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ぼくらは前世の記憶にダイブして、世界の歴史を書き換える 〜サイコ・ダイバーズ 〜  作者: 多比良栄一
ダイブ4 古代オリンピックの巻 〜 ソクラテス・プラトン 編 〜
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第9話 処女のあなたには刺激が強すぎる

 オリュンピアのギムナシオンは聖域の西側に位置し、両側に19の列柱をもったドーリス様式の回廊が45メートル四方の中庭を囲むような形状で、それぞれの柱廊のうしろには部屋がたくさんあった。

挿絵(By みてみん)


 北側にはエルディオテシオン(オイルを塗る部屋)コニステリオン(粉をつける部屋)、選手たちの休憩室が、東側にはボクシングの練習場、南側には跳躍競技用の長い部屋が、西側にはレスリングやパンクラチオンの練習場があった。西と東側の部屋にはどこもベンチがめぐらされていて、観客が選手の練習の様子を見ることができるようになっている。

挿絵(By みてみん)


 ギムナシオンの入り口の前に立つと、両側にヘルメスとアポロンの像が出迎えた。入り口のほうへ進もうとしたところで、プラトンがエヴァをみつめて言った。

「エヴァさん。あなたはこの中に入らないほうがいい。処女のあなたには刺激が強すぎる」

 セクハラじみたことを面とむかって言われて、エヴァの顔がたちまち赤らんだ。あまりにふいをつかれて、怒っていいのか、恥ずかしがっていいのかわからないようだ。

「おい、プラトン。なんで、こいつが処女だって知っている?」

 まともに反応できずにいるエヴァに代わって、マリアがいきりたって言った。

「なにを怒っているんです。だって聖地に入れる女性は、未婚者と子供だけですよ。既婚者はアルフェイオス川の南側で待機しなくてはなりません」

 あっけらかんと語るプラトンの説明に納得したのか、マリアが首肯した。いや、しかけた。

「おい、ちょっと待て。プラトン。なんでオレにはエヴァとおなじ括りになってねぇんだ。おまえ、オレを子供扱いしてンじゃねぇだろうな」

 そう言うなり、手のひらを上にむけて手の中に黒い雲を呼び出そうとした。手の上で黒い闇が飛び跳ね、稲妻がバチバチと閃く。

 だが、その手のひらのうえに、セイが自分の手のひらを重ねて、放出されそうになったパワーを無理やり押し込めると、耳元で囁くように戒めた。

「マリア、騒ぎを起こさないで。オリンピックが中止になったら、元もこもない」

「セイ、一発くらい殴らせろ」

「だめだよ。今、ここは平和の祭典の真っ最中だからね」

「じゃあ、わかった……よ」

 セイの説得でマリアはすぐにしおらしくなった。

 セイはそれを聞くなり、プラトンににっこりと笑いかけて訊いた。

「さあ、プラトンさん。行きましょう」


 と、プラトンがふいに恥じらうように顔を伏せた。

「あ、いや、セイ。オリンピュアのギムナシオンはもしかしたら、女人禁制かもしれない。係員に聞いてくるので、ここで待っていただけないだろうか?」

 それだけ言うと、セイの返事も待たずに、そそくさとプラトンはギムナシオンの中へ小走りで入っていった。あまりに突発的な行動で、おいてけぼりをくらった形になったセイたちは、ぽかんとしてプラトンの背中を見送った。

「まぁ、もしかしてマリアさんが怖いことを言うから、逃げられたのかしら……」

 エヴァが言った。先ほど『処女』だと指摘されて、顔を赤らめていたのが嘘のようにけろっとしている。マリアがエヴァの変わり身に呆れながら続けた。

「バカ言え。たぶん、セクハラめいたこと言ったのを恥じて逃げたんだよ」

「マリア、エヴァ。失礼だよ。たぶんこの国の人間は入場するのに、特別なルールがあるんじゃないかな。プラトンさんはそれを確認しにいったんだと思うよ」


「は、そうは見えなかったぞ。オレはまるで恋する乙女のような恥じらいを感じたぞ」


「そうですね。さっきの私みたいに、顔が赤らんでましたもの……」


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ギムナシオンの見取り図(すべての部屋の役割はわからないようです)


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