皇女の依頼とイソギンチャク
ざざーん。ざざーん。波の音だけが響き渡る。
あの女、すごくムカついた。いまだにイライラしている。
なにが、サツキを売ってくれだ。
サツキは物じゃない。売るはずがない。売れるはずがない。親友を、売れるわけがない。
だと言うのに、あの女。ああ、くそっ。
砂浜に敷いたシートの上で、寝っ転がりながら、心の中ではどす黒い考えだけが渦巻いている。
俺はふて腐れたように眠ろうとしていた。
一応、依頼を受けるという体でこの砂浜に来てはいるが、その内容が気に食わない。皇女クラウディアが話した内容が気に食わない。だからやる気も起きない。
『砂浜にね、あるモンスターが現れるんだよ。そのモンスターの退治を依頼したい。本来なら強くないはずのモンスターなんだけれど、巨大化したそいつはドラゴン並みにパワーがあってね。君ぐらい強くないと手がつけられない上に、出て来るために条件があってね』
俺は今、サツキと2人だけで砂浜に来ている。
2人とも水着だ。
俺は言わずもがな普通の海パン。サツキはここに来る前に王国で買った黄色のビキニだ。
サツキと2人で海だなんて、本来であれば手放しで喜びたいのに、周りがそれを許さない。
「はぁ、ケイ。ふて腐れてないでさ。少しは起きたらどう?」
サツキは俺の横に座ったままそう言った。
俺はサツキの方を見ずに手だけ振って返す。
この状況も、それを知ってここまで来たサツキも、止めなかった周りの人も、何もかもが嫌になっていた。
あるいは本当にふて腐れているだけかもしれないけれど。
「…………バカ」
サツキが何かつぶやいたように聞こえた。周りが静かだから、ハッキリと聞こえていたけれど、俺はそれさえも無視した。
バカはお前だと叫んでやりたかった。
『若い男女が2人で仲良くしていると、そのモンスターは現れるそうだよ』
そんなバカらしい条件に、襲われるかもしれないのに、のこのことやってきたサツキに、俺はイラついているのかもしれない。
だから仲良くなんてしないで、思いっきり険悪にしてやることにした。
とりあえずふて寝から始めよう。
「けーいー。ケイってばー」
サツキが呼ぶ。
無視だ無視。俺は狸寝入りを決め込む。
「はぁ、……っと」
ゴロンと。サツキの身体が俺にもたれかかってきた。
柔らかい肌が直接触れ合う。当然だ。お互い水着なわけだし。
「ケイはさ、私に危険な目にあってほしくないんだよね」
当たり前だろ。サツキが傷ついたり、悲しんだりしている姿を見たくはない。
何を当たり前のことを言っているのか。
「私も、ケイに危険なことはして欲しくないな。前のドラゴンの時だって、すっごく心配したし」
あの時は確かに大変だった。数が多かったから手こずってしまったし。
サツキに心配させていたのは反省するべき点だ。
「でも、私の知ってる英雄さんは、私を守って戦ってくれるんじゃないかなって」
……ずるいな、こいつは。
「……俺は」
と俺が言葉を発しようとしたその時、海の方から何かの気配を察知する。
察知したと同時に、傍に置いてあった剣を砂浜に振り下ろし、衝撃波を海へと飛ばす。
砂埃で周りが見えなくなる。
その隙間を縫うように、ぬるぬるとした何かが、サツキの足を掴んで持ち上げる。
「きゃああああ!」
「っ!サツキ!」
海から現れたそいつは、巨大なイソギンチャクだった。5メートルはあるんじゃないかと思うぐらいに巨大な、巨大なイソギンチャクだった。
頭……というか本体の上部分とでも言えばいいだろうか。そこから何本もの触手を生やし、その触手で逆さまの宙吊り状態のサツキの身体を弄った。
ぬるぬるとした触手が何本も蠢いて、サツキの身体を這い回る。
ある触手は胸周りを押し上げるように這い回り、元々身長の割に大きな胸をさらに強調させるように縛り上げていく。
「ちょ、やめ、んっ!やだぁ!」
またある触手は、両手を縛り、サツキが抵抗できないように動きを封じる。
宙吊りの状態から、バンザイのポーズでぶら下げられたような体制になって、次々と触手がサツキに向かっていく。
全身を縛り上げるように、触手はサツキにまとわりつく。
「この、この、んっ!いやぁ!」
またある触手は、太腿をさするように、なぞるように這っていく。
そのまま無理やり、足を開かせるようにサツキの身体を引っ張り、M字のように足を無理やり開脚させる。
「こんなかっこいやぁ!ーーーーっ!」
触手はべたべたとサツキの身体を舐め回すように這いずり回る。
胸や足はもちろん、お腹、二の腕、首筋、脇の下、耳の裏、尻、足の裏、エトセトラエトセトラ。
「そんな、とこ、さわる、な、あっ……んっ……!」
サツキの顔がどんどん真っ赤になっていく。恥ずかしさと、苦痛と、ほんの少しだけ、感じてしまう快感とで、サツキの顔はもうぐちゃぐちゃだ。
声にならない声をあげて、それでも触手はサツキを離さない。
「はぁ、はぁ、んっ!もう、やだぁ……」
サツキの顔は今にも泣きそうだ。目には大粒の涙が潤んでいる。
触手から分泌される少し濁った、ぬるぬるとした液体がサツキに浴びせられる。
サツキの身体がもうぬるぬるのべっとべとだ。
「なにこれ、ぬるぬるして気持ち悪い……、ちょ、そこはらめっ」
大きな触手の先から、小さい触手が何本も飛び出し、サツキの身体をさらに弄った。
全身を縛り上げた上で、さらに擽るように、細かい触手がサツキにまとわりついていく。
だんだんとサツキの息が荒くなっていく。
「はっ、あっ、んっ」
水着の隙間を縫って、サツキの大事な部分へと、触手が侵入
「ふんっ!」
する前に俺が触手を切った。サツキにまとわりついているやつの根元からすっぱりと。
その後すぐに、まとわりついているそれも切り刻んだ。もちろんサツキには傷をつけずに。
サツキは顔を赤らめて、ちょっと息が荒い。
「……助けるのが遅い」
サツキがむすっとした顔でそう言った。
俺は悪いと思いながらもこう返した。
「悪い、なんかエロかったから、つい」
「バカ」
サツキを抱っこしたまま、一度イソギンチャクから離れる。
俺はサツキを下ろして、イソギンチャクに剣を向ける。
「こんなふざけたやつに、時間はかけられないな」
「やっちゃえ!ケイ!」
一閃。
全力で踏み込んで、一瞬で間合いを詰める。
それと同時に、剣を横に凪いでイソギンチャクの本体を真っ二つにした。
衝撃波が海の向こう、水平線まで飛んで行った。
俺の持つ力を、なりふり構わず全部ぶつけてやった。
これで生きてたら、もう、どうにもなんねーや。
お ま た せ




