第5話
カイと二人でロゼを見に行った。丁度今咲いてる花があるそうだ。ロゼ園は有料だが金額を払えば緑の中でのんびり寛げる。カイが2人分の料金を払う。
ロゼは薔薇そのものだった。しかも原種ではなく品種改良された後のようなタイプの薔薇だ。
「きれーい。」
「ううーん。サトコが気に入ったならササエにも持って帰りたいけど、亜空間に生きてる物は入れられないしな。旅する間ずっと持ってる訳にはいかないから、貿易待ちってことになるけど…」
植物も生きてる物にカウントされるのか。種とかはどうなんだろう?種とかも駄目なら果物は基本しまえないよね?それにずっと思ってたんだけど、カイって他の魔法使う時は呪文詠唱っぽい事をしてるのに、空間魔法を使うときだけは呪文を詠唱しないんだよねー。不思議だなあ…まあロゼはいいや。
「そんなに真剣に考えなくていいよ。今見られれば十分。」
特にクリーム色がかった薄桃色の薔薇が一番好きでそれを飽きることなく見つめていた。
カイは白い薔薇が気に入ったらしい。白も確かに綺麗だよね。2人で色んな薔薇を見ているとばったりソルジュさんと出会った。
「おや、カイ殿と奥方様ですか。ロゼがお好きで?」
「まあね。」
「ロゼはアトシアでは花嫁の為の花とされているんですよ。これで花束を作って花嫁が持つのです。」
「素敵ですね。」
ウェディングブーケか!ロマンチック!ブーケトスとかあるのかな?私もやってみたい!
「奥方様は純真な方でいらっしゃいますね。」
「え?」
「ロゼはその見た目の美しさに反して鋭い刺を持つので、美しい姿の中に獰猛な牙を備えた花嫁の花と言われているのです。」
ううん。そういう考え方もあったか。綺麗な薔薇には刺があるってやつですね。
「それでは私は失礼します。」
ソルジュさんは去って行ってしまった。
「何か興がそがれたね。獰猛な牙だってさ。」
「そう?オレはサトコの牙になら一度噛まれてみたいけど?」
にゃ、にゃにを言ってるんでしゅか。からかうのは止めて。もー顔が熱いから。寧ろ私がカイの牙にがぶがぶ噛まれてる気分だよ。
その晩は宿の厨房を借りてカイがカリネの生地をベースにしたフェットチーネを自作してくれた。「話で聞いてた風に作ってみたつもりだけど、だいぶ違ってたらごめん。」といって出してきたのはサーモンに似た魚とホウレン草に似た野菜とクリームソースでからめられた、見た目は完璧にフェットチーネだった。
「食べてみて?」
「うん。頂きます。」
お…いしー…!!!!
味も完璧フェットチーネだ。
「美味しい!完璧だよ!カイすごい!」
「ホント?良かった。これ面白いね。色んな具材と合わせたら色んな味が作れそう。カリネに比べるとソースに麺が絡みやすいし。」
「ササエに行ってもまた作ってくれる?」
「勿論。いつでも作ってあげるよ。」
カイ優しい!嬉しい!
「アトシアからササエに行くには2つ道筋ある。一つはハルドラからリャンカを経由していく道筋、もう一つはアーティスからリャンカを経由していく道筋。結局リャンカは通るんだけど、アーティスとハルドラ、どっちの国を通りたいかだね。アーティスは光の守護者のいる国。光の信仰の国でもある。北側をガレイド帝国と隣接していて交戦中。戦いは首都にまでは及んでいないよ。ハルドラは砂漠地帯。どことも交戦してないけど水は少ない。つまりお風呂のある宿が少ないって言う意味だけど。やたら暑くてじゃりじゃりした国だよ。肉と豆のシチューが美味しかったかな。どっちが良い?」
「光の守護者に会ってみたいけど、会えるかな?」
「それは分からない。じゃあ、アーティスの方に行ってみる?」
「うん。」
どうもガレイド帝国というのが隣接しているどの国とも交戦しているハリネズミのような国らしい。国土はそれなりに広いようだが。国王が野心家なんだってさ。世界統一でその頂点がガレイド帝国!みたいな思想らしい。隣国のリャンカはリャンカで世界の元祖はリャンカ!全ての歴史はリャンカにあり!という自分勝手な主張をしているようだ。私としてはどっちも困った国だと思う。リャンカは広大な土地と他民族の住まう国だという話だ。
クシャの街から少し離れたところでカイがフィーを呼ぶ。フィーは普段どこで生活してるんだろう?呼ぶと割とすぐ来るけど。パパナから海を渡ってきたんだよね?どこで休んだりしてたんだろう。フィーの生態について謎は尽きない。
ちょいちょい休みを挟みながら飛んで3日目の朝。
「行くよ、サトコ。」
カイに急かされてフィーに乗った。フィーは賢い。乗り手の負担にならないように飛んでくれる。風圧はカイが魔法で防御膜を作ってくれてるから特に感じないし。
「そう言えばカイって魔法で飛べちゃったりしないの?」
「飛べないこともないけど。」
「じゃあなんでフィーに乗ってるの?」
「飛ぶのね。魔力消費がバカ高い。5分飛んでるだけで切り裂き人形100体を1ヶ月ぶっ続けて働かせるくらいの魔力を消費する。移動手段としてはあんまり現実的じゃない。風魔法で飛ぶから不安定だし。」
私は魔法が使えないので切り裂き人形100体をぶっ続けで1ヶ月動かすのに必要な魔力の量がいまいち掴めないんだけど。なんとなく消費が良くなさそうというのはわかった。
「ふーん。魔法も万能じゃないんだね。」
「そゆこと。水中で息出来る魔法なんて未だに発見されてないし。」
「水中戦が一番の難関ってことだね。」
「戦うだけなら水上から魔術を乱発するとか水中戦に特化した人形を送りこむとかやりようは色々あるけど。実際の生身で行くのだけは出来ないね。」
「海底神殿を調査したい場合とかは?」
「泳げる人形と視覚を共有しておけば大丈夫。」
「人形と視覚共有できるの?」
「出来るよ。味覚とか痛覚も共有できる。ただ自分にない機能は共有できない。人魚型人形を作っても尾っぽは共有できないし。」
なるほどねー。そこまで細かい感覚が共有できるってことは人形って精巧なんだな。どういう原理だかわからないけど凄い。
「カイの他にも人形使う人っているの?」
「いない。オレの独占技術だよ。」
やっぱりカイってすごいんだ。神童だもんね。
「弟子を取るとかは?」
「オレまだ12だよ?まあ、将来自分に子供が出来たりしたら教えてあげようかな。才能があればだけど。」
そんな将来息子とキャッチボールするんだ的な感覚で教えちゃっていいもんだろうか。
「魔力やスキルって遺伝するの?」
「遺伝しやすいとは言われてるけど絶対じゃない。」
「カイのご両親は?」
「オレ孤児。」
「ゴメン…」
「良いよ。何とも思ってないから。」
今は何とも思ってないって言っても、もうちょっと小さかったら幸せそうな家族とかを見て「どうして自分はああじゃないんだろう」とか思ったりすると思う。
孤児かあ…私が落ちてきたあの日、家族を思って流した涙はカイにはどういう風に映っていたんだろう。なんか悪いことしたかも…
「ホントに気にしてないから。」
後ろからカイにぎゅっと抱きしめられた。
アーティスは光の守護者のいる国。光の守護者は私みたいにころっと世界に落ちてきた訳ではなく、アーティスの魔術師と王子に召喚されたという話だ。召喚されて、すぐに『快癒の手』というスキルを使って王の病を治療した事が偉業の始まりで、一人で千人の軍勢を退けたとか、国に蔓延していた奇病を一人で癒し続けたなど英雄譚に事欠かない。今は治療と政治と戦に明け暮れているんだって。年は私と同じ16歳だって聞いてる。同じ16歳の女の子なのにバリバリ働いて武勇伝作ってる光の守護者と、カイに保護されてのほほんと暮らしてる私。この違いってどうよ。
アーティスは白っぽい壁に赤い屋根の並ぶ絵本の中の街並みのようなところだ。街の一歩手前でフィーから降りた。
アーティス初めての街、ヒュルテ。
アーティスの特産は牛乳やチーズらしい。食べさせてもらったけどとても美味しかった。新鮮な生クリームもあるようなので、ショートケーキとか食べたいなあって言う話をカイにしたけど、こちらの世界には生クリームたっぷりのケーキは存在しないらしい。一般的にケーキと言われたらパウンドケーキのような物を指すらしい。ちょっと不満。
翌日からまたフィーに乗って移動。
5日後首都についた。
首都はアマリー。
多少雑多な感じのする街だった。賑わっている代わりにスリが多いらしい。お洒落なお店と賑やかな露天。道行く人は誰もが平和を享受しているような顔をしていて、とても一部交戦中とは思えない。
中心にあるお城はネズミ王国のシンデレラ城みたいなお城であった。綺麗。近くで見てみたいな。
有名な花街もあるらしい。カイに「行ったことあるの?」って聞いたら「ない」って。ちょっと安心。花街では性病が蔓延してるらしい。コンドームとかないのかな?それっぽい話をしてみたけど最近になってマイルと言う国でコンドームらしきものが作られるようになったらしい。薄くて丈夫な代わりにすごく高価なんだそうだ。5個で銀貨2枚だってさ。日常で使うと思うとちょっと高いかも。でも避妊具ないと出産の期間とか計れないよね。こっちの世界は産みっぱなしの捨てっぱなしが多いそうだ。結果カイみたいな孤児が生まれる、と。なんか悪い事聞いちゃったな。
運が良ければ光の守護者を見る事が出来るかもしれないね。って言ってたけど。光の守護者は一般と隔離されていて、城と治癒院と戦場を行ったり来たりしているらしい。私達は今のところ治癒院に行くような怪我はしてないし、会う理由はないな。
それでも露店で光の守護者の似顔絵とかが売ってあったので見た。きりっとした顔の凄い美少女だった。ちょっと満足。
露店は色々珍しくて目移りしてしまう。私がいつぞや塗りたくられた男性の性欲を促進させる香油なんかも売っていた。トヤの実も上品質な物がたくさん売っていたのでカイは喜んで買い占めてた。あと私の化粧水の原料になる葉っぱとかお酒とか。
「サトコ。」
振り返るとカイが布でロゼの花を模った造花をつけているカチューシャのような物を持って立っていた。私が好きだったクリームがかった薄桃色が絶妙に再現されている。カイは私の頭にそれをつけた。
「ん。やっぱり良く似合う。この髪飾り。」
「あ、ありがと…」
カイは私に色んなものを買ってくれる。普段は必要最低限の物だけ私の鞄に入っていて、アクセサリーなど時々使う物はカイの亜空間に入っている。指輪とネックレスだけはいつもしてるけど。「亜空間に入ってるものってカイが死ぬとどうなるの?」って聞いたら「その場にぶちまけられる」って言ってた。空間魔法持ちは知られると強盗の良いカモらしい。カイは強いから返り討ちにしちゃうみたいだけど。寧ろ賞金首は良いカモだって言ってた。
カイとぶらぶらしてると一人の女性と肩がぶつかった。
「す、すまない。」
「いえ、こちらこそすいません。」
その女性は目元以外を布で隠した怪しさ満点の女性だった。何か探しているようだ。キョロキョロしている。
「何か探しているんですか?」
「うむ。先日この辺りを歩いた時に首飾りを紛失してしまってな…そんなに高くないものだが私にとっては重要なものなので探している。」
「どんな形状のものですか?」
「素材は白い貝なのだ。大きさは親指の爪くらい。形は薔薇…いや、ロゼの形をしている。」
今薔薇って言った。この人もしかして…異世界召喚された光の守護者?
私はしげしげとその人を見つめる。顔は分からないが目元は切れ長な黒い目。引き締まった体型をしている。
「な、なにかな?」
「いえ。探すの手伝いますよ。良いよね、カイ?」
「いいよ。」
カイはあんまり興味なさげだが反対はしなかった。道端やゴミ捨て場、露店の商品に紛れこんでいないか3人で手分けして探した。
「ないねえ。」
「遺失物預かりの所はもう見たんだよね?」
カイが尋ねる。
「ああ、真っ先に行った。」
「なら、拾い物屋かな?既に他人の手に渡ってるという可能性もあるけど。」
他人の手に渡ってたら取り戻すのは大変だろうなあ。
「拾い物屋?」
覆面の女性が首を傾げる。
「拾ったものを猫ばばして売ってるお店。この街にもあるはずだよ。」
「そんな店があるのか。」
覆面の女性は驚いているようだった。私も驚いた。現代日本じゃ考えられない種類のお店だ。盗品市みたいなのとはまた違うんだよね?猫ばば商品のお店か…
「場所は知っているのか?」
「知らないけど、その辺の露店の人にお愛想でも渡せば教えてくれると思うよ。」
覆面の女性は薬草を売っている露店の人にチップを握らせて拾い物屋の場所を聞いた。
3人でぞろぞろ移動する。民家の裏路地のちょっと薄暗いとことに店はあった。店内を物色する。ネックレスも色んな物が置かれていて一つ一つ探すのは根気のいる作業だった。
ん。これホワイトシェルの薔薇かも。想像してたより立体感の無いぺたっとした品だ。銀の葉に透明な雫があしらわれている。全体的にシンプルな造りで鎖は銀色をしている。
「あの、これは違いますか?」
「うん?おお!これだ!間違いない。有難う2人とも!よく探してくれた!」
覆面の女性は大喜びでネックレスを買い戻していた。
「世話をかけた。いつかこの恩は返させてくれ。」
「その首飾り、いわれのあるものなんですか?」
「特にはないが、私が世界で一番大切にしている人に貰ったものだ。」
恋人からのプレゼントかな?
「取り戻せてよかったですね。」
「ああ、有難う。」
大喜びで覆面女性は去って行った。
カイと路地を歩く。
「今会ったのってさ…」
「まあ、光の守護者なんじゃない?」
カイは思ったほど感動してないようだ。私は生ける伝説に出会えて結構感動してるんだけどな。お忍びで遊んでる芸能人に遭遇したみたいな気分。
他にもいろんなお店を覗いてみた。カイがお店の人としきりに何かの会話をしていた。
「サトコ。サトコの食べたい生クリームのケーキじゃないけど、美味しいケーキのお店があるらしいから行ってみようか。」
ケーキの事聞いていたのか。
「うん!」
2人でケーキを食べに行った。赤い屋根の小さなお店は超満員。しばらく並んで、やっとお店に入れた。割と裕福そうな服を着た女の子のお客さんが多い。みんなが笑顔でケーキをつついている。私達が案内されたのは、折りたたみテーブルと椅子のテラス席だ。可愛い女の子の店員さんにケーキとお茶のセットを注文する。何とこの店、メニューがケーキとお茶のセット以外にない。それだけ自信のあるケーキなのだろう。
そして出てきたのはまさしくベイクドチーズケーキだった。どっしりとしていて濃厚で、滅茶苦茶美味しい。
「うまあー」
「良かったね。」
「うん。でもチーズケーキなら本当はスフレチーズケーキの方が好きなんだ。」
「スフレチーズケーキって?」
メレンゲの説明からしなくてはならなかった。蒸し焼きにするとかうろ覚えだし。温度もうろ覚え。私のたどたどしい説明を聞きとりカイはふんふん頷いている。
「蒸し焼きにはしないけどスポンジケーキも同じように生地に空気を含ませて作る…はずだった気がする。ちょっと自信ない。」
「ふーん。ちょっと美味しそうだね。作ってみたい。材料買ってこう。」
カイは作る気満々のようだ。蒸し焼き用の鉄板とケーキ型とボウルと泡だて器とヘラと生クリームと砂糖とクリームチーズと薄力粉と卵を買っていた。例のベイクドチーズケーキを作ってる店があるからケーキ型を作ってみたはいいものの誰も買わなくて困っていたんだ、と店のおじさんは笑っていた。
出来ました。スフレチーズケーキ。2回失敗して3回目にしてやっと。表面はちょっと割れちゃってるけど美味しそう。泡立ては生身だとしんどいので黒髪黒眼の美少女な切り裂き人形さんがやってくれた。「有難うね」と黒髪黒眼の切り裂き人形さんに言うとちょっと驚いたような顔をされた。あとはカイが全部作ってくれた。私は見てるだけ。場所は宿の台所を借りた。
「食べてみようか?」
「うん!」
失敗作は捨てるの勿体無いなー…と思ってたらカイが路地裏の子供に「失敗しちゃった。悪いけど食べてくれる?」と渡していた。子供たちは大喜び。私達は大変助かるけど、成功作食べさせてあげなくてごめん。
「頂きまーす。」
フォークでちぎって口に運ぶ。
ふわっ。しゅわっ。
そうそうこの口の中で溶ける感じ!滅茶苦茶美味しい!!
「おいしー!!」
「なら良かった。ん。確かにこれは美味しい。オレも昼間食べたやつよりこっちのやつの方が好きだな。」
「おお!旨そうですな。銅貨7枚で一切れ頂けませんか?」
宿の主人が申し出てきた。
「ここ使わせてもらってるし、銅貨3枚で良いよ。」
カイは銅貨3枚で1切れスフレチーズケーキを売っていた。まあワンホール全部私達だけで食べるのきついしね。女将さんも同じく銅貨3枚で一切れ買っていた。
「おお!うまい!なんだこの食感!ふわふわだ!!」
「なんておいしいの!しゅわっと口の中で溶けるわ!」
お二人とも感動している様子。
「これは売り出したりせんのですかな?」
「店舗があるなら売っても良いけど…」
「これは売れますよ!私、物件を扱う者に伝手があるんです。是非売りだしてみませんか?」
「じゃあそうしようかな。」
断るかと思いきや、カイは案外乗り気だ。ササエに行くんじゃないの?ここに腰を落ち着けるの??
「カイ此処に住むの?」
「住まないよ。ケーキ作り用の雑用人形4体と、護衛に切り裂き人形2体つけておけば店舗として機能するだろうし。売り上げは魔術師ギルドで預かってもらうよ。」
魔術師ギルドでは一部銀行のような機能もしているらしい。人形にケーキ作らせるのか。
宿の主人が早速不動産屋のような人を連れて来て、明日物件を見に行くことになった。
物件。結構雰囲気の良いお店がまるっと空いていた。元はパン屋で、使っていた者が先日亡くなって丁度売りに出していたそうだ。賃貸にもできると言う話だったがカイは面倒くさがって土地とお店両方買い取ることにした。水晶貨3枚だった。それから4体の雑用人形と2体の切り裂き人形を連れて材料や包装用の箱などの仕入れ先に話をつけに行った。
無事話がまとまった。雑用人形がちゃんとケーキを焼けるかということだが、今日お店の厨房でやらせてみたらちゃんと焼けた。人形だから手順を忘れることも誤る事もない。それでいて自律しているのでトラブルには柔軟な対応が出来る。完璧なスタッフだ。店の奥にササエに繋がる用に転移の陣を隠しておいた。ササエに同じ陣を設置すれば簡単に行き来できるようになるそうだ。
「サトコ、店の名前何が良いかな?サトコがつけてよ。」
「んー。『ロマージュ』とかどう?」
フロマージュのもじりだ。
「いいと思う。看板つけ替えるだけで店としては十分だと思うし。」
値段は一切れ銅貨7枚となった。私の感覚で言えばちょっと高すぎな気もするが、材料費が結構かかってるので、別に暴利を貪ってるわけではない。包装用の箱が意外と高かった。
急ぐ旅でもないので看板を作っている間、まったりと私達は衣類を買いたした。看板が出来上がって、店内の古くなっている部分を直して、ようやく『ロマージュ』開店の運びとなった。
宿のご主人と女将さんが良い広告塔になってくれた。興味本位で一度買ってしまえば食べた者はヤミツキになるので客足には困らない。その後、光の守護者様がこのケーキに驚いたとか驚かなかったとか。
それぞれの国には特定のモデルはありません。あしからず。
フィーさんはカイをササエに送った後はとんぼ返りして、ずっとパパナ周辺にいました。カイとは謎の命令系統で繋がってます。