特別編 手作りとチョコレート
普段よりさらに短いバレンタイン特別編です。
時系列的にかなり未来の話になるので、今以上にサツキがベタ甘になっております。
「ケイ、あーんっ」
「あむっ、……うん、美味い」
「えへへ、よかったぁ」
そう言って安心した様子のサツキの頭を撫でてやる。
サツキは嬉しそうに、照れて顔を赤くさせる。
「しかし、よく覚えてたなぁ。バレンタインだなんて」
「……私の中の女子力が、今日はチョコを作って渡せって疼いて……あいたっ」
「厨二病かっての」
俺がサツキの頭にデコピンをして突っ込んだ。
両手でおでこを抑えてうずくまるサツキ。
サツキの膝の上で落ちそうにぐらぐらと揺れるそれを受け取り、むしゃむしゃと食べていく。
うん、程よく甘くて、美味い。
今日は2の月、14日。
異世界にはとくにそういった風習はないが、俺たちが元々いた世界では、バレンタインデーだった。
主に女の子が好きな男にチョコレートを送って告白したりする日。
まぁ、俺には無関係のイベントだったんだけどな。
今日は俺もサツキも予定もなく、家でゆっくりと過ごす予定だったのだが、何かはっと思い出したサツキが飛び出し、すごい勢いで街で買い物をしてきたと思ったら、ずだだだだ、っとこれまたすごい勢いで作り始めたのがこのチョコレートケーキである。
いくらなんでも作るの早すぎじゃね?とか、サツキってお菓子作りなんかできたっけ?なんて思ったりもしたが、こいつには今、神から与えられた女子力が最大になるチート能力が与えられているから、そんなものかと勝手に納得してみる。
1人でパクパク食べていれば、サツキがにまにまとこっちを見ていた。
チョコレートケーキを一口分フォークでとって、サツキの口に突っ込んでみる。
「ふぉ!?ふぁにふんのふぁ!」
「……俺がやってなんだが、食べてから喋ろうぜ」
もぐもぐごっくんと、サツキがケーキを飲み込むと、なにすんのさ!と猛抗議をしてくる。
「いや、にやにや見てっから、ケーキ食べたいのかと思って」
「ケイが美味しそうに食べてるから、見てて幸せに浸ってただけですー」
……えーっと。
なんというかそれは、恥ずかしくないのでしょうかサツキさん。
そんな風に思って半眼でフォークを咥えたまま見ていると、自分が何を言っていたのか気がついたらしく、顔を赤くしてもじもじしながら俯いた。
でもあれだな、気持ちは多少わかる。そうやって表情がころころと変わるサツキを見ているのはなんか幸せだ。だってサツキかわいいし。
「もー……あんまり見ないでよぉ……」
あー、照れてるサツキまじかわいい。
萌えってやつ?俺は別にオタクとかそういうんじゃないけど、サツキに対してはそういうのわかるなー。
あんまりかわいいから、サツキにキスをした。
「!?」
サツキはとてもびっくりしたようだったけれど、すぐに目をつむって、キスに集中した。
軽く口づけをして、一度離す。
サツキが物欲しそうな顔をしているから、もう一度口づけをする。
今度は、サツキの口の中に舌を入れる。
お互いの舌を絡めあい、深く、深くキスをする。チョコレートのように、ひたすらに甘い。
サツキの顔はもう蕩けきっている。
俺も、ちょっとこれ以上は我慢できない。
「……ベット、いくか」
「……うん」
それはもう、とにかく愛し合った。
お互いの身体を求めて、とにかく愛し合った。
せーのっ、リア充爆発しろ!




