第3話:桃園の誓い
仕事を終えた一刀達。そこの女将から酒を渡され、歴史的場面に立ち会う。
「「「「つ……疲れたぁ〜……」」」」
一文無しだった俺達は食堂の女将さんの店にて食べた分だけの額を働くこととなった。そして俺も皿洗いを終えて、椅子にもたれ掛かりながら一息ついた。
「全くです……戦場で槍を持つならば疲れなどしないのですが……」
「はっはっはっはっ‼︎‼︎厨房だって女の戦場なんだよ‼︎こんなことでへこたれちゃ、このさき人助けなんて出来っこないよ‼︎‼︎」
「えっ?……聞いてたの女将さん?」
「厨房であんたらの話を聞いてたのさ……応援してるよ。お嬢ちゃんたち」
「うぅ〜……応援してくれるなら、皿洗いは勘弁して欲しかったのだ……」
「それはそれ‼︎これはこれさね‼︎大きなことをしようってなら小さなことを気にしちゃダメさね♪」
女将さんは横腹に手を添えながら豪快に笑う。なんとも肝っ玉が座った女将さんだ。
「まぁそりゃそうだな。上に立つ人間なら常に前を向いてないと……」
「おっ⁉︎お兄ちゃん分かってるねぇ‼︎お天道様の下で歩いてくためにゃ、ケジメってもんが必要さね……もっていきな」
女将さんから陶器の瓶を手渡される。
「これは酒?」
「餞別さね。これからの世の中がよくなるための………」
女将さんが深く頷く。
「それより劉備、これから行く宛はあるのか?」
「えっ?……うん。」
「ここを出たら易京城にいきます。そこで公孫瓚殿の軍勢に客将として加わる予定です」
「そうかい………公孫瓚様んとこなら大丈夫さね。それより折角だからその酒は町の外にある桃園で飲んだらどうだい?今頃は満開な筈だよ」
「桃園かぁ……一度いって見たいねぇ♪」
「だったらまずはそこに行くのだ‼︎」
「応っ‼︎また来なよ‼︎」
「ありがとう女将さん」
そういいながら手を振って見送る女将さん。俺達は酒壺を片手に桃園へと向かった。
「すごいね〜♪」
「美しい………まさに桃園という名に相応しい美しさです」
眼下に広がる桃の木の絨毯。まるで日本の桜を彷彿とさせる美しさだ。その光景に俺も思わず言葉を失っていた。
「本当に綺麗な場所だ………故郷を思い出すよ……」
「おぉ……ご主人様がいた天の世界にもこのような場所があったのですね」
「あぁ……まぁ桃じゃなくて桜なんだけどね………春になると満開になって本当に綺麗だ」
「雅だね〜♪」
「さあ‼︎酒なのだ‼︎‼︎」
周囲を回り始める張飛に頬がゆるんだ。
「約一名……物の雅を分からぬ者もいるようだが……」
「あははっ♪鈴々ちゃんらしいね♪」
「ははっ……あぁそうだ。少し気になってたことがあるんだけど……」
「はい、なんでしょうが?」
「さっきから呼んでる名前ってあだ名かなにか?」
「えっ?ご主人様って真名を知らないの?」
「いや……知らないな」
聞いたことが無い真名という言葉。劉備が説明を始める前に関羽が説明を始めてくれた。
「我々の持つ、本当の名前です。家族や親しき者にしか呼ぶことを許さない、神聖なる名……」
「その名を持つ人の本質を包み込んだ言葉なの。だから親しい人以外は、例え知っていても口に出してはいけない本当の名前」
「けど、お兄ちゃんは鈴々達のご主人様になるからちゃんと真名で呼んで欲しいのだ‼︎」
「えっと……つまりは俺に真名を託してくれるってこと?」
そう尋ねると3人は首を縦に振った。
「我が真名は愛紗」
「鈴々は鈴々」
「私は桃香!」
相手の本質を表す真名を預けられる。非常に重みがあり、心臓が堕ちるような錯覚を受けるような感覚だった。これがきっと劉備、関羽、張飛という英傑なのだろう。
それに対して俺も首を縦に振った。
「じゃあ、血盟だね♪」
無垢な笑みを浮かべる劉備こと桃香。そして張飛こと鈴々が酒が注がれた杯を関羽こと愛紗、俺、桃香の順番で渡していき、ほぼ同時に高々と掲げた。
「我ら四人‼︎性は違えども、姉妹の契りを結びしからは‼︎」
「心を同じくして助け合い、みんなで力なき人々を救うのだ‼︎」
「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも‼︎」
「願わくば、同年、同月、同日に死せんことを‼︎」
「乱世に志を示し、共に義の道を歩まん‼︎乾杯‼︎‼︎」
俺の言葉で杯を鳴らす。かつて劉備、関羽、張飛が義兄弟の契りを結んだ‘‘桃園の契り”。
まさか自分がその歴史的は場面に立ち会うことになるなんて想像すらしていなかった。
だけど悪い気は一切しなかった。それに考えていても仕方が無い。だったら俺はこの心優しい少女達と共に乱世を終わらせて平和の世を実現させてみせる。
これがこの俺………北郷 一刀の第一歩であった……………。
公孫瓚軍に合流する前に兵力を確保したい一刀達。一刀が資金を作り出して、そのお金で兵力を集める。その中に2人の少女がいた。
次回作‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い
”
[義勇軍]
劉備義勇軍、ここに結成。