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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第82話 ディフェンスはまったく役にたたなかった

 セイの耳には観衆の野次が聞こえていたが、それを無視してさらにエウクレスとの間合いを広くとった。

 動きでエウクレスを撹乱し、体力を奪い、精神力をそぎ取ろういうのだ。自分の『パンチング・レンジ』での戦いに徹しなければならない。

 エウクレスはファイティングポーズのまま、じりじりとこちらへ近寄ってくる。それにあわせてセイは、すり足気味のフットワークでうしろへ距離をとる。


「逃げんじゃねぇぞぉ」

 どこからかひときわ大きな野次が聞こえたときだった。突然、下がろうとして引いた足になにかがあたった。硬いなにかが膝のうしろにあてがわれている——。

 ハッとしてセイが足元に目をやると、背後に審判が立っていた。審判は杖をセイの膝のうしろにおしあてていた。

「これ以上、うしろに下がるな!」

 審判がそう警告する声が左耳のほうから聞こえた。が、それと同時に右耳のほうには風のスピードで飛込んできた『死』の気配も聞こえた。


 エウクレスがからだを宙に踊らせて、セイに殴りかかってきていた。

 体重を乗せた渾身(こんしん)の一撃。


 一瞬、審判に気をそらされたことで、反応が遅れた。

 セイはからだをおおきく沈めた。ローリングで頭をぐるんと回す。ぎりぎり避け切れるかどうかの間合い。が、そこからふいにパンチが伸びてきた。


『ボラード(ロング・フック)!!』


 予想外なほど伸びてきたフックを、セイは上半身をスエーバックして避けようとした。だが、前傾姿勢で突っ込んできたエウクレスは、そこから身体ごとぶつかるようにして上腕と肘をセイに打ち込んできた。

『肘打ちだとぉぉ』

 セイはピーカーブー・スタイル(両肘をがっちり固めて腕で壁を作るスタイル)で両腕を顔の前に固めてブロッキングした。


 が、その程度のディフェンスはまったく役にたたなかった。

 体重が乗った横殴りの肘打ちがヒットする。まるでバットで殴られたような衝撃がセイの腕の骨をきしませる。

 

 次の瞬間、セイのからだはそのままうしろに弾き飛ばされて、ごろごろと地面を転がっていった。


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