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第15話

4日後、マイルにつく。

マイルの街並みは茶色い煉瓦の街並みだった。大きな真っ直ぐした道は少なく、住宅がひしめき合っているといった感じ。住宅が多い割に外に出ている人は少なくひっそりとした街並みだ。宿をとったらちょっと観光しようということになった。宿はまたリィンとの相部屋。

宿を待ち合わせ場所にしてそれぞれが散っていく。私とリィンは一緒だけど。リュート様とキサラも一緒みたい。真昼間から娼婦のお姉さんたちが営業している。建物も全て作り込まれた細工物のよう。異国情緒たっぷりの景色に満足する。店も色々見た。セクシーなドレスのお店。張形や香油のお店。そしてコンドームのお店。コンドームは5枚で銀貨2枚と消耗品にしてはお高めだったが10枚買っておいた。使う予定はないけどこれから先どんな出会いがあるか分からないし?

夜はゆったりお風呂を満喫。温泉がある宿なので有り難く温泉につかる。うはあ。癒される~…


「サトコ、昼間避妊具を購入していたようですが、使う予定があるのですか?」


人形は普段必要が無ければ口を開かない。リィンは本当に進化したんだ。


「ないよ。でもこの先何があるか分からないじゃない?突然燃えるような恋に落ちちゃって…みたいなことあったら困るし。ちょっと買ってみた。」

「そうですか。良い方が見つかると良いですね。」

「……うん。」


本当はカイが良かった。初めてはカイとしたかった。でも無理だ。私が一方的にそんなこと思ったってカイは迷惑なだけだ。私はまた涙がこぼれてしまった。


「サトコ…」


リィンが髪を撫でて慰めてくれる。リィンと背中の流しっこをした。別にリィンは垢が出ないから軽く水洗いするだけで良いんだけど、気持ちだ。


「やっぱり温泉は肌がつるつるになるなあ。」

「最近サトコは肌の調子がいまいちでしたから。私もご主人さまのようにサトコに化粧水を作ってあげられたらいいのですが。」

「いいよ、気にしないで。化粧水って作るの難しいの?」

「いえ、ご主人さまが作る所を拝見しましたが、作り方は簡単です。ただし大きな瓶に入れる必要があるので旅先で作るのは難しいかと。ご主人さまのように空間魔法があれば違ったんでしょうが。それに薬草を漬ける時間をご主人さまは魔法で短縮されていました。私には魔法が使えないので同じ品質の物を作るには1年ほど時間が必要です。」

「そうなんだ…」

「……同じ品質でなくて良いのでしたらすぐにでもお作りする事が出来ますよ?」

「ホント?」

「では明日材料を買いに行きましょうか?」

「うん!」


部屋に戻ろうとすると4人の従者さん達がわいわいやりながら宿を出て行くところだった。


「こんな夜中にどこ行くんだろ?」

「遊郭だ。」


声が割り込んできて吃驚した。キサラだった。


「遊郭ですか?」

「マイルには大きな遊郭がいくつもあるからな。今夜は遊んでくるだろう。」

「キサラさんは行かないのですか?」

「私はリュート様のお付きをしているからな。遊びには行けんさ。」

「へえ。リュート様は?」

「リュート様にはまだ…その…精通が来ていない。」

「そ、そうですか…」


なんか変な事聞いちゃったな。私は赤くなる。ちょっとキサラも赤くなってる。2人で何やってるんだろう。ちょっと挨拶してリィンと部屋に戻った。


「闇の魔導会どうなったかなあ。」

「宿で食事をしていた時入り口横の男が『王の首は取られた』と言っていましたが。」


リィンは聴覚も抜群だ。そっか。王の首取られちゃったんだ。リュート様大丈夫かな?同じ知らせを聞いたのだろう、翌朝、リュート様は泣きはらした目で食堂に下りてきた。


「リィン。サトコ。サーリエ王の首は取られたらしい。」


私はリィンと目を見合わせた。


「なんだ。驚かないな。」

「昨晩食堂で他人がそう話しているのを聞いたものですから。」

「そう…か…」


リュート様は顔を覆って小さく「父上…」と言った。やっぱり辛いよね。


「リュート様…」


私はリュート様を抱きしめてそっと撫でた。リュート様はしばらく私の胸の中で涙を流していた。


「サトコは温かいな。まるで乳母のようだ。」


そこ母上じゃないんだね。まあ、王子だし乳母に育てられたんだろうなあ。

そういえば抱きしめた事あるから知ってるけどリィンも温かいんだよね。わざわざ体温を持たせてるんだろうな。カイの人形は精巧だ。切っても血が流れない所で人間じゃないって気付かれるかもしれないけど。


「リュート様も温かいです。まるで陽だまりのように。陽だまりには人が集まります。きっとリュート様の元にも。」

「有難う。サトコ…」


リュート様は気持ちを切り変えて食事にした。従者たちは眠そうだ。やっぱり朝まで遊んだのだろう。しばらくこの街に滞在することになった。翌日私とリィンは化粧水の材料を買いに行った。化粧水の材料は簡単だった。精製水とグリセルという名の果実の果汁。この2つのみだ。カイはこれに薬草を加え、保湿性や美白などの効果をオプションしていたらしい。貴族が使っているのは保湿性の他に香料で香りをつけた物が多いんだって。店のご主人が言ってた。グリセル高っ!100mlくらいで銀貨5枚した。化粧水を入れる瓶も銀貨3枚した。でも精製して香料とかで整えた後の化粧水は100mlくらいで金貨1枚と銀貨5枚するそうだ。あり得ん…

後は混ぜるだけ。精製水100mlに対してグリセルは10mlくらいで良いらしい。よーく混ぜて完成だ。とりあえずという事で300ml程作ってくれた。


「今夜からこちらをお使いください。」


リィンに化粧水を貰った。残りのグリセルは取っておく。またなくなったら精製水を買って作ればいい。


「ありがと。リィン様。」


私は凄く嬉しくて輝く笑顔だ。


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