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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第85話 だから、あいつは強い!

「テクニックはかなりのもののようですね」

 スピロもセイの動きから目が離せないようだった。

「あぁ、テクニックだけはな。どうやら、トップ・プロボクサーの真似だけはうまいらしい。だからボクシングジムのコーチによく怒られていたよ。強いわけじゃないが、勘がいいんだろうな」

「強くない……のですか?。そうは見えません」

「真剣に練習したらアマチュアボクシングなら、まぁいいとこまでいくと言われたらしい。だけどヤツはボクシングだけじゃなく、剣道や古武術のような武道も習ってるからな」

「なぜ、そんなにいろんなものを?」

 スピロが怪訝(けげん)そうな顔をしたので、マリアはスピロのほうを見てから言った。


「双子の妹、夢見・冴を救うためだよ」


 マリアはあのネロのドムス・アウレア(黄金宮殿)で、ほんのひととき会った夢見・冴の姿を思い出しながら続けた。

「あいつは、この世界に(とら)われの身になっている妹を救うために、現実世界で並々ならぬ努力をしている……」

「セイ様がボクシングや武道をやってるっているのは……」

「この世界で誰にも負けないためだ。やつは現実世界で鍛えた体と精神、身に付いたテクニックが、こちらの世界で大きな力になると信じてる……。そしていつか妹を助け出せる『自分』を信じている……」


「だから、あいつは強い!」


 エウクレスが右、左と続けざまにフックを振り回して、セイに迫ってくる。そのパンチの威力は風切り音がするほどのパワーだったが、いいように振り回されて、なかばムキになって繰り出しているように見えた。


「いけぇ。エウクレス!」

「一発あたれば、その小僧の頭は吹き飛ぶぞぉぉ」

「殺せぇぇぇぇ」

 狂気じみた声援に押されてエウクレスのパンチはスピードを増してきた。だがそのパンチはセイにかわされて、ことごとく空を切る。

 エウクレスは次第に肩で息をするほどに疲れはじめてきた。

「エウクレス、なにやってやがる!!」

 その檄が飛んだ瞬間セイがしかけたのがマリアにはわかった。

 セイがドンと足を前に踏み出して、からだを突っ込ませる。エウクレスにとっては、待ってましたというタイミング。おおきくセイにむかって腕を振り抜く。

 それがセイの狙いだった。


 フェイント——。

 この時代のボクシングにはないテクニックだった。

 一気にセイが体をうしろにひく。が、セイの動きにつり出されたエウクレスは、パンチを止められない。からだのバランスが崩れたエウクレスのパンチの下から、セイはカウンターでレバー(肝臓)打ちをねじ込んだ。しかも立て続けに二発——。


「スイングブローはカウンターをもらいやすい!」

 スピロが興奮のあまり、思わず声をあげた。


 エウクレスが悶絶して、前のめりになる。そこを逃さず、右腕で打ち下ろしのストレート、そしてすぐさま左腕のアッパーでエウクレスの頭を貫く。左右のコンビネーションが決まった。

 その瞬間、エウクレスのラッシュが突然とまった。


 突然電源がオフになったように、すべてのモーションがストップした——。

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