表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
160/932

第48話 それはトップシークレットですよ

 スタディオンを一周しながら、勝利の祝福を受けているタルディスの姿。

 観衆から投げ入れられるお祝いの印『フュロボリア』。

 土手からなだれ込んでタルディスのからだを触る人々の群れ。リボン(タイニア)を、タルディスのからだに結びつける人々。

 歩を進めるタルディスとともに動いていく人々の波。

 そして、審判長から頭にリボン(タイニア)を巻かれるタルディス——。


「ウィニング・ランのあと、タルディス様にリボン(タイニア)を結びつけた審判長の可能性はどうでしょう?」

 エヴァが考えられる可能性を提案すると、ゾーイがそれに反応した。

「ないとは言えないけどねぇ。悪魔が身を潜めるには、あまりに非力じゃないのかい?」

 ゾーイがそう言うと、マリアもそれに同意をよせてきた。

「オレも同感だ。オレの経験で言えば、要引き揚げ者の前世は無名の市井(いちい)の人間だが、悪魔が宿っているのは、無名ではないヤツだ。まぁ、とは言え、有名な歴史的人物でもねぇがな」

 エヴァはすかさずスピロに見解を求めた。

「スピロさんはどう思われます?」

 スピロはすこしだけ呆れたような目をエヴァのほうへむけてから言った。

「エヴァ様、あなたこそ、この手の話にお詳しいでしょう。わたくしの口から話させるつもりですか?」

「はぁ、さすが、スピロ様。よくご存知ですこと」

 エヴァはスピロに種明かしをされて、降参とばかりに手をあげる仕草をした。

「実はこのことは『コーマ・ディジーズ財団』のほうでの分析済みなのです。その分析によれば、悪魔がこの精神世界で宿る相手は、悪魔の力の強さに反比例するらしいのです。

 つまり、力のある階級の高い悪魔は、どんなに無名の人にも入り込むことが可能なのですが、力のない低級の悪魔は、逆に高名な人物のなかでなければ、『自我』を維持できないようなのです」

「おい、おい、そいつは初耳だぜ。相当重要なことをかくしてやがったな、エヴァ」

 マリアが恨みがましい口調でエヴァを詰めてきたが、スピロがそれを一喝した。

「マリア様。この報告書はちゃんと各『サイコ・ダイバーズ』支部にも通達されておりますよ。ちゃんとお読みになりましたか?」

「はぁ、そんなメールもSNSも来てねぇぞ」

「マリア様、トップシークレットですよ。通達は紙ベースで、『読後焼却のことユア・アイズ・オンリー』と決まっていたはずです」

「んじゃあ、ぜってぇに読んでねぇな。たぶん読まずに焼いた」

 エヴァはマリアのわかりすぎるほど予想通りの反応に、すこしため息をついてから続きをはじめた。

「今回の悪魔は、わたしたちがこれだけ神経を尖らせているのに、まったく気配を気取らせません。考えられる可能性は二つです。

 感知させない力をもつ上級悪魔が、どこの誰ともしれない人に憑依しているか……

 気配を悟られないほど力のない低級悪魔が歴史的人物に憑依しているか……」

「エヴァ様、あなたはどちらだと?。どうやら結論は御持ちのようですが?」

 スピロがストレートに訊いてきた。エヴァもまどろっこしいことは嫌いだったので、すぐに答えた。


「後者ですわ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ