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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第71話 タルディス対エウクレス

 ゾーイはトゥキディデスの表情と、ボクシングの戦いを交互に見ながら、なにか怪しいところはないかとつぶさに観察していた。


 だが、【悪魔の証】と言える不穏な言動はみることができなかった。

 タルディスがこざかしく逃げ回る相手を一撃で倒したときは、喚くような歓声をあげてその興奮を隠そうともしなかったし、エウクレスの圧倒的な強さには、おもわずため息をもらして感嘆した。

 それはおおむね、ほかの観客とおなじような反応で、ゾーイにはおよそ歴史学者とは思えない、はしゃぎっぷりに逆に驚かされるばかりだった。


「ゾーイさん。今回はタルディスとエウクレスの決定戦で決まりのようだね」

 興奮に息を弾ませながら、トゥキディデスはゾーイに語りかけてきた。まるで自分が選手として戦っていたかのような息の弾ませようだ。だがそれもそのはずで、トゥキディデスだけでなく、まわりの観客の多くは声を張りあげて応援をしながら、試合中ずっとからだをかがめたり、上下左右に動かしてパンチを避ける動きをしていた。

 これでは疲れるにきまっている——。


「えぇ。トゥキディデスさん。素人目にもあの二人が飛び抜けてるってぇのは、あたいにもよくわかるってもんさ」

「これはすぐにでもどちらがぶっ倒れて勝負が決まるだろうな」

「そりゃ、そうだろぅさ。だって、このボクシングはギブアップするか、気絶でもしないかぎり終わらないんだろ」

「いや、もしどうしても勝負がつきそうになかったら、殴りあいで決めるんだよ」

「殴りあい?。だってボクシングってぇのは、殴りあいじゃないのかい?」

「そうじゃないのだよ。勝負がどうしても決しない場合には、お互い順番に無抵抗の相手を殴りあったのだよ。それで倒れたほうが負けになるのさ」

「そりゃ、まったくむちゃくちゃじゃないかね。どうやっても先行が優位だろうよ」

「まぁ、死人がでることもあったというからね」


 タルディスとエウクレスが試合場になっている砂場に現れると、不戦勝が続いて不満だらけの観衆から、ことさらおおきな拍手と声援がとんだ。

「エウクレス。『ペリオドニコス(周期の勝者)』を狙えぇぇ」

「タルディス。アテナイに二つ目の『オリーブの冠』を頼むぞぉぉぉ」


 ゾーイは声がかき消されそうな周りの喧騒に負けないように大声をだして聞いた。

「ちょっとぉ、トゥキディデスさん。あなたはどちらを応援してるんだい?」

 トゥキディデスは大声をはりあげてゾーイに返事を返した。


「アテナイ生れの者としてはタルディスだが、歴史学者としてはエウクレスだ!。アテナイの栄光はぜひ欲しいが、『ペリオドニコス(周期の勝者)』の誕生も目の前で見てみたいところだ」


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