表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
168/932

第56話 ヒポクラテスとの対話3

 「いいえ……?」


 セイの思いがけない返事に、ヒポクラテスが目をむいた。

「役に……たたなかった……?」

「医療には、です。ただ、おおくの未来の女性たちを輝かせてくれました」


「女性たちを輝かせる?」

「えぇ。あなたの『ハーブ』の治療方法は、『ハーブ・ティー』や『アロマ・テラピー』と呼ばれています。海水を使った入浴は『タラソ・セラピー』、泥を使った療法は『クレイ・セラピー』、そして『胎盤』を使った治療方法は『プラセンタ療法』と言われていて、多くの女性の美容と若返りに、しっかりと受け継がれています」


 ヒポクラテスは面喰らった様子で、目をぱちくりさせた。

「美容と若返り……だとぉ」

「えぇ。世の女性たちは、これがあなたの功績と知らずにその恩恵に浴していますよ」

「医療ではなく、美容と若返りなのかね……」

「でも、これはすごいことなんですよ。クレオパトラ、マリー・アントワネット……といってもわからないでしょうが、そのあとの歴史を変える力をもった多くの女性も、あなたの療法の(とりこ)になったのですから」


「そうか……」

 ヒポクラテスはすこし脱力したように嘆息した。

「400種ものハーブを使った療法を考案したのだけどな……」

 そう漏らしたヒポクラテスの顔はなぜか晴々としてみえた。

 自分が成したことを未来からきたという人物に、面とむかって語られれば誰だって驚くはずだ。だが、どういう形であれ、未来に受け継がれ続けていると聞かされれば、なにかしら思うところはあるだろう。

 それがどんな気持ちなのかはセイにはわからなかった。自分の成した業績に対する誇りや達成感なのかもしれないし、無意識のうちに自分を縛りつけていた足かせがはずれた解放感なのかもしれない。 


「でも、ハーブの一部は今も薬の原料として使われています。ちゃんと医療にも使われていますよ」

 セイが遅ればせながら、付け加えた。


「だが、きみらの世界では、いながらにして遠くの患者を手術したり、からだの中身を透視したりできるのだろう。おそらく薬も、おそろしく進化しているに違いない。それにわたしは、どの病気にはどのような薬が効くかを知ることができたが、それが『なぜ』きくのかがわからなかった。きみらの世界では、それもわかっているのだろう」

「えぇ。そうですね。科学的根拠(エビデンス)がなければ、薬として承認されませんから」

「興味深い……」


 ヒポクラテスが真摯な顔つきで、セイのほうに向き直った。

「セイどの。わたしの護衛などと堅苦しいことはなしにしてくれないか」

「いえ、でも……」


「きみの知っているかぎりでいい……


 もっと未来の医学の話を聞かせてくれないかな」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ