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「あー……うむ、戦う事になった凡その理由はわかったのじゃ」


 いや、この二人マジアホじゃろ……なんか遠い場所にいる人に言われたからってだけで、いくらなんでもお互いに全身包帯でぐるぐる巻きにされてギブスだらけになって布団の上で寝っ転がるしか出来ないくらい殴り合う?


「いやー、マジで死ぬかと思ったでござる。拙者走馬灯とか見たでござるもん」


「俺も俺も。いやぁー、走馬灯でさぁ、殿が出てきて、俺を見送ってきてくれた時の光景が蘇りやがってさぁ。倒れられねぇ! って踏ん張ったら、その足を砕いてくるもんだからまいった!」


 はっはっは、と最早ミイラと見分けがつかぬハム助と岩鉄が互いを讃えるように大きく笑いあった。うーん、男の子って感じじゃ。マジアホじゃろとは思うが、ちょっとだけ羨ましくなるのは何故じゃろうか。


「しっかし、お主の鎖を斬ったらだいぶましになるかと思ってたのでござるが、その後も普通にクソ強くてほんとまいったでござる」


「いやー、鎖から抜けた時のお前を見て、俺はこう、感動しちまったんだ。これは本気で殺りにいかなきゃならねぇって、魂に来た! 手を抜いたらむしろ失礼だとすら感じた!」


「はっはっは! 実は拙者もマジでこいやって気分になってたでござる!」


「だよなぁ! あの時の感じはそうだった! はっはっは!」


 言ってる内容は殺伐じゃが、雰囲気はマブダチって感じじゃの。けど、この二人、初殿がめっちゃ冷たく怒った目でみとるの気づいとるのかの? 今も部屋の隅でなんか薬作っとるけど、今なんかボソリと「……痛くなるのでも、いいかぁ」とかつぶやいとったぞ?


 そのような視線を物ともせず、包帯だらけの男二人がウェーイと拳と拳と合わせ、帰ってきた衝撃でお互いに身悶えしている。


「あー……しっかし、あれじゃのー……岩鉄よ、その、お主の殿とやらはハム助を殺してどうしたいというのじゃ。会った事もないじゃろうに、なぜハム助を狙う?」


 痛みが収まったのであろう岩鉄が、それでも少しばかし身悶えしながらも、問に答える。全身怪我だらけではあるが、これだけ喋れるなら大丈夫そうじゃなぁ。大喧嘩したと聞いて心配しとったが無用の心配じゃったな。


「いやぁ、流石にそこまでは言えませんぜ。殿を裏切れねぇ」


「「どうせ鼠族が上にいるのが鬱陶しいとかそんな理由でござろー? あー! ほんと高貴なお方は潔癖なことでござる! はー! ほんっと! はー!」


 ハム助ってー、結構身分高い人が嫌いなんじゃよなぁ……。妾が物心ついた頃からそうじゃったから、筋金入りなのかもしれぬ。


「んあー……めーんどうじゃのぉー。こちとら、ただちょっとばかし良い生活がしたいだけなんじゃがのぅ。風礫といい、お主ら皇忠組といい、問題起こしすぎじゃ。んー、こう、変なことさせないようにする、なんかいい案ないかえ?」


「良い案と言われましても、あちらを立てればこちらがたたず、お互い意見のぶつけ合いとなればどうしてもどちらかが妥協せねばなりませぬぞ」


「問題起こしてる側の俺がいうのもなんですが……お偉い方々は思いの外、メンツに拘ります。なにかこう、感謝状などを送るのも良いかもしれやせんぜ」


「迷惑しかかけられとらんのに? 風礫とやらも、白虎家が雇っとるっぽいんじゃろ? じゃというのに、感謝状ぅ?」


「いや、こういうのは形だけでもやるのが大事なんですって」


 えぇ……絶対嫌じゃぁあ……。なんで迷惑かけられたこっち側が配慮せんといけんの?


「むしろ苦情状を送りたいくらいなんじゃが」


「おっ、それいい案なのではござらぬか? 拙者も正直被害をこうむりまくって苛立ってたでござるし!」


「おいおい、ハム公よぉ、何悪乗りしてんだ。流石にそりゃあ不味いだろぉ。……楽しそうではあるけどよぉ」


 3人が、お互いに視線を交わし、少しばかり黙った。


「楽しそうでは、あるんじゃよなぁ」


「正直、こんな命令出されて不満がないってわけじゃあ……ないんですよねぇ」


「出しちゃう? マジで出しちゃうでござるか? 目の敵にされるかもしれぬでござるが」


 おっ? これは結構アリアリな雰囲気では? 美歯とか月華に相談したら絶対止められるしー……よし、この場のノリでいっちゃうのじゃ!


「出しちゃおう、まずは関与しとることが明らかな玄武の殿とやらの方から……苦情状でも書いてやろうではないか」



―――――――



「うひょー! ハム助ー! 岩鉄ー! 返事が返ってきたのじゃー!」


「ひゃあ! 待ちきれぬでござる! 姫! 早く内容を!」


「殿ぉ、俺は殿の我慢強さを信じてますぜぇ!」


 うむ! 二人共ノリノリじゃのぉ! 手紙は思ったよりも早く返ってきて、なんと妾が手紙を飛脚(本当に飛んでいってビビった)に渡した一週間後には返事の手紙が来た。


 もちろん、館で読んでいる途中で美歯とかにバレたら困るゆえ、手紙を確認次第ちょっぱやでこの診療所に走ってきた。


「まぁ待つのじゃ。ええっと……うむ、達筆すぎて読めん! 岩鉄、読め!」


 ところどころの文字は読めるが、めっちゃ読みにくいのじゃ!


「あいさぁ! ええっとですねぇ……あー……ええぇ……うっわ……流石にこれは引きますぜ殿ぉ……」


「え、ぱっと見た感じ、そんな変な事書いてるようには見えんかったんじゃが」


「要約するとですね。今回の事は全部幕府側の工作で、玄武は何も知らなかった。不幸な事だったが共に倒幕のためにさらなる結束を固めよう、じゃ、ないとまた幕府からの工作で誰かが危険な目にあうかもしれない、って書いてありやす」


「うっわ! クズ! 姫! この玄武の殿とやらめっちゃクズでござるよ! もうこんな奴とは縁を切るのが最善では!?」


「えぇー……え? この殿とやらが指示したのは確実なんじゃろ? じゃっていうのに、何もなかった事にしろって言っとるの? それどころか、それを認めんとまた襲ってくるって言っとるのこれ?」


「文面からは、そう読み取れなくもねぇのは確かですね……いやいやいや殿! 流石にこれは不味いですぜ!」


「あれっ、これ危険な目に合うのってまた拙者では……? 姫! 今回は苦渋の決断ですが黙って苦境を耐えましょうぞ!」


 おお! 流石ハム助! 自らの保身を考えた途端に意見を変えよった! じゃが、のー……。


「この感じじゃと、黙ってても、妾達が何も反抗しないと思ってお主がまた殺されそうにならぬかえ? いや、ホントなんでお主が狙われとるのか謎じゃけど」


「うーん、わりかし真面目に答えますと……いや、自惚れてるわけではないのですが」


「うむ?」


「鼠族である拙者が強すぎて、この迷宮での鼠族の発言力があるのが気に食わぬのかと。いや、ほんと自分でいうのもなんでござるが、実は拙者って人外になりつつある気がするでござる。なんか天眼とかいうよくわからんのが協力してくれとるでござるし」


「実際のところ、お前って鼠族というか、別の何かだと思うぜぇ。普通なら、鎖に包まれた時点で全身の骨がクシャッって砕けてるはずなんだよ」


「えっ、お主そんなの使ってきてたの? この可愛そうな非力な鼠族に?」


 こやつ、都合の良い時だけ弱者ぶるのー……。


「おめぇそれ斬ったじゃねぇか……あの宝具、それなりに格がたけぇから神気さえ入れときゃ自己修復できんだが、まだ半分くらいしか繋がってねぇんだぞ」


「まま、そこらの話しはおいといてー……どうすれば玄武の殿をギャフンと言わせれるか会議続行じゃ」


「そんな話しでしたっけ?」


「そんな話しじゃよ?」


「そうでござるよ、岩鉄殿。ささ、玄武事情に一番詳しいのはお主故、良い知恵を期待しておりますぞ!」


 流石に岩鉄が悩むように唸った。生まれ故郷の殿じゃしのー、やっぱそう簡単には割り切れぬのかのー?


帝誕論ていたいろん支持者としては、姫に協力すべきだよなぁ……。よし! どうせ手紙とか送んのは俺じゃねぇし、こっそり知恵をかしやすぜ!」


「ひゅー! 岩鉄殿わかってるぅ!」


「いぇーい! 道理がわかる男、岩鉄なのじゃー!」


「へっへっへー!」


 うむ! なんとも気分が高揚してきたのじゃ! ノリノリって奴じゃ!


「他にも怪我人いるんで静かにしてもらえます?」


 が、初殿が静かに、けど確実に怒ってるじゃろって声で諌めてきたので3人とも一気に意気消沈。


「で、まぁ、知恵と言っても大した事を言えずに申し訳ぇんですが、殿として困るのは、大きく2つ。姫が倒幕の意思を示さない事と、この迷宮街が単独で力をつけちまうことだと思いやす」


「ふむ? それは何故じゃ」


「両方とも理由は単純です。玄武家と白虎家は姫を担いで倒幕したい。そして迷宮街が単独で力をつけちまえば口出ししにくくまっちまう」


「なるほど、つまりあれか。今回の手紙に対する返事としては、その2つをしっかり書いて送ってやれば、こちらとしてはサイッコウにいい気分になるって事じゃな!」


「姫! お待ちを!」


「む? なんじゃ」


「その手紙に、遠くのお前らより近くの鼠族のが頼りになるとか書いてくだされば、拙者の承認欲求が満たされまする! 煽りにもなりますし是非ともご考慮を!」


「採用なのじゃ!」


 あぁ! なんか楽しくなってきたのぅ! 今なんかすっごく致命的な一歩を踏み出し始めてる気がするが、今更止められるものか! いよーし! 美歯が気づいた頃にはもう止めようとしても止められないくらいやっちゃうのじゃー! やったもん勝ちなのじゃー!

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