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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第77話 この時代になかったボクシングをやる

「どれだけ?。そうですね……。わたくしたちの世界でのボクシングでは体重差によって二十近くも階級がわかれています。おそらくセイ様とエウクレスはおそらく5〜6階級はちがってるでしょう」

「スピロ、それだけ違うとどンだけ、力の差があるってことになるンだ?」

「マリアさん。ニュートン力学では、運動エネルギーは『質量×速さ×速さ÷2』ですので、パンチのスピードがおなじなら単純に1・4倍違います」


「ま、まぁ、その程度、なんとかなるんじゃねぇのか」

 マリアがそれくらいなんとかしろ、という顔でさりげなく言った。


「残念ながら圧倒的な差になるのです。たとえば成人男性のパンチ力は40Kg程度ですが、同等の体重のミドル級の選手は200kg以上あります。おそらくセイ様もここに属するはずですが、残念ながらヘビー級のエウクレスは、800kg程度はあると思われます」

 数字で比較されてその差が実感できたのか、マリアが思わずごくりと唾を飲んだ。

「ほんとうに、圧倒的じゃねぇか……」

「ふん、そんなことわかるものかね。そのニュートンなんとか、というまやかしのような計算式がどれだけ当てになるものか……」

 ソクラテスが不審げな目をむけてきた。スピロは考えることもなく「たしかに。ですがこの世は『数字』が一番間違いありませんから」と反射的に言い返したが、ソクラテスはさきほどの『プラトン哲学』のことを想起したのか、たちまち機嫌がわるくなった。

「ふん、また『数字』かね」

 そのことばを聞いたプラトンが、すくなからず恨みがましい視線をスピロのほうへむけてきた。さきほどの件を蒸し返されたのが、心底参ったという顔つきだった。

 だが、スピロにそれに言い訳する気も、詫びを入れる余裕もなかった。

「セイ様、タルディスさんの意識がない以上、あなたはふたたび一介の高校生の力で戦わねばなりません。いくら現世でボクシングをたしなんでいても、一発喰らうだけで『ジ・エンド』です。もし危ないと思ったら、右手の中指を立てて『ギブアップ』してください」

「そんなので試合がとまるとは思えないし、ぼくは負けないから大丈夫だよ」

「セイ、オマエ、なんでそう言い切れる?」

 自信に満ちたセイの様子に返って不安に思ったのか、マリアが素直に訊いてきた。いつもの意地悪げな口調はそこにはない。


「だって、ぼくは今からこの時代になかったボクシングをやるつもりだから」


「この時代にないとはどういうことです。ボクシングはただの殴りあいでしょう」

 プラトンが前のめりで訊いてきた。ソクラテスの怒りの視線をすこしでもかわしたいという意図がありありのポーズのように思えた。

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