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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第79話 賞金首になってるかもしれねえんだ

 思った以上に恥ずかしいな。

 四万人もの大観衆に囲まれて裸身を(さら)すというのは、セイにとっては抵抗感があるという範疇(はんちゅう)を超えていた。

 たしかに昨日も素っ裸で三つの競技をこなしはしたが、それは自分の体ではなく、タルディスの姿であるという自覚があったからできたことだ。セイは経験がなかったが、コスプレしてはっちゃけるのと、素顔を晒らしてやることのちがいのようなものかもしれない。


 観衆たちはロードスのエウクレスの味方だった。伝説の英雄ディアゴラスの孫であり、父、叔父も全員がオリンピック・チャンピオンという由緒ある血をひく、英雄の正統な後継者なのだ。


「決勝をだいなしにした小僧に思い知らせてやれ」

「少年の美しい顔がぐちゃぐちゃになるのを見せてくれ」

「相手が子供でも手を抜くんじゃねえぞ」 

 様々な声援や怒声がとびかっていたが、およそセイに好意的な発言は聞こえてこなかった。


 完全アウェーか——。


 セイは送り出される前にスピロが言っていたことを思い出した。

「ここからはおそらくタルディス様の命を狙うこと同様、わたくしたちの命も狙ってくることが予想されます。なかでも特にセイ様、あなたの命を……」

「なんで、ぼくの?」

「バカか、セイ。おまえはすでにハマリエルとウェルキエルという、黄道十二宮の悪魔を(ほふ)ったんだぞ。ヘタするとあいつらの世界じゃあ、賞金首になってるかもしれねえんだ」

「賞金首——、って。ぼくの首になんの価値があるっていうんだい」

「そんなのは知らねぇ。だが人間の魂をポイントみたいに集めて、魔王復活を目論んでる連中だ。なんだってアリだろうがぁ」

「マリア様の言うとおりです。もしかしたらこのオリュンピアで活躍したことで悪魔に察知されて、セイ様がターゲットに代わった可能性は排除できません」

「やつらからすると、リグレット(未練の力)が使えねぇ、今の状態はやつらにとってはおまえを(ほうむ)るチャンスなんだよ」


 セイは自分にまったくむけられることのない声援の嵐の中、ゆっくりと前に歩を進めた。

 審判がルールを再確認した。

「どちらかが倒れて気を失うか、右手の人さし指をあげて降参の合図をするまで勝負は決しない。指を伸ばして突かない。とくに目などのやわらかい場所への攻撃は反則だ」

「さっきタルディスさんは気絶していたのに試合はとまらなかったようだけど……」

 セイは皮肉を当てこすったが、審判はそんな抗議など聞こえていないかのように「いいな」のひと言のもとに強制終了された。

 

 なるほどそういうわけね……。


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