大人の味
初めまして柚岡羽純です。
毎日をゆるりと過ごしていく中でふと浮かんだことを言葉にしてみる、そんな感じで書いてみました。
初の投稿作ですが、楽しんで頂けると幸いです。
ベランダに面した網戸からは、煙草の匂いがした。ああ、また君が煙草一本分、大人になってしまう、そう思ってしまう。
煙草を指に挟む君は、なぜだろう、いつもより長い脚と広い背中をして見える。そんな姿を見ていると君と共有してきた長い時間がどうも嘘のように思えてならない。本当に君は私と同じ時間の分だけを生きてきたんだろうか。
なんとなく寂しくなって、そっと呼び掛けると、君はタバコの箱と灰皿をローテーブルに置いて私の左に腰かけた。呼んでおいて何も言わない私に君はなぜか次第に申し訳なさそうな顔になる。昔から人に優しいところがあるから。 ただ、オロオロしだす君を横目に私は自分の大人気なさに呆れる。
本当は、私をおいてもっと、ずっと大人になってほしかった。そしたらきっと行き場のない、この不安も寂しさも、君への嫉妬も全てに諦めがつくと思ってたから。
ふわりと肩に手を掛けられ、顔を覗き込む君。心配そうな目。なんだか耐えきれなくなって、私から目を反らしてしまう。弁解した私の言葉にホッとした様子で君はマグカップのコーヒーと一緒に寝室に引き上げて行った。
ねぇ、私たち親友なのかな。君は、未だにそう思ってくれてますか。そろそろ、無理があるんじゃないかな。
窓から入り込んだ風が煙草の匂いを室内に招き入れて、私の目に沁みた。目線を落とすと、君の傷んで枝別れた茶髪が渦巻いていた。
もう、別れを告げてこの部屋から出て行こう。
もう君だけを見るのは終わりにしよう。
さて、『大人の味』いかがでしたか?まだ拙い文章だったかと思いますが、不自然なところご指摘して頂けると助かります。コメント欄にて皆さんからの一言お待ちしております。
それではまた次回作もよろしくお願いします!