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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第101話 おまえはあの白い馬の戦車に乗れ

 競場場に近づくにつれ、かなたから馬のいななきと人の叱咤(しった)する声が聞こえてきた。

 スピロはさきほど視察に訪れたときと、競馬場の様相が変わっていることに刮目(かつもく)した。何台もの四頭立ての馬車(テスリッポン)がそこで練習している様子がそこにあった。競技を翌日に控えて、どの御者も最後の調整に余念がないようだった。

 競馬場のトラックに足を踏み入れると、ひとりの男が近づいてきた。『キスティス』を着ていたので御者であることがすぐにわかる。


「おまえが、ニッポンのセイか」

 屈強な腕をこれみよがしに見せつけるように、腕組みをしながら男が尋ねてきた。

「はい。ぼくがセイです」

「おれは御者頭のルキアノス。アルキビアデス様からおまえの面倒をみるよう仰せつかった。ほんとうに面倒このうえないが、アルキビアデス様からの命令だ」

 そう言うとルキアノスは、競馬場(ヒッポドローム)の一角を指し示した。

「セイ、おまえの馬はあそこに用意しているあの白い馬の戦車だ」


 ルキアノスが指し示すほうを見ると、四頭立ての馬車(テスリッポン)があった。馬は白い毛並みの凛々しい姿で、ひとめで駿馬(しゅんめ)だとわかるような引き締まった体躯をしていた。それは素人のセイにもわかったようだった。

「いい馬そうだね?」

「あぁ。アルキビアデス様のご命令だ」

 ルキアノスは吐き捨てるようにそう言った。

「じゃあ、とりあえず馬たちに挨拶(あいさつ)してくるよ」

 そう言ってセイはセイはひとり競馬場のほうへ向かった。が、セイが競馬場に足を踏み入れると、とたんに馬たちが荒い鼻息で威嚇(いかく)してきた。真ん中の馬がいなないて、脚をけりあげて牽制(けんせい)する。

「うかつに近づかないほうがいいぞ。気性が荒い馬なのでな」

 ゾーイはあまり協力的ではないルキアノスの態度に、皮肉をぶつけた。

「ルキアノス様。あなたはセイに勝たせたくないようですね」

「ばかばかしい。あの少年は素人なのだよ。勝たせたくないもなにもない。勝てっこないのだよ。アルキビアデス様の気まぐれに振り回される、こちらの身にもなってもらいたい」

「だからわざと気性の荒い馬を?」

「いいや。一番いい馬だよ。本来、あの戦車はわたしの乗る戦車だったのだからね」

「だからセイが気に入らないのですね。まぁ、馬を選ばねば勝てないというのなら、それほどの腕前ではないのでしょう」

「ほう、言ってくれるな」

「そうではないですか。アルキビアデスからあなたへの命令は、セイを戦車競争で優勝させること。そして1から3位までを独占することでしょう」

「ん、まぁ、そうだ」


「ルキアノス様、あなたが言っているのは、素人を優勝させるにこともできなければ、あの白い馬でなければご自身も3位以内に入れない。そういうことですよね」


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