食事会と捧げる剣
「さぁさぁ、遠慮しないで食べてくれたまえよ。君たちが来てくれるから用意させた料理だぞ」
「は、はぁ……」
おっさんの勢いに押されて、サツキは困惑している。
俺とエリザは無視して普通に食べている。お、この牛肉の料理美味い。
カチャリと、1度食器を置いたエリザが、おっさんに向かって言った。
「そういえば、報告が遅れましたが、騎士団に謀反を働いたものがおりましたの」
「あぁ、その件ならもう片付いたぞ。エリザの剣も取り戻してあるから、後で確認しておくといい」
「ありがとう存じます」
ここまで何もなく来たけど、そういえばエリザって騎士団の部下に裏切られて剣も奪われてたんだったか。
ってそれつい3日前の話だよな。どれだけスピード解決したんだよ。
「ケイ、どうしてって顔しているね。私が何のために酒場に行っているか、知らない君じゃないだろう?」
「あぁ、そうだったそうだった。しかしその騎士もアホだな。せめてリンデルの街に行っていれば良かったものを」
「ケイ、もうちょっと説明して」
サツキが不思議そうな顔をしてこちらを見る。
俺は仕方ないなと言わんばかりにサツキに説明した。
「さっきも言ったけど、このおっさんは普通に酒場に飲みに来る。身分を隠してな」
「それって、暗殺とかそういうの大丈夫なの?」
「はっはっは、レディ、この私が、そう簡単に殺されるとでも?」
そう、このおっさんは強い。並の冒険者よりも断然に強い。
俺もガチでやりあったら勝てないだろう。
単純な力勝負だけなら、チート能力のある分、俺の方が強いだろうが、戦闘において年季が違いすぎる。
技、戦術、技術、武器の扱い、力。
いろいろな面で、このおっさんは、強い。
「……酒場のマスターも、おっさんが王だとわかってるしな。それに、おっさん直属の部下も見張りに入る。なにより、おっさん自身が強いから、普通は誰も襲おうとはしない」
「父を襲うとすれば、それはよっぽどの無知か、愚か者でありますわね」
「へぇー、そんなにすごいんだ」
っと話がそれたか。
「で、だ。このおっさんは、その酒場で、街の噂とか、そういうのを自分の足で聞いて回るんだよ。それを部下に検証させる。大体の事件は、事件になる前に解決してるよな」
「えぇ、今回も、大方酒場でその騎士達が話をしているのを、父が聞いたのでしょう」
「せめて王都じゃなくて、リンデルの街の酒場に行けば、逃げ切れたのかもな」
「はっはっは、ケイ、この私が、そんな輩を逃すと思っているのか?」
おっさんの凄味が増した。
サツキが怯えている。
俺はおっさんを睨み返した。
「……失礼。怖がらせてしまったね」
「わかってるなら最初からすんな」
俺はサツキの手を握った。少し、震えが収まった気がする。
「大丈夫か?」
「うん、だいじょうぶ」
サツキは大きく深呼吸をして、震える身体を止めようとしている。
エリザも心配そうに見ている。
「しかし……彼女がケイの探していた、親友かい?随分とかわいいお嬢さんじゃないか」
おっさんが露骨に話題をそらそうとしてきた。
サツキはかわいいと言われて、ちょっと照れている。
「そんな、かわいいなんて」
「かわいいとか、当たり前だろ」
「サツキちゃんがかわいいのは当然ですわ」
「ちょっと2人とも黙ろうか」
何でか怒られた。エリザとまとめて怒られた。
「はっはっは、仲がいいのはいいことじゃないか。いつか、もっと良い知らせを聞きたいものだね」
おっさんは笑ってそんなことを言った。いい知らせってなんだ?
そこに、エリザがまた話題を変えようと、別の話をしてきた。
「父上、話を戻すのですが、わたくしは、騎士団を辞めたく存じます」
「えぇ!?」
「うん、いいんじゃないか?」
「はぁ!?」
ちょ、ちょっとまって。展開が早い。早すぎて追いつけない。
エリザって騎士団長だったよな?それが簡単に辞めるっていいのかよ?
「で、騎士団を辞めてどうするんだい?」
おっさんは聞く。そりゃあ聞くよな。自分の娘のことだもん。
「サツキちゃんを守る剣になりたいと存じます」
全く意味がわからなかった。
サツキもかなり困惑している。俺だって困惑している。
「うーん、それだと、理由が弱いな」
なんでおっさんは認める方向なの?全然意味がわからないんだけど。
「ケイ、私はね、エリザが騎士団に入るのは反対だったんだよ。でも実力があって認められてしまったからね。止めようがなかったのさ。それで今回、こんな事態になってしまったからね。できればそのまま辞めてもらいたかったのさ」
俺の心を読まないでほしい。
しかし、まぁ、わからなくはないな。娘が前線で戦う。あんまりよろしくは思えない。
けどエリザの方の理由がなぁ。
「わたくしの命は、サツキちゃんに救われたといって過言ではありません。ならばこの剣を、サツキちゃんに捧げるというのは、筋の通った話でありましょう?」
だから心を読むなってーの。なんなんこの親娘。
エリザはどれだけサツキを心酔してるんだか。
サツキに至っては、話を理解しきれていないようだ。
目を丸くしてフリーズしている。
そんな時だった。
1人、おっさん部下が食堂に駆け込んでくる。
「陛下!」
「なんだ騒々しい、客人の前だぞ」
その部下は、俺の顔を見て、一瞬だけほっとした顔を見せた気がする。
それからおっさんの前に跪き、衝撃的な事実を告げた。
「街の外に、ドラゴンの大群が現れました!」
はたしていちゃいちゃとはいずこへ
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