夜
静寂に
身を寄せる夜があっていい
さざ波のように流れる
薄い雲を見送りながら
寂しさを
拾わぬ夜があっていい
どんな小さな傷も
癒えぬなら癒えぬと
言い切ってしまえば
蒼く深い
闇はあたたかだ
誰かの温もりが
この傍らになくても
わたしの鼓動は
理由もなく熱い
新しくは愛せない
いつも
どこか湿ったところから
滲みでる泥水
清らかではなくとも
この夜に紛れながら
想っている
空は呆れる程に遠く
わたしの鼓動は今
この手のひらしか
近しくはなく
そういうものだから
抱いてやることも
突き放すこともできず
そうやって
諦めてもいい
そうやって
待っていてもいい
また
歩き出してもいい
誰かが許す
夜じゃないから