バレてた声と皇国民の望み
……おはようございます。
朝起きてみれば、俺もサツキも裸のまま、抱き合って寝ていた。昨晩はすごく気持ちが良かったです。サツキの夜の女子力がやばかった。
ちょいと下の方に目を向ける。……二つの丘がすごくいい眺めです。
「……おはよ、ケイ」
むくりとサツキが起き上がった。うーんと伸びをしてから、ハッと気がついたようにシーツを引き寄せ身体を隠した。照れているのか顔が赤い。
そんな彼女の様子がまたかわいく、俺はサツキの頭を撫でながら、おはようと挨拶を返した。
とりあえず着替えて部屋の外に出ると、メイドさんがドアの外に立っていた。
メイドさんは俺に気がつくと、
「おはようございます。お風呂の用意ができておりますので、どうぞお入りください」
と声をかけてきた。
いきなりなんでと思ったが、とりあえず礼を言った。
「お気になさらず。……昨晩はずいぶんお楽しみだったようなので、差し出がましくありますが、ご準備させていただきました。それではごゆっくり」
と言って、一礼して歩いていった。
……うわぁ、もしかしなくても声が聞こえてたのか。昨日のサツキの乱れっぷりは凄かったからなぁ。あれだけ喘いでいれば仕方がないか。
けれど、これは、恥ずかしいな。
「ケイ、どうかした?」
サツキがドアから顔をのぞかせた。
「……なんでもねぇ、それより風呂の準備ができてるってよ。入りにいこうぜ」
「うんっ」
俺はサツキと風呂場へと向かった。いわずもがな、一緒に風呂に入った。
風呂からあがって、食堂に向かってみれば、すでに全員が集まっていた。
「やぁ、昨日はお楽しみだったみたいじゃないか」
クラウディアがさも当たり前のようにそう言った。
俺は思わず吹き出し、サツキは顔を赤らめていた。
事実なので何も反論できなかったが、エリザやサフィ、さらにリディアもいるのだから、あまりそういうことは言わないでほしい。
「あの、できればそういうことは、言わないで欲しいんですけど……」
サツキがクラウディアにそう言った。最後の方は尻すぼみになっていたが、頑張った方なんじゃなかろうか。
「あぁ、そうだね。さすがに子どもの前じゃあれだったね、失敬失敬」
クラウディアは悪びれずに言った。
やっぱりこいつ嫌いだわ。
そう言っている間に席につけば、朝食が運ばれてくる。
料理人の腕がいいのか、飯はうまい。サツキも他のみんなも満足そうだ。
朝食を食べ終わり、一頻りしてから、クラウディアがサツキに話しかけてきた。
「それで、昨日の件は考えてもらえたかな?」
昨日の件とは、リテシィアに教会をおく件についてだろう。
それ自体はサツキの中で答えが出ている。
サツキがそうしたいのなら、俺はそれを応援し、サツキを守るだけだ。
「はい、ぜひ、リテシィアに教会と孤児院を置かせていただければと思います」
サツキはいつになく真面目な顔つきで答える。
クラウディアはいやに嬉しそうに、
「いやー、よかったよ。これで、国民にどやされずにすむ」
なんていうものだから、俺たちはみんな、ん?とよくわからない顔になってしまった。
「いやいや、今回の聖女様の訪問でね、国民の皆がえらい君のことを気に入ったみたいでね。すでに私の耳に入るくらいには、この国の国民は聖女教会を望んでいるという訳なのだよ。これで私が聖女様を怒らせて教会はできませんなんて言おうものなら、クーデターが起きてしまうね」
いや、クーデターだなんて大袈裟な、と思っていれば横でエリザがうんうんと頷いている。……冗談、だよな?
「いやいや、そんなことあるわけ、」
「いやー、あるんだなぁ、これが」
サツキが否定するも、すぐに否定され返してしまう。
どうやらずいぶん物騒な国だったらしい。
「じゃあ、細かい話はこれからゆっくりと決めようか。帰るのはたしか明日だったろう?」
「……わかりました。もう少し落ち着いたら、始めましょうか」
そう言って、今後の動きや教会の人員などの話を、夕暮れまでたっぷりと行った。




