた。無理は承知だったが、右側の土手から馬たちの目を反らす必要があった。

『ゾーイ。マリアをとめてくれ。ボクの馬も巻き込まれる!』

『大丈夫さぁ。セイさんの馬の目には遮眼革(ブリンカー)』が取り付けられてるからね』

 言われるとおりセイの馬の目には視野を狭める『遮眼革(ブリンカー)』が取り付けられていたが、それでも不安があった。

 セイがすこしでも馬の目を南側の土手から反らそうと、進路を内側にむけた。が、テーベの戦車が、セイの車体に自分の戦車をこすりつけてきた。外側にはじき出すつもりだ。

 その時だった。隣のテーベの戦車の馬がいなないたかと思うと、ふいに馬たちが内側のほうにからだを向けた。


 御者はコントロールがきかなくなった馬の動きにとまどっていた。


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