ご主人様になった親友と、実は私もいちゃいちゃしたいから
その後も、いろいろなことがあった。
ケイのために、ホットケーキを作っていたのに、冒険者達が食べたいと騒いで、宿屋のおばちゃんが商売始めたこともあったっけ。
冒険者って体力仕事だし、何枚も何枚も食べるから、腕がパンパンになるまでフライパン持ってたっけ。
しばらくホットケーキを焼き続けてると、ケイがやってきた。
「おばちゃん!サツキはどこだ!」
……もうちょっと静かにしてほしいなぁ。恥ずかしい。
手が離せないから何も言わないけど。
あぁもう。冒険者の人たちがこそこそ話してるじゃん。
あ、ライルさんと話し始めた。
「サツキ!」
だから、人の名前をいちいち叫ばないでよ、もう。
「ケイ!うるさい!いいから大人しくそこで待ってなさい!」
はぁ、つい怒鳴っちゃった。でも、あれはケイが悪いよね。
……それだけ大事に思ってくれてるのかな。
そうだと、嬉しい、かな。
早く全部作って、ケイの分作ってあげよう。
ケイの分と、自分の分を作って、テーブルに持っていく。
ケイはホットケーキの乗った皿をジッと見ている。
「ケイ、食べていいよ?」
そう言うと、いただきますと言って、一心不乱に食べ始めた。
なんか凄い勢いで食べてる。食べるのすっごい早い。私が男だった時でも、あんなに早く食べたことなかった気がする。
もぐもぐもぐもぐと食べてるケイ。
なんか、作ったものをこうやって美味しそうに食べてもらえるって、嬉しいな。
自分のを食べるのも忘れて、ずっとケイが食べてるのを見ていた。
ハンバーグを作ってあげたこともあった。
自分用にちょっと小さいのを作ったら、ケイに疑問に思われた。
「そんな……あれだけ大食漢だったお前が、それっぽっちで足りるなんて……」
「男の時はそうだったけど、この身体は胃が小さいから、これで足りるんだよ!」
確かに、男だった頃は、作ったハンバーグも、ケイに作ったやつを2個とかは平気で食べたけれど!
でもなんか失礼なことを言われた気がして、ちょっと怒った。
そういうデリカシーのないところは、嫌い。
一緒にお風呂に入ったこともあった。
魔法でお風呂を作ったことは驚いた。顔には出さなかったけど。
だって、褒めたら絶対調子にのるし。
出来たお風呂をまじまじと見る。
魔法ってこんなことまで出来るんだ。私も使えたら、ケイの力になれるかな。
ケイは続いて、火の魔法と水の魔法の2つ使って、お湯を作り始めた。
「うわ、地味……」
「お前、結構難しいんだからな!」
なんて茶化してみたけれど、凄いなぁ、と思う。
魔法を2つ同時に使うなんて聞いたこともなかったし。
やっぱり、ケイは凄い。
「よっし、早速入ろうぜ」
「拒否権はないんですね、そうですね」
一緒に入るぞ、という目をしてくるから、仕方なく一緒に入る。
ケイは、私を自分の股の間から離さない。手をお腹に回して、ぎゅっと抱き着いてくる。
離してと言っても嫌だと返ってくる。
ばたばた抵抗しても、力じゃ、もう、敵わない。
「はぁ、まぁ、いいけど」
こうされるのも、嫌じゃない。
……お尻に当たってる硬いのだけどうにかしてくれれば。
エリザさんともお風呂に入った。
元々男だったから、エリザさんの裸を見たらいけない気がしたけれど、エリザさんからすれば同性なわけだし、そんなこんなで一緒に入ることになった。
エリザさんの胸のそれは、すっごく大きかった。
私のがDなんだけど、E、Fとかはある?なんかちょっと悔しい。いやいや、こないだまで邪魔だと思ってたのに。
「サツキちゃん、今日は、助けてくれてありがとう存じます」
エリザさんが、急にそんなことを言った。
「いやいや、実際に助けたのはケイだし、私は何も……」
私はそう返した。
私がしたのは、無駄にオークの前に飛び出しただけ。勇気ある行動なんかじゃなく、ただの蛮勇だ。
「それでも、震えながらもわたくしの前に立つ貴女の姿に、わたくしはすごく助けられました。ただそれだけで、わたくしは貴女が好きになったのですよ。貴女に剣を捧げたいと思えるほどに」
「いや、でも」
「でもも何もないのです。わたくしは、本気でそう思ってるのですよ?」
ニッコリと笑っていうエリザさん。
この時は冗談だと思って、笑って流したけれど、王様の前でも同じことを言い出すなんて思わなかったなぁ。
それから、馬車の中で、ケイに膝枕をしてる時のこと。
ケイは横になって早々に寝てしまった。
気持ちよさそうに私の膝の上で眠るケイの頭を、優しく撫でた。
エリザさんが話しかけてくる。
「サツキちゃんは、ケイ様のことが、好きなんですね」
「うぇ!?」
大声を出しそうになって、ハッと口を押さえる。ケイは起きなかった。よかった。
その様子さえも、微笑ましく見ているエリザさん。
「べ、べつにそんなこと……」
好き、なのかな。どうなんだろう。
口では否定しているけど、実際はまだ、わからない。
「ケイ様を撫でるサツキちゃんの顔は、素敵な笑顔でしたよ。ケイ様の前では、もっと素直になってあげてくださいませ」
そんな顔してただろうか。自分でもわからない。
エリザさんはその後、その話題を話すことはなかった。
それから今、ケイはドラゴンの群れと戦っている。
ケイは英雄だと言うから大丈夫だと思いたいけれど、心配だ。
だってあんなにもたくさんのドラゴン。もしかしたらと思うと、ぞっとしてしまう。
私には何もできない。
1人でいる子どもに、声をかけてあげることぐらいしかできない。
ならばせめて、彼の無事を祈る。
無事に帰って来ますように。
こんなことなら、もっと素直になればよかったと、今更後悔してしまう。
馬車の中でエリザさんに言われた通りだった。
私は、ケイが、好き……だ。
ケイのことを考えると、胸がドキドキする。
何かあったらと思うと、とても心配。
ケイに色々されたからなのか、女になったからなのか、それとも……元々?それはわからないけれど。
とにかくケイが好きだ。
だからって訳じゃないけれど、無事に帰ってきてほしい。
私だって、ケイともっといちゃいちゃしたい……から。




