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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第83話 あれはヒップ・ホップの動きですね

 その瞬間、マリアは思わず「あっ」と叫んでいた。 


 エウクレスの強烈な肘打ちをまともに喰らったセイは、数メートルうしろへ吹き飛ばされ、白い砂をはね上げながら、ごろごろと転がっていった。

 あれだけの体格差では、たった一撃が命とりになると聞かされていたので、セイが実際にぶっ飛ばされたのを目のあたりにして、思わず声をあげてしまった。

「まずい。セイが殺されるぞ!」

「マリア様お静かに!。大丈夫です」

 マリアをスピ口が一喝した。

「セイ様はしっかりとブロックをしています」

 ハッとしてマリアが、はね飛ばされた方を見ると、ゆっくりとセイが起き上がるのが見えた。からだに付着した砂をはたき落としながらセイが呟くのがきこえた。

「あぶない、あぶない」

 そこには今の一撃で何のダメージもくらってないという余裕を(にじ)ませていたが、マリアはそれが虚勢であるとすぐにわかった。からだについた砂をはらっている腕が真っ赤になっていたからだ。

「腕が折れたりしてねえだろうな」

「いくら防いだと言っても、今のは肘打ちでしたからね」

 だがマリアたちの心配は杞優(きゆう)だったようで、セイはすぐさまファイティングポーズをとった。シャープなフットワークで近づいていく。

 

 プラトンがセイの足さばきに魅入られたのか、おもわず感嘆の吐息をもらした。

「それにしても何と敏捷(びんしょう)な動きなのでしょう。まるで舞い踊っているようです」

「セイ様の動きですか。あれはどうやらヒップ・ホップの動きですね」

「ヒップ・ホップ?。それはなんですか?」

 聞き慣れない用語に、プラトンはまた興味をかき立てられたらしいが、マリアも驚きの声をあげた。

「ヒップ・ホップ?。ってスピロ、本当か?」

「ええ、まちがいありません。4ビートの裏打ちとよばれる2拍目と4拍目でパンチを打ち出していますから」

 マリアはセイがパンチを繰り出すパンチではなくリズムの方を注視した。

 小ぎみよくジャブを繰り出しているセイの動きは、膝を伸ばした状態から曲げて沈むヒップ・ホップ・ダンスの『ダウン』という動き方だった。

「基本的にベタ足に近いこの時代の人には、あのリズムはやりずらいでしょうね」

「だったらセイはいけるじゃねぇか」

「どんなに技術がすぐれていても、あの階級のパンチが直撃すればそれだけで終わりです。手数が多い方が勝てる近代ボクシングなら、わたくしもなんの心配もしておりません」

 そう聞いてマリアはこのボクシングの勝利の条件を思い出した。


「そうだな。この試合はどちらかがギブアップするか気絶するまで続行される……だったな」


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