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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第80話 下の毛も生えてねぇ少年でも容赦しねえぞ!

  審判は自分のことばに耳を貸そうともしない態度を目の当たりして、セイは見えない力がこの場を支配していると、あらためて感じた。

 つまりは、自分が殺されかかっても、審判は当然のごとく試合をとめないということだ。


 審判から試合開始の合図がかかる。

 エウクレスはすぐに飛びかかってこなかった。まずは拳をかまえたまま観衆にむかって、雄叫びのような声をあげた。

「おれ様は下の毛も生えそろっていねぇ少年でも容赦しねえぞ!」

「ちょい待ち。もうこれでもしっかり生えそろってるよ」

 聞き捨てならないことばに、セイがきっちりと抗議したが、エウクレスはかまえたグローブの合間からセイの股間に目をやった。

「ほう、それでか?。だが、なかなかにおいしそうだ」


 セイはとたんにゾクリとした。エウクレスが残酷な笑みを顔に刻みながら言った。

「おまえのはれあがった唇にあとでキスしてやる。そして、そのあと、たっぷりかわいがってやるぜ」

「わるいけど、ぼくにはそういう趣味はなくてね」

「それは好都合だ。そういう未開発の少年に、良さを教えてやるのが、おれ様の好みなのでね」


 そう言うなりエウクレスがフックを打ち込んできた。当たれば首から上が吹きとぶような渾身(こんしん)のパンチだったが、セイは「スウェーバック』で体をうしろにそらして、それをかわすやいなやワンツーのジャブを軽く叩き込んだ。


 うおぉ……と感嘆するような声が場内から漏れる。

 一度ならず、二度までも、エウクレスの顔にパンチが打ち込まれたのだ。打たれたエウクレスよりも、むしろ観衆たちのほうがとまどっていた。


「おい、おれたちは夢でも見てるのか」

「エウクレスがまた殴られたぞ」

「あいつは一度も顔を殴らせずに勝ってきたヤツだぜ」


 エウクレスの顔がまた怒りに赤く染まりはじめる。

「きさま。殺してやる!」

 セイは腰の重心を上にあげると、アップライト・スタイルの構えをとった。

 左腕をおりたたみ、拳は顎の下に、右手はすぐに前に突き出せるようにぶらぶらとさせる。アウト・ボクサーのオーソドックスな構えだ。

 だが、この時代にそのような構えは存在しないので、相手にはどういう意図があるのかがわからないはずだった。


 『ヒット・アンド・アウェイ』を信条とする『アウトボックス』は、相手と距離をとり、効率よく手数をヒットさせ、ポイントをとるためのスタイル。相手を力でねじ伏せる従来型の『インファイト・ボクシング』とは動きがちがう。

 

 セイはボクシングの歴史を変えた『アウトボクシング』を開始する準備にはいった。

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