表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
188/932

第76話 体格の差というのは圧倒的です

「やれやれ困ったことになりました」

 スピロがセイのこぶしに、雄牛の革(ヒマンテス)を巻きながら言った。その横にはあわててやってきたマリア。そして一緒に連れ立ってきたプラトンとソクラテスが囲む。

 セイがタルディスを救いうため大騒ぎをおこしたことでスピロの計画も作戦も少々ではあったが変更を余儀なくさせられることになった。どうやらその不満げな気持ちが顔に浮かんでいたのだろう。セイがひたすら申し訳なさそうに頭をさげてきた。

「ごめん、スピロ。いろいろ作戦があったんだろう。台無しにしちゃったね」

「ご心配なく、セイ様。このような邪魔やアクシデントは、折り込み済です」

 そうは言ったものの、セイ自身がリグレット(未練の力)なしで、ふたたび競技に参加するはめになることは想定外であった。おなじようなアプローチはしてこない、と高を括って別の可能性に神経を尖らせていただけに、スピロにはしてやられた、という思いがこみあげてならない。

 セイは背中をむけているボクシング場の方を目で指し示しながら訊いた。

「で、タルディスさんは?」

 すぐに横からプラトンが答えた。

「今、イアトレイア(医療施設)のほうに運び込まれているはずですよ」

「それは、どこです?」

「このスタディオンとヒッポドゥロモ(戦車競技場)のあいだにある『ギリシア住宅』と呼ばれる場所です」

 スピロがぎゅっと革ひもを引き締めながら言った。

「ご安心を。ゾーイとエヴァ様をむかわせました。ヒポクラテス様も一緒です」

「ヒポクラテスさんも?」

「当然だろ、セイ。あいつは医者の端くれだぞ」

 マリアがこともなげに言ったが、スピロは心配でならなかった。

「かなりしたたかに殴られましたからね。脳に障害でも受けてなければ良いのですが」

「は、スピロ。案じたところで、なるようにしかなんねぇだろ。この時代にゃ、CTスキャンやMRIなんかねえんだから」

「まぁ、そうですが…;」

 スピ口がため息をついたところでソクラテスが尋ねてきた。

「で、スピロどの、セイさんはあのモンスターに勝てるのかね?。かの英雄ディアゴラスの直系の孫に」

「ソクラテス様。それはわたくしにもわかりません。勝てる、と言いたいところですが、あまりに体格差がありすぎます。おそらくエウクレスは、11ベキュス(2メートル)はあるでしょう。セイ様も10ベキュス(1メートル80センチ)はありますが、体重差はどうやっても埋め切れません」

「体格なんかちがっても、顎をとらえればなんとかなるだろうて」

「当たれば、ですよ。ですが、逆に相手のパンチを当てられたときは、体格の差というのは圧倒的です」



「どれくらいちがうものなのですか?」

 プラトンが目を輝かせて、その答えを知りたがった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ