第57話:北海救援戦
窮地の知人を救う為に、花びらが風に舞う。
カズ君と桃香が徐州牧に命じられて2週間。早くも波乱の展開を迎えていた。
徐州の隣の北海の太守を勤めている孔融から救援要請が来た。孔融は都城に武装蜂起した旧黄巾軍武将の管玄を中心とした賊により思わぬ反撃を受けて包囲されているらしい。
カズ君は困っている隣人を見捨てられないということで私と吹雪が中心とした救援隊を出陣。
カズ君が指揮する陽動部隊とは別に私達は劉天牙隊と共に都城郊外にある森に布陣して待機していた。
「黄巾軍残党がまだ残ってたなんてね……」
「まぁ…それだけ今の朝廷に不満があるってことよ。だけどそんな理由だけで民を襲うなんて許せないわ」
「ふふっ……私達もまるで一刀君や桃華みたいになってきたな」
「そうね♪」
「だったら私達は只々2人の道を切り拓くだけ………古龍八卦炎拳伝承者…糜竺。大暴れさせてもらうわ」
そういいながら吹雪は阿修羅手甲と羅刹足甲を装着して状態を確かめるように手足を動かす。
私も迫撃弩に矢を装填すると遠くで小さいながらも大声が聞こえて来た。
方角的には黄巾残党軍本陣がある場所からであり、恐らくはカズ君が率いる陽動部隊が攻撃を開始したのだろう。
そう考えていると偵察に出ていた兵士が馬で駆け付けて私達の前に立ち止まると膝を付いて報告を始める。
「報告‼︎都城を包囲していた敵主力が本陣へと後退を開始‼︎」
「一刀君の陽動が成功したようね?」
「残った敵の数は?」
「はっ‼︎包囲部隊の約8割が本陣に向けて後退‼︎残り2割も広範囲に展開して非常に包囲網が薄いとのことです‼︎」
「わかったわ。じゃあ全部隊出陣‼︎包囲網が薄くなった今が好機とし、孔融軍を救出するわよ‼︎」
『応っ‼︎』
兵士達を鼓舞するとすぐに馬に乗り、迫撃弩を高々と掲げた。
「「全軍‼︎私達に続け‼︎」」
私達を先頭にして後から続く劉天牙隊の騎馬200騎が続く。彼等は私達が義勇軍を率いていた時から付き従ってくれている謂わば最古参兵にあたる。
鍛錬や装備に関しても精鋭の名前に恥じない専用のものを採用しており、その高い練度と団結力、青と白の鎧から別名‘‘天空隊”と呼ばれている。
その高い突破力はまさに精鋭であり、少し先に布陣していた敵軍が瞬く間に騎馬隊の餌食になっていく。
「死にたくなかったらそこを退きなさい‼︎私達に立ち塞がるなら死あるのみよ‼︎」
私は迫撃弩で右左にいる敵を薙ぎ払いながら、途中で手綱を掴みつつ立ち上がり、脇で構えると離れた場所にいる敵に矢の雨を見舞う。
カズ君は‘‘まるでライルさん達の武器みたい”って言ってたけど、我ながらそう思うわ。
「突き進め‼︎正義と勝利は我等の手にあり‼︎奪うことしか脳がない獣達に我等の力を見せつけろ‼︎」
吹雪も早々と馬から飛び降りると周りにいる黄巾軍に格闘を仕掛け、古龍八卦炎拳にて敵を軽々と束で吹き飛ばしていく。
吹雪は私にとって本当の姉妹のようであり、付き合いはみんなの中で1番長い。だからお互いの長所や短所、考え方なんかもすぐに補い合うことも簡単。
阿吽の呼吸という奴ね。
吹雪が近場の敵を駆逐し、私が遠距離の敵を排除していくと薄かった包囲網を突破し、都城に雪崩れ込んだ。
中では孔融軍が警戒していたが私達が前に出るとすぐに安堵の表情を浮かべた。
「我等は徐州牧劉 玄徳および北郷 一刀率いる軍が武将‼︎簡 憲和および糜 子仲‼︎孔融殿の救援要請に応じて馳せ参じた‼︎」
「おぉ……よく来てくれた………私が北海太守の孔 文挙です」
現れたのは白髪の老人で、長い髪を纏めて手には一般兵用の弓が握られていた。
「我等の窮地によく駆け付けて下さった……北郷殿と劉備殿には深く感謝いたします」
「お話は後です。今は黄巾軍残党から逃げ果せましょう。民はどうなっていますか?」
「幸いにも包囲される前に逃がすことが出来ました。あとは我等が脱出できれば………」
「分かりました。我等が盾となって皆さんを護ります。現在の戦況を軽くお願いします」
「はい……皆さんが主力を引きつけて頂けたおかげで突破は容易でしょう。幸いにもこちらの兵はそれほど損失していないのでこの戦力差ならいけます。ただ……」
「どうかしましたか?」
「あの敵………黄巾軍ではないのです」
「黄巾軍ではない………じゃあ何処の軍なのですか?」
「捕らえた兵が吐きまして、奴等は袁紹の軍です」
私達は思わず考え混んでしまう。攻めてきていたのは黄巾軍残党ではなく北海の西側に位置する袁紹軍。
しかし彼奴らの古い装備はどう考えても黄巾で頭に黄色の頭巾も被っている。しかしここで各諸侯の情勢を思い出す。
確か袁紹は近隣諸国に対して領有権を主張しており、地位剥奪を帝から直々に言い渡された奴はかなり躍起になっている。
特に幽州や晋陽、濮陽の3箇所に対して度々領土侵入を犯すという挑発行為をしている。
ここ北海は外界の玄関口を担っている他に海洋漁業も非常に盛ん。国家の収入源を考えたら非常に計り知れない利益を齎してくれる。
もし袁紹の狙いがその収入源だとすれば納得できるが所属を偽る遣り方が私達は気に食わない。
「………なんて卑劣な……」
「全くです………」
「では詳細を脱出後にお聞かせ下さい。今はここから逃げ延びることに専念してください」
「忝い……」
脱出を開始させ、私達が孔融軍を死守しながら黄巾軍に扮した袁紹軍を返り討ちにしていく。
孔融軍の脱出を確認したカズ君達も遅滞攻撃をしながら私達と合流を果たした。
結果的に孔融軍は都城を失うことになったけど袁紹軍は都城制圧後の策を持ち合わせていなかったようで孔融軍が反撃に出ると一目散に逃げ出した。
カズ君はこれを理由に袁紹逮捕を検討したけど孔融殿の要望で‘‘ひとまず”は任せることになった。
間違い無く次の敵は袁紹。あの愚者に備えて私達も軍備拡大をするのであった……………。
、
北海を襲った黄巾軍は袁紹による計略だった。
卑劣極まりない袁紹に義憤を覚える中、魏と呉から使者が訪れる。その使者が誰か分かり、朱里は驚きを隠せなかった。
次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”
[はわわ軍師の一族]
龍、虎、狗。3人の諸葛が揃う。