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隣国とに小競り合いが収束し、護るべき国へと帰還を果たすと、早馬で城にしか帰還を伝えていなかったのに拘らず、
城下町は歓声に包まれていた。
常時忍ばせている懐中時計で時間を確認してみるも、午前の五時前である。
窓という窓が開き、人という人が溢れ、
騎士団に声援を送る。
「…団長、なんでみんな起きてんすかね」
副団長を任せているラーグ・シュタイン坊が小声でそう呟く。
その目には「おめぇの所為だろうが」という語外の意思がありありと滲んでおり、なんというか、笑うしかない。
因みに、このラーグ君、前ではなく坊と呼ぶとガチ切れするので注意が必要だ。
「やーーー、不思議な事もあるもんだ。
今巷だと能動的に朝を過ごすという朝活なるものが流行っているらしい。きっとそれだ。
そういう事にしておこうじゃないか。
…あー、諸君、くっそ疲れているのは重々承知なのだが、その、英雄然とした振る舞いをお願い出来るだろうか。」
振り向き後に続く騎士達にそう伝えると生暖かい微笑と是、という頷きが返ってくる。
前を向き直すと、教会の鐘が強風に煽られ
けたたましく鳴り響いた。
その風は民衆の間も吹き抜けて行く。
風が収まると、辺りには甘やかな花の香りが漂い、歓声が再び巻き起こった。