トランプと罰ゲーム
エリザと出会ってから2日後、俺とサツキはエリザと共に王都へと向かっている。
昨日出発しなかったのは、単純に馬車の用意ができていなかったためである。
リンデルの街に在中する騎士に話をつけ、馬車が用意できたのが今日なので、今日の出発となった。
「おぉー、結構、揺れるね」
サツキは席に立ち膝で、窓から景色を眺めながら言った。
今日もかわいい。
リンデルの街と王都は、実はそれほど遠くない。
もちろん馬は生き物なので、その時々の条件にもよるが、だいたい2日程度でたどり着ける。
その遠くない距離の王都に、なぜ以前2週間もいたのかと言うと、サツキが王都に行ってるのではないかと考えたからだ。
最初の1週間はサツキを探すために時間を使い、その途中で王都近くにドラゴンが現れたという話になり、それに参加し、王と話したり、パーティに参加してたりなんだかんだしているうちに2週間も時間が経っていたというだけのことだ。
まぁ、その時の話はいいか。
馬車の中は、観覧車のゴンドラのように向かい合う席になっていて、俺の横にサツキ、向かいにエリザが座っている。
エリザは特に話さない。
というより、ずっとサツキを見ていた。舐め回すように。
いや、俺もずっと見てるんだけど。
サツキも気づけよな。近くに変態の視線があることに。
「エリザ。王、おっさんは何で俺に会いたがってんだ?」
「ケイ、王様のこと、おっさんって言うのは良くないんじゃない?」
サツキは窓の外を見たまま、そう言った。
話は聞いているらしい。
「いいんだよ、おっさんはおっさんなんだよ」
実際、俺の中では王と思えなくて、おっさんとしか思えないんだよなぁ。
「父は、理由までは教えてくれませんでしたわ」
エリザはそう言った。
ますますわからんな。あのおっさん何の用なんだか。
「まぁ、行けばわかるか」
何か面倒な予感はするものの、実際におっさんに会わないことには、こればっかりはわからない。
俺は、考えるのを放棄して、窓から乗り出して外の景色を見る、サツキのお尻を見ることにした。
ミニスカート、もうちょっとで見えそうなんだよなぁ。
「暇だね」
サツキは景色を見るのをやめて、座り直してそう言った。
ミニスカートの中は見えなかったです。悔しい。
「暇だって言ってもな」
俺は冷静に返した。俺はいつだって冷静だけど。
「申し訳ございません」
「わわっ、エリザさんが悪いんじゃないよっ」
エリザが謝り、サツキがそれをなだめていた。
実際のところ、景色を見るか、話をするかしかないからな。
どうしたものかと考えていれば、御者の人が提案してきた。
「トランプでしたら持っていますが、よければ使いますか?」
ありがたい申し出だったので、トランプを受け取って、簡易テーブルを出した。
さて、何をするかなのだけど、
「ポーカーとか、どうかな」
サツキが提案する。ポーカーなら、カジノとかでありそうだし、エリザもわかるか。
「えぇ、ポーカーなら、存じております。ケイ様も異存はないですか?」
「あぁ、問題ない」
俺はそう言って、トランプを切った。
普通のヒンズーシャッフルだけど、ちょっと早く、ぱぱっと切った。
「あら、ケイ様はディーラーでもやったことがあるのでしょうか」
「いや、そういう訳じゃないけど、何となく早くカードを切れるとかっこいいって思ってた時期があって、練習したんだよ」
「ケイはそういうの無駄に上手いよね、私も練習したけどできなかったし」
調子に乗ってリフルシャッフルも決めてやった。サツキとエリザはそれを見て感心していた。
適当に5枚配って、ルールの確認をする。
「交換は1回か?あんまりやりすぎると面倒だしな」
「うん、それでいいんじゃないかな」
山札を真ん中に起き、1回だけ交換する。それで役を作って、一番強い役の人が勝ち。
遊びとしては十分だった。
サツキは悩んだ末、2枚交換した。
エリザはペアが1つあったのか、3枚交換した。
俺は、5枚全部交換した。
「ケイ、アホなの?」
「よっぽど、手が良くなかったのでしょうか」
「いや、2ペアはあったけど」
「なんで!?なんで5枚交換した!?」
「ロイヤルストレートフラッシュ、でないかなって」
「でないよ!」
3人で同時に手を見せ合う。
サツキとエリザは1ペア。
俺はブタ、役なしだ。
「ほら、交換しなかったらケイの勝ちだったのに、アホだなぁ」
「ゲームだから、いいんだよ」
そんな調子で、何回か遊んだ。
何回か遊んだ後に、サツキが言った。
「ねぇ、これに負けたら、罰ゲームってどう?」
俺はなるべく表情を崩さず、サツキの方を見た。
エリザの目が動いたのも見逃さない。
「お?いいのか、そんな事言っちゃって」
「勝率的にはケイが一番負けてるのに、なんで自信ありげなの?」
「こういうのって、お前が負けて恥ずかしい格好とかするのがお約束じゃん?」
「ならないし!勝つし!」
サツキは鼻息荒くそう言った。
エリザも乗っかってきた。
「あら、いいじゃありませんか。ちょっと疲れてきましたし、これが最後ということで、1番弱い役の人が、残りの人の言うことを聞くというのはいかがでしょう」
「あんた、以外とエグいこと考えるな。けど乗った。サツキもそれでいいか?」
「うん、いいよ」
「結果がどうなっても文句言うなよ」
「言わないよっ」
言質とった。エリザも笑みを浮かべている。ずっと笑顔は崩していないが、笑顔の質が変わった。
俺はカードを切って、それぞれ配る。
サツキは配られた手札に、むむむと悩んで、2枚交換した。
エリザは、1枚だけ交換した。
俺は、5枚投げた。
「ケイ、勝つ気ある?」
「あぁ、あるぞ」
「もう投げたんだから、恨みっこなしだからね」
「わかってるって」
サツキは最早勝った気で、何させてやろうかなーなどと呟いている。
俺は山札からカードを5枚とる。ふぅ、失敗してたら格好悪かったぜ。
「じゃあいくよっ。私は3カード!負けは無いはずっ」
サツキのドヤ顔かわいい。この後で泣きを見るのにドヤ顔してるのかわいい。
「わたくし、4カードですの。少なくともわたくしは罰ゲーム回避ですわね」
そうだな、3カードより、4カードの方が役は上だ。
まぁ、カードを回してやったんだから、当たり前だが。
「ケイは?ほら、1ペアでも2ペアでもいいから、早く見せなよー」
サツキが催促するから、俺は自分の手札を、公開した。
スペードの、エース、キング、クイーン、ジャック、10。
「……え?」
「あらあら」
「いやー、運が良かった」
まごう事なき、ロイヤルストレートフラッシュだ。
「ちょっ!?嘘でしょ!?絶対イカサマしたでしょ!」
サツキが憤慨する。
もちろんイカサマだが。
カードを切るときにイカサマを仕込むなんて、当たり前じゃん?
「してないし。いやーついてるなぁ、俺」
「えぇ、本当英雄様は持っているものが違いますわね」
エリザがよいしょする。
サツキは納得がいかないようで、もう1回と言っている。まるでギャンブル中毒だ。
「サツキ、これが最後と言ったな」
「結果がどうあっても文句を言わないとも言いました。サツキちゃんは、どちらも了承しましたよね?」
もはや、サツキに逃げ場はなかった。
その後1時間ほど、俺はサツキの膝枕を堪能した。
サツキの太ももは、すべすべで気持ちが良かった。
設定の修正、それに伴い、前話までの修正。
サツキ(男ver)の身長を180cmに。
ケイとサツキの年齢を16才と明言する内容を加えてあります。




