第41話:孫策
袁紹の非礼ぶりに怒る一刀。そこに江東の小覇王が訪れる。
本当に腹立たしい……噂には聞いていたけど、この世界の袁紹は愚者だ。一国を治める統治者としての責務を全うせず、名家だからという理由だけで自らは上だと思い込んで相手を見下す。武人としても人としても最低な奴だった。
思い出しただけでも本当に腹立たしい。
「ご主人様、軍議はどうなりました? 」
「……………」
「ど……どうしたのカズ君?」
「何か軍議であったのか?」
「………後の説明を頼む 」
「えっ⁉︎あっ……うん……」
「はわわ……実は皆しゃん………」
「んと……えと……」
桃香、朱里、雛里は軍議で起こったことを話す。袁紹が俺のことを侮辱したこととみんなのことを馬鹿にしたこと。
最後に怒りを露わにして行動に移したことなどをだ。
「おのれ袁紹‼︎我らのご主人様を侮辱するなどと‼︎ 」
「絶対に許せないのだ‼︎」
「だけど私達の為に怒ってくれたカズ君の姿みたかったな。ますます好きになっちゃうかも♪」
「これは実家に帰ったら父上達に袁紹との取引は拒否って言っておいた方がいいわね。そんな奴と取引なんて絶対に嫌だわ」
「けど……みんなにはすまないことをした。特に一緒にいた3人には怖い思いをさせてしまったよ……俺も奴のことは言えないな……」
「そんなことないよ‼︎」
謝罪しようとしたら桃香が俺の手を掴んだ。
「確かにいきなりだったからちょっと驚いちゃったよ。だけどね……それ以上に嬉しかったんだよ。ご主人様は私達の為にあんなことをしてくれたんだって……」
「桃香………」
「桃香様の言う通りです‼︎ご主人様は本当に私達のことを大切に思ってくれていると実感しました‼︎でしたら今後も私達もご主人様を支えていきましゅ‼︎」
「わ……私もでしゅ‼︎」
「みんな………ありがとう」
目頭が熱くなってくる。改めて俺は本当にいい家族に巡り会えたと実感するよ。不思議と袁紹への怒りが和らいでいき、あんな奴の相手なんか馬鹿らしく感じて来た。
「さてと….……切り替えて行かなきゃ‼︎知ってる通り泗水関には董卓軍第3師団と第4師団が待ち構えていて、それぞれ董卓の腹心である華雄と張遼。それに噂の傭兵団が待ち構えている」
「はい、泗水関は地形を巧妙に利用した関で自然の力と関の堅牢さを兼ね備えた城塞です」
「あぁ。それだけじゃない。左右は切り立った崖になっているからこっちは正面から向かうしかないし、敵側は城壁と崖から仕掛けることも可能だ」
「もし例の傭兵団が噂通りの実力なら確実に地形を利用してくる。しかも情報がないんだったらね………」
「ひとまずは調査を続けるよ。でもその前に盗み聞きは関心しないな。今の俺は機嫌が悪いから出て来たらどうだ?」
俺がそういうと天幕に1人の女性が入って来た。
桃色のロングヘアに真っ赤に綺麗な瑠璃色の瞳。背丈は俺より少し小さいがスタイルはまさしくモデル並みで桃香達に負けない位の巨乳で額に何かの印がある女性……軍議の際に袁術と一緒にいた孫策だ。
「あら?気がついちゃったの?」
「何者だ貴様⁉︎ここを我等の陣地だと知ってるのか⁉︎」
「ちょっ⁉︎あ……愛紗ちゃん‼︎この人は味方だよ⁉︎」
「えっ⁉︎」
「この人は孫策 伯符。‘‘江東の小覇王”と云われている孫策軍の大将よ」
「えっ……あ………」
「そんなに警戒しなくても大丈夫よ関羽♪噂に聞いた通り忠義に厚いいい将ね♪」
「し……失礼した」
「いいのよ、いきなり来た私が悪いんだから………改めて名乗るわね。私は孫策 伯符。御遣い君にちょっとした用事があって来たわ」
「俺に?」
俺に用事があると言われて自然と前に歩み寄る。敵対心は全く感じられないが何を考えているかが分からない。こういった相手が戦場ではいちばん厄介な存在だ。
「ふ〜ん………」
「な……なにかな?」
「別に♪噂通り優しそうでいい男だな〜って思ってただけよ♪」
「えっ⁉︎」
「駄目ですよ‼︎ご主人様を取っちゃ駄目なんですからね‼︎」
俺を取られると勘違いしたのか桃香が俺の腕に抱き付いてきた。それを見た孫策はプッと吹いて笑始める。
「はははははははっ‼︎‼︎大丈夫よ劉備ちゃん♪取ったりしないわよ♪」
「む〜‼︎」
「そんなに警戒しないで♪今日は貴方達に提案しに来たのよ」
「提案?」
「えぇ、その前にさっきのカッコよかったわよ〜♪袁紹ったら情けない顔していい気味で見てた私もスカッとしたわ♪」
「…………孫策」
「分かってるわよ……貴方達、私達と組む気はないかしら?」
いきなり少し真面目な表情をする孫策の提案。俺達は突飛押し過ぎて理解が追い付いていなかったが、ようやく言葉の意味を理解して尋ね返す。
「貴方達って連合の大義名分が怪しいって思ってるでしょ?袁紹が言う言葉なんて嘘だろうし、洛陽の民が苦しんでるなんて事実もないんだし」
「………その根拠は?」
「勘♪」
「……………はい?」
「勘もあるけど、貴方が袁紹にした行動である程度は確証を得たわ。貴方なら信頼出来るってね………もちろん手を組むことは貴方達にとっても利益になるわ。例えば‘‘傭兵団”についてもね♪」
傭兵団の言葉に俺達は食いついてしまった。今の段階では指揮官らしき男の外観的特徴しか判明しておらず、敵となるのだったら少しでも情報が欲しいところだ。
「………目的は?」
「袁紹の悪事。それを公にすることの手伝いよ」
「それが俺達に何の関係がある?」
「これが関係あるのよね………貴方達、王叡を討伐したわよね?」
「あぁ」
「その王叡は忌々しい十常侍と関わりがあったのよ。そしてその両方と繋がりがあったのが袁紹よ」
「やっぱり………薄々は分かってたけど…あの女……」
「その手伝いをしてくれるなら私達も貴方達に協力するわ。どう?悪い条件じゃないでしょ?」
「その条件なら俺達としてもありがたい。条件を飲むよ」
「ありがとう♪じゃあお礼に情報をあげるね。傭兵団指揮官の名前はライル。歳は20代半ばで銀髪に左目の切傷が特徴のなかなかカッコイイ男らしいわ。それとこれは噂なんだけど戦うとなったら用心した方がいいわよ」
「なぜ?」
「噂通りだったら華雄と張遼、おまけにあの呂布にまで模擬戦で勝っちゃったみたいよ」
『呂布に⁉︎』
天下無双の武を誇る呂布に勝つなんて………。3万の軍勢をたった1人で壊滅させた伝説を持つ化け物じみた相手に勝つなんて、そのライルっていう人………どんな人なんだ?
「私が知ってるねは今のところこれだけよ。じゃあ後は先鋒は頑張ってね♪応援してるわ♪」
それだけ伝えると孫策は手を振りながらウィンクをしてテントから出る。まるで嵐の後みたいな静寂した雰囲気が俺達を包み込むが、ひとまずは傭兵団指揮官の名前だけでも分かったからよしとしよう。
「………なんだったのでしょうか……」
「な……なんていうか……ぶっ飛んだ人づったね」
「だけど……王としての気迫や指導者としての威厳……武人としての気質はまさしく本物だ……」
「一刀君……これからどうする?」
「ひとまずは当初の予定通りに動くよ。敵の将を捕まえて情報を引き出す」
「まずは泗水関の華雄ですね?」
「そう。頼むよ愛紗」
「御意」
「鈴々と桜と吹雪は包囲部隊の指揮を頼むよ。敵を通さず華雄を逃がさないで」
「ガッテンなのだ‼︎」
「うん、任せておいて」
「了解したわ」
「だけど無理は絶対にしないで。危なくなったらすぐに退くんだ。いいね?」
『御意‼︎』
それだけいうと全員が準備の為に外へ出る。俺も外に出て降り積もった雪を踏みながら不意に誰かに見られてる気配がしたので空を見上げる。
「鳥か………」
鳥だと思って気に止めなかった。しかしそれが鳥ではないと分かるのはもう少し後の話となる。
泗水関での戦い。間も無くで俺は運命的な出会いを果たすこととなる……………。
泗水関への攻撃が開始された。まずは華雄を捕まえて情報を引き出す為に愛紗が奴を誘い出す。
作戦は順調に進むと思われたが、一刀達はそこで思いもよらなかった反撃を受けることとなる。
次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”
[U,S,MARINE,s]
御遣いと狼。遂に対峙する。