表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
163/932

第51話 圧倒的な信頼感はどうしたということだ

 スピロはセイが気分を害してないかと心配したが、セイはそんなのはどこふく風とばかりにその先を催促してきた。

「で、スピ口。君の正攻法とはどういうことなんだい」

「悪魔が内包する一種の矛盾をついてやるのです。それだけで取るに足らない悪魔は消えうせますし、能力の弱い悪魔は正体が割れます。正体を現わした悪魔は人の邪心を利用できず、力をうしないますので、そこを武器で叩くのは造作もないことです」

 セイはそこまで聞いて、解せないという顔で言った。

「スピロ、ぼくが出会った悪魔は、ほとんど自分から正体をさらけ出してきたけど……」

「は、セイ。それはおまえンとこに集まってくる(やから)が、中級や上級悪魔ばかりだからだよ。そいつらはみずから名乗り出ても、屁とも力が弱まらねえ、嫌ンなるほど強いヤツばかりだ」

 マリアがうんざりとした様子で説明をかました。スピロはマリアの横槍が当を得ていると思ったが、あまりに気配りのない言い方に、セイが緊張したり怖じ気づいたりしてないか気になった。

「なんだ。そういうこと?」

 セイがあっけらかんとして言った。

「ああ、そういう巡り合せなんだよ。セイ」

 マリアがそう念をおすと、セイは満面の笑みを浮べて言った。


「よかった。強い敵なら、たぶん、冴を助けるのに近道じゃないか」


「まあ、そういう考え方もありですわね。セイさん」

 エヴァが屈託もなく、それを肯定した。


 スピ口はすこし動揺した。沈着冷静であることを『一丁目一番地』とする自分にとってあってはならないことだった。だが、セイとマリア、エヴァの尋常ならざる余裕と、圧倒的な信頼感はどうしたということだ。


 自分の知っているマリアは力で何でもごり押しするタイプで、自分とは真逆のダイバーだったはずだ。一度、ひと言ふた言かわしただけだったが、それだけで絶対にお互い相入れない相手だとわかった。

 己の腕だけを盲信して、人を信用しない野卑な女——。

 自分がもっとも苦手できらいな種族だった。


 それにエヴァも自分が以前会った時とは雰囲気がちがっている。

 資産家の娘ならではの一種の近寄りがたさと不愉快さを、フレグランスのようにその身にまとわせている鼻持ちならない女、というのがスピロの第一印象だった。さらに加えて、目的のためなら手段を選ばない冷淡さを、会話の端々で感じ取った記憶もある。どちらにしてもポジティブな感情はもてなかった。

 だが、今回、一緒に行動してみて、やや自分本位で空回りするところがあったが、彼女は実に協力的だった。『使命』ではなく『職務』としてダイブしているのは知っていたので、どこかしらドライに割り切ってはいるとは思っているが、ここまでのところ、実に『コ・オペレィティブ』な態度で、自分なりの役割をきっちりと果たしている。


 そこまで考察してスピロははたと気づいた。セイをじっと見つめる。


 この男なのか——。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ