朝の散歩と親友からのお誘い
眼が覚めると、サツキが横で寝ていた。どうやら朝まで眠っていたらしい。
すやすやと、気持ちがよさそうに寝ていた。
そんなサツキの頭をひとつ撫でてから俺は起き上がって、少し散歩に出ることにした。
ドアを開ければ、メイドさんたちが忙しなく駆け回っていた。
朝のうちに済ませておく仕事が多いのであろう、大変そうに駆け回っていた。
「おはようございます、ケイ様。あいにくと朝食のご準備はできておりませんので、今しばらくお部屋でお休み頂いてもよろしいでしょうか?」
その中の1人のメイドが俺にそう話しかけてきた。
「いや、ちょっと外を歩きたかっただけだから、気にしなくていい」
「わかりました。どうぞ、ごゆるりと」
メイドさんは一礼すると、他のメイドさんのように作業をし始めた。
俺は屋敷の中を適当に進む。玄関らしきドアを見かけたので、そこから外へとでてみる。
朝日が差し込み、実に気持ちが良かった。そんな中を、目的もなく歩いてみる。しばらくすると、
「ぬし様や」
「……サフィか」
後ろから、いつのまにやらサフィが近づいてきていた。
「ぬし様、ここら一体の巨大なモンスターは大方片付いたでありんす。これでしばらくはモンスターの被害もなくなるかと思いんすが」
「ん、ありがとう。ご苦労様」
俺はサフィに、海に出るモンスター以外に巨大モンスターがいれば倒してくるように頼んでいた。
サフィは「ぬし様の命令とあれば」と言って、実行に移してくれた。
敵にすれば厄介きまわりないドラゴンも、味方だととても頼りになる。
「あっちこっちにいるんでありんすから、移動するのに疲れましたゆえ、お休みさせていただくでありんす。……ふぁーあ」
サフィはそう言って、大きなあくびを1つすると、屋敷の中へと戻っていった。
戦闘自体は疲れるほどじゃなかったんだな。
サフィの恐ろしさを地味に感じつつ、俺も戻ろうかと思い、部屋へと足を進めた。
部屋に戻ると、みんな起きていて、すでに準備も済ませた後だった。
「あ、ケイ。おはよう」
サツキがこちらを見つけて挨拶する。うん、かわいい。
俺も「おはよう」と短く挨拶して、適当に座った。
しばらくするとメイドさんがノックをして、朝食の準備ができたことを伝えてくれた。
その案内に従って、俺たちが食堂へと行くと、クラウディア皇女はすでに席についていた。
昨日と似たような色合いの着物姿だった。
「すみません、クラウディアさん。お待たせしました」
「いや、私も今来たところだからね。気にしなくてもいいよ」
サツキが代表で挨拶をし、俺たちは席へと着いた。
食事を終えると、クラウディアが話しかけてくる。
「昨日の件はもう聞いているよ。さすがは英雄だね。あの化け物を一撃で倒すなんて」
飄々と話すクラウディアに俺は苛立ちを感じていた。
元はと言えば自分の国のことだろう。サツキが危険な目にあうだなんて間違っている。
俺はそのことに対して強く言おうかと思ったが、サツキに止められる。
「これで私からの依頼は完了だね。あとは教会の件だけど、考えてくれたかい?」
「いえ、昨日は申し訳ないですが、考える暇がなかったので。明日にでもお返事したいと思います」
クラウディアとサツキの間で、淡々と話が進んでいく。
まるで腹の探り合いだ。
「そうか。それなら、今日はモンスターの脅威が去ったということで、街でお祭りをやるみたいだから是非見ていってほしい」
「えぇ、是非」
部屋に戻ってから、サツキに話を聞いた。
「で、この国に教会を置くのか?」
サツキはうーんと考えてから、こう言った。
「基本的にはおいてもいい、かな。クラウディアさんが何を感がているのかがわかれば、だけれど」
「そうなのか」
「うん、目的がわかって、それが私の望むものとかけ離れていたら、なかったことにしたいかな」
サツキもサツキでいろいろ考えているらしい。
聖女らしくなってきたとでも言えばいいのだろうか。
けれど、どこか寂しくもある。
「あ、ケイ。お祭り、一緒に回ろうか。リディアのことはもうエリザさんにお願いしてきたし」
「おう、わかった」
願っても無い提案に、俺は2つ返事でそう答えた。




