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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第81話 おれたちはダンスを見にきたわけじゃねぇぞ!

 セイはすり足気味で前後にからだを、ステップインとバックステップを交互に繰り返しながら、エウクレスの攻撃に備えた。

 が、その動きがとても奇異に映ったのか、だれかが失笑気味に大声をあげた。


「なんだ?、ありゃ。あのガキ、踊りはじめたぞ」

「そこのガキぃ、おれたちはダンスを見にきたわけじゃねぇぞ!」


 そこへエウクレスが左腕をぶん回して飛込んできた。

 セイはそれをサイドステップでいなすと、今度は顔から腹への上下のジャブをリズミカルに打ち込んだ。エウクレスはそのパンチにすこしのけ反りながら右腕をつき出してきたが、そこへカウンター気味にストレートをあわせた。パーンといい音がして、エウクレスの顔が横にねじれる。

 ドッとどよめきが湧きあがるが、エウクレスはびくともせずにそこにとどまって、セイを睨みつけてきた。


 くそぅ、砂地に裸足じゃあ、パンチに力がはいらないか——。

 こうなりゃ、やっぱ手数で勝負するしかないね——。


 セイは上体を前後にふるようにしてステップインした。エウクレスがそこへパンチを浴びせようとしたが、そこからあっという間にサイドチェンジして、体を入れ替えると、すかさず上下のコンビネーションを放つ。今度は体重がのったパンチがエウクレスのレバーと顎にヒットした。

 が、エウクレスはそれを待っていたかのように、パンチを返してくる。セイは左右に上体を揺らして『ウィービング』でパンチをかわすと、かなり近いレンジでジャブを2発立て続けに送り込む。

 軽いパンチとはいえ、好き勝手打ち込まれて、エウクレスの顔つきが変わった。


「この小僧。ほんとうにぶっ殺してやる」


 エウクレスはパンチをぶん回しながら突進してきたが、その攻撃スピードにあわせて、セイはうしろに下がっていった。

 相手の『パンチング・レンジ(パンチが当たる範囲)』に決して入ってならない。特にエウクレスのように一撃必殺とも言えるパンチは、一発当たった瞬間に雌雄を決する。セイはリングもロープもないことを利用して、すこしでも遠くに離れることにした。エウクレスにすこしでも追わせて、疲れさせる作戦だった。


「おいおい、少年、逃げ回っているんじゃねぇぞぉ」

「どこまでいくつもりだ——」


 セイの耳には観衆の野次が聞こえていたが、それを無視してさらにエウクレスとの間合いを広くとった。 


 動きでエウクレスを撹乱(かくらん)し、体力を奪い、精神力をそぎ取ろういうのだ。自分の『パンチング・レンジ』での戦いに徹しなければならない。



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