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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ1 化天の夢幻の巻 〜 織田信長編 〜
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第18話 信長公におかれましては、お覚悟を!

 その時、鉄砲部隊と弓隊がわらわらと敷地内に入ってきた。

 総勢で百人はいなかったが、寺の境内に(たむろ)するにはいささか多すぎる人数で、信長たちがいる庭は、たちまち敵兵に埋め尽くされた。鉄砲隊はすぐに前に進み出ると、その場に膝をつき鉄砲筒を水平に構えた。そのうしろには立位のまま弓に矢をつがえる弓隊が控える。

 その無駄のない見事な動きは、本物の戦場で命懸けで鍛え抜かれたものなのだろう。

 隊の責任者らしきものが一歩前に足を踏みだし、信長の顔をみて言う。

「我が名は惟任日向守これとうひゅうがのかみ(明智光秀)の先鋒、三宅孫十郎……」

「信長公におかれましては、お覚悟を!」


「そうはいかないよ」

 セイがポケットに手を突っ込んだまま、ポーンとジャンプしながら言った。

 セイのからだは上空をふわりと浮いたかと思うと、おおきな円弧を描きながらゆっくりと降りてくる。天空から降りたったかのようなセイの姿に、おもわず孫十郎がひるんだ。

「き、貴様、なにものだ?」

「信長さんをちょこっと助けに、未来からきた者だよ」

 そのすぐうしろにエヴァとマリアがぴたりと張り付いて、正面に立ちはだかった。

 孫十郎が信長にむかって叫ぶ。

「信長様、往生が悪すぎますぞ。小姓や稚児を盾にされるとは!」

 マリアがギロリとした視線を、孫十郎にむけて悪態をついた。

「おい、そこのくそったれ、だれが稚児だ」

 マリアが汚らしいことば遣いで罵倒したが、孫十郎はそれを無視して、ことさらに優しげな表情を作ってマリアを手招きをした。

「そこの稚児、危ないぞ。こちらへこられよ」

 うんざりとした表情のマリアが、エヴァのほうに顔をむけた。

「おい、エヴァ。あれ、オレが()っていいか?」

「マリアさん。あなたは信長様の護衛を頼まれたのでしょ」

 そう言うと、エヴァは手を前につきだして、手のひらを下にむけた。一瞬にしてその手のひらから、雷のような閃光がまたたいたかと思うと、その足元にミニチュアサイズの『拳銃』が転がっていた。

「わたくしが代わりに成敗しますから、お待ちください」

 エヴァがその銃をつま先で真上に蹴り上げると、ぼわっとおおきな煙が立ち昇った。その煙のなかから、とんでもなくおおきい銃がぬっと現れた。

 取り巻く者たちのあいだから、どよめきの声があがった。

 敵兵たちからは目を疑うような所業に思わず怯んだ驚愕の声。

 信長たちは目を見張る光景に思わずあがった驚嘆の声。

 銃の砲身はゆうに人間とおなじほどの長さがあった。拳銃の形こそしていたが、サイズは大砲と言っていい。だが、いたるところから拳銃にも大砲にもない把手のようなものが出ていて、どう見てもオートバイにしか見えない。車輪もなく空中に浮いている上、正面のカウルのど真ん中に、吸気口らしき大きな穴があいたバイク。

 エヴァがひらりと軽やかな動きで、砲身の上のシートにまたがる。

「エヴァ、またこの世に存在しない武器を創ったね」

 セイがいくぶんあきれたような口調で、エヴァに言った。

「セイさん、これは『ピストル・バイク』。どこの世にも存在しない武器ですわ」

「エヴァ、なんでもいいから、あのおっさんに吠え面をかかせろ」

 マリアがしびれを切らしたように、エヴァをせかした。

 エヴァはマリアのことばに返事をすることもなく、ハンドル部分についたトリガーに指をかけると、思いっきり引いた。


 ズドーォオオン。


 地響きのような音をたてて、オートバイの正面の吸気口と思われた穴から弾丸が発射された。バイクの後部テール部分から生えている何本もの排気用マフラーから、一気に排気が吹き出す。うしろにいた信長たちにもろに吹きかかり、みな思わず顔を覆ったり、そむけたりする。

「な、なんじゃ、今のは?」

 信長が叫んだが、目の前の光景をみて、おもわず目をみはった。


 一瞬にして銃口の前にいた武士たちが消し飛んでいた。あたりの木々はなぎ倒され、灯籠は砕け散り、塀は影も形もとどめないほどに壊れ、大きな穴が開いていた。

「な、なんと……」

 信長は呆然として、そのあとのことばが続かないようだった。だが、その様子を横目で見ながら、マリアががっかりとした声色でエヴァに文句を言った。


「おい、エヴァ。さっきのおっさん。跡形もなく消し飛んじまったんで、吠え面、見れなかったじゃねぇか」

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