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第10話

翌日もリャンカの中を移動した。露店で魔道具や色んなものが売っているが、カイ曰くほとんどが偽物か類似品なんだって。薬草も管理が杜撰だからと言ってカイは買って行かなかった。料理はともかく、この国には新しいものを生みだすという柔軟性に欠けるようだ。他国の真似をして大威張り。それってどうなの?

そのくせ露店を眺めるとすぐ物を買わされそうになる。強引。私がお金を持っていない事を伝えると追い払われた。


「リャンカの商人にとって金のない奴は客じゃないんだよ。将来の客になるかもしれないのにね。ホントバカ。」


カイはいつになく辛辣だ。よほどリャンカが嫌いらしい。でも珍しい香辛料をいくつかとお茶を何種類も買っていた。


「人間性はともかくリャンカで採れるお茶は美味しいよ。特に花茶と言うお茶は花の香りがしてすごく美味しい。オレはお茶だけは気に入っている。」


私が気を失う前に飲んだお茶かな?あの時は多分睡眠薬のような物が入っていたんだろうと思うけど。


「苦手な国だけど海を挟んでササエと隣り合っている国だから貿易はする事になるはずだよ。尤もシャールン領はリャンカの反対側の海に面した土地だけど。」

「そのリャンカの反対側の海を渡って行くとどうなるの?」

「うんと海を渡らなくちゃならないけどオレの拠点のある島に着くよ。程良く間隔を開けて島が3つほどあって、そのうち一つがオレの拠点。人避けの結界を張ってるからオレ以外誰も近付けないけど。近いうちに転移陣を設置しに行くつもり。そこから東北にいくとテトス大陸と言う大陸があってオスカーとマイルって言う国がある。オスカーは絹の産地だよ。時々貿易商が煌びやかなドレスとか持ってくる。ロゼもあったような気がするけどそれはちょっと覚えてない。ゴメンね。東南に行くとラージ大陸と言う大陸があってリアロとキャレスとカランと言う国が三つ巴の戦争を繰り広げているよ。そこから海を挟んでパパナ。本当はラージ大陸を通る方がササエに近かったんだけどリアロにつつかれるだろうから遠回りしちゃった。ゴメンね。」

「ううん。楽しかったよ。」


カイ曰くラージ大陸ではリアロが一番優勢だったけど、カイが抜けたことによってがくんと国力が下がり、待ってましたと言わんばかりに2国に攻められてるらしい。そりゃあ5千もの強靭な部隊を持っている超優秀な魔術師に逃げられたら国力も下がるわ。

街からちょっと離れたところでフィーから降りる。

そこで魔物とエンカウント。猪みたいな魔物3匹。


「あ、サトコ、これ返しておく。人形が回収してきたんだ。」


カイがネックレスを渡してくれた。カイが作ってくれたロゼの花が刻まれたネックレスだ。


「ありがと。防御。」

「切り裂き人形。踊れ。」


2体の切り裂き人形は易々と魔物を切り裂いた。


「この魔物も食べられるやつだから仕舞っておこう。」


カイは魔石を取り出して魔物と人形を亜空間に仕舞った。


「解除。その魔物美味しい?」


クトパは美味しかったけど。


「竜と比べるとちょっと臭みがあるらしいけど、調理次第では美味しくなれる可能性大。」

「ふうん。」


私達は店を冷やかし、食べ歩きしながら港へ向かった。旅客券を取る。

港町ではタンタっていう麺料理が有名らしい。「食べてみる?」と聞かれたから「勿論!」と答えた。

いい匂いのするお店をうろついてこれぞという1店を見つけた。程良く使い込まれた椅子やテーブル。ここいらでは珍しく店の中はかなり清潔。漂ってくるいい香りとそれに見合った行列。私達はその行列に並んだ。途中で割り込む人が何人かいて、1時間以上並んでやっと店内に入れた。

勿論二人ともタンタを注文する。さして時間もかからずに清潔そうな衣類のおじさんがタンタを運んできてくれた。


「いただきまーす。」


見た目ラーメンぽい。具は海鮮タイプのあんかけ風。野菜と海の幸がたっぷりだ。麺は縮れ麺。色は黄色っぽい。食べる道具は箸。ちゅるちゅるっと食べる。

麺は完全にラーメンだ。スープは魚介の出汁がたっぷり効いている。あんかけも海老や魚やとび子などの濃い海の幸のうまみが凝縮されている。


「おいしーい!」

「確かにこれは美味しいね。今まで食べた事のない味だ。」


カイも感心して食べている。


「気に入ってくれてありがとよ。」


店主のおじさんが笑っていた。


「お嬢ちゃんみたいに旨そうな顔して食うヤツ滅多にいねえぞ。作り手冥利に尽きるねえ。」


そんなに美味しそうな顔してただろうか。ちょっと恥ずかしい。私は結構食いしん坊なのだ。


「お店続けて何年くらいになるんですか?」

「おう。タンタに惚れこんでササエからリャンカに乗りこんで修行して、店を持ってから20年くらいだな。」

「ササエ出身なんですか。」

「そうよ。最初は外国人には風当たりが強くてな。それでも俺の味を認めてくれるヤツが一人、二人と増えてって今じゃこんな行列まで出来てらあ。嬉しいねえ。」

「良かったですね。旅先なんですけど、また旅に出る事があったら寄らせてもらいますね。」

「おう。待ってるぜ!」


カイと「美味しかったねー」と言いながらほくほくで宿に行った。

ところが食べ歩きで時間を取ってしまったせいか、部屋がダブルの部屋しかなかった。仕方ないのでダブルの部屋で一緒の布団で寝ることにする。別に野宿では二人で一緒に寝ているようなものだったからあまり気にならない。

リィンと一緒にお風呂に入る。


「リィン、ササエに建てたカイのお家ってどんなお家?」

「お家…と言うよりはお城に近いお屋敷でございます。」


そう言えばそんな事言っていた気がする。


「お城なの?使用人とかは雇ってるの?」

「人形が働いております。今も掃除や警護などをする人形が働いているはずです。」


常時人形を働かせ続けているのか。それって結構魔力必要なんじゃない?


「へー。カイの魔力量って多いんだよね。」

「わたくしはご主人さま以上の魔力量を有する者を存じません。」

「ふうん。すごいんだ。」

「自慢のご主人さまです。」


リィンは嬉しそうに笑った。


「最近ご主人さまはいつも楽しそうにされています。それはサトコ様のおかげ。わたくしはサトコ様にとても感謝しております。」


おお!リィンが自発的に喋った。


「私こそカイには助けられっぱなしなんだよ。カイに助けてもらってなければ3ヶ月くらいで死んでたかも。」


あの禿げオヤジに犯されて耐えられなくなって自害…ありうる。


「ご主人さまはサトコ様を心の拠り所としているように思えます。サトコ様はどうかご自愛してください。」

「…うん。カイの好物とか知ってる?」

「わたくしが知る限りではラージ大陸にあるチョコラという実がお好きなようです。研究中などはお食事はチョコラの実を一口か二口お召し上がりになる程度で済ませておられました。チョコラの実は栄養価が高いので。」


一口か二口!?


「…それ絶対健康に悪いと思うよ。」

「わたくしもそう思います。」

「誰か忠告しなかったの?」

「ご主人さまはそのお力ゆえ触れると危険な人物とされておりましたので、親しくご忠告してくださる友人のような方は存在しておりません。私を含め、人形は勿論ご主人さまの選択されたことについて背くような発言は致しません。」


それってちょっと寂しいな。


「もし必要と思われるのならサトコ様がその役に就いていただければ幸いです。」

「うん。頑張るよ!」



お風呂から出て、歯を磨いて就寝。

リィンは扉の外を警護だ。今日はカイと一緒のベッドだね。ちょっと緊張しちゃう。私の緊張を全く意に介さずカイはベッドにもぐりこむとすやすや眠り始めた。緊張してた私がばかみたい。でもこうやって無防備な姿さらしてくれるのも特権なのかな?

そんな事を思いながら眠りに落ちて行った。

翌日、私は珍しく朝早くに目が覚めた。やっぱり心のどっかで緊張してるのかなあ…カイは私を抱き枕にして眠っていた。カイの自然な甘い匂いがする。ほのかにトヤの実の匂いも混ざっているな。

……。

……。

……。

……思い違いだと思いたい。なんだか太股に固い物が当たっている気がする。それはちょうどカイの股間辺りで…これは世に言う朝立ちってヤツでしょうか!?ええ!?生理現象だって分かってるけど反応に困るよ!うわわ。カイよ。放しておくれ!身じろぎしたらぴくんとカイの瞼が震えた。起きる!今起きられたら困る!

私は慌てて寝たふりをした。


「ふぁ~あ。…………サトコは寝たふりが下手だなあ。」


ばれてた。

気まずげに瞼を開ける。


「気まずい思いさせちゃってごめんね?」

「ううん。生理現象だし…」

「ふふっ。オレかっこわるっ。」


カイはそのまま私をぎゅーっと抱きしめてきた。当たってるから!当たってるから放して!うう…

カイは私を満足するまで抱きしめてやっと放してくれた。


「サトコ。今日からまた船旅だね。」

「うん。今度は素揚げじゃないと良いな。」

「オレが前回通った時にはシンプルな海鮮スープや海鮮焼きが多かったよ。ササエから入手した『オミソ』っていうのを使ったスープとか。」


おお。味噌汁!


「それは楽しみ。ドレスはアーティスで買ったやつ着るんだよね?」

「そうしよう。リャンカで買い足しても良いんだけど、ササエの住民はリャンカ人とはあまり仲良くないから。別の国のドレスの方が良い。」


アーティスのドレスは民族衣装っぽいタイプではなく日本で普通の一般的にドレスと言われてるタイプのドレスだ。それでもふんわり膨らんだタイプじゃなくてエンパイアラインのようなバスト下にスカートと身頃の切り返しがあり、そこから直線的に生地が落ちている物である。


「それにアーティスのドレスは可愛かったからね。サトコが着ると妖精みたいだった。」

「……。」


ううう…照れる。妖精みたいって。アーティスで買い足したカイの服はロングタキシードのようなタイプが多い。12歳にしてはちょっと大人っぽいデザインだった。着ると可愛いんだけどね。


「じゃあ着替えて出発するよ。」

「おー!」


7日間の船旅を楽しむ。途中どでかい鳥の魔物に襲われたが、切り裂き人形さんの活躍で美味しいお肉になってくれた。今回は魔石も回収できた。お肉は余り気味だったので他の乗客にも振る舞ったら大変喜ばれた。


花茶は某国の工芸茶とはまったく別のものです。

お花の香りがする素敵なお茶です。

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