表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/90

第25話:信念の交わり

黄巾の乱も終局に向かい、一刀も韓忠との決着に妙技を繰り出した。

「はっ‼︎」

「でりゃ‼︎」


俺と韓忠による一騎打ちが始まった。韓忠は体格がそれを示すがの如く力を主体とした非常に思い斬撃で仕掛けて来て、加えてそれに似つかわしく無い素早い攻撃を繰り出して来る。

奴の薙ぎ払いを後ろに仰け反りつつ回避すると勢いを利用して同じように薙ぎ払うが防がれ、そのまま反対に回転しながら振り下ろす。

それが防がれると韓忠の薙ぎ払いを後ろに飛んで回避し、着地と同時に前方に大きく踏み込んでから縮地抜刀術を繰り出す。


「縮地か‼︎中々やりおる‼︎」

「これを受け止めるだなんて………やっぱりお前は強い‼︎」

「だがまだまだ‼︎もっとお前の残虐性を見せてみろ‼︎」

「俺にそんなものは不要だ‼︎はぁっ‼︎」


残虐性をみせろと言われて俺はそれを否定しつつ、韓忠の大剣を弾くと空にて刺突を繰り出す。だが紙一重で避けられると天を逆手で持ち替え、振り下ろされる大剣を受け止めた。


「北郷流二刀心眼術‘‘三日月”‼︎」


少し離れて周りにいる子供達に被害がでないように攻撃範囲を小さくしつつ威力を高めた三日月を放つ。だが韓忠は避けようとはせず、大剣の片方を地面に突き刺して力を込めていた。


「緩いわぁああ‼︎‼︎」


それを一気に抜き取るように振り上げ、砂煙を出しながら三日月の斬撃波を打ち消してしまう。だけど攻撃の手を緩める訳にもいかないので着地と同時に神龍双牙を鞘に戻し、左手に氣を集中させて一回転した直後に突き出した掌底で氣弾を撃ち出す。そこから再び縮地抜刀にて距離を一気に詰めた。

最初の氣弾を弾いたが同時の縮地抜刀には驚いたようで、それは後方に飛ぶことで回避した。


「ふんっ‼︎やりよる‼︎それでこそ殺り甲斐があるというものよ‼︎」

「なぜそこまで残虐性に拘る………あんたの実力なら正しい道に力を使えた筈だ。それなのになぜ非人道的なことに手を染めた?」

「ふっ……知れたことよ‼︎戦うこと‼︎敵を殺すことこそが俺に快楽を与えてくれる‼︎」

「快楽?」

「戦いこそが人間の歴史だ‼︎俺はその歴史に尊重して我が道を征く‼︎それだけだ‼︎」


戦いの快楽を感じる。コンバットハイにも似た思考を持つ韓忠に少し戸惑いを感じるが、すぐに冷静になって韓忠からの攻撃を受け止めた。


「貴様も感じている筈だ‼︎戦いの中で感じる快感が‼︎敵と刃を交えた喜びが‼︎敵を倒した時の喜びが‼︎」

「俺にそんな快楽を感じる気はない‼︎俺が感じるのは仲間や大事なものを守れた喜び‼︎それだけだ‼︎」

「はんっ‼︎それの何が違う⁉︎貴様のいう守れた喜びとやらも所詮は偽善だ‼︎貴様等は倒した敵の屍の山が築かれている‼︎地面が見えないくらいのな‼︎」

「確かにお前から見たら俺達の善意は偽善にしかないかもしれない‼︎だが快楽なんか必要じゃない‼︎」

「人間は常に快楽を求める‼︎‘‘殺戮”という快楽をな‼︎」


先ほどよりも攻撃を強める韓忠。その快楽を求める狂気に満ちた顔とこれまで幾多もの人間を倒して来た大剣はまさに強さそのものだ。

人というのは何かしらの執着心や信念を持つことで驚異的な強さを発揮する場合がある。例えそれが韓忠みたいな捻じ曲がった信念であっても、それが正しい道だと信じていれば必然と力に変わっていく。


俺の刃が人を活かす活人剣であるように奴は人を殺す殺人剣。向こうからしたらくだらないかもしれないだろうが俺から見ても向こうの剣は相対するくだらない剣だ。更にこれは予測だが奴の剣術は大平道術により強化されている。


そんな感じがするのだ。


だから俺はこいつに負ける訳にはいかない。天を鞘に戻し、空で身構える。


「気が触れたか⁉︎ならばあの世に送ってやろう‼︎御遣い‼︎」


韓忠が両手の大剣を俺に振り下ろそうとした瞬間、俺は全神経を集中させて縮地抜刀を繰り出し、韓忠の大剣を吹き飛ばした。


「なっ⁉︎」

「北郷流………二刀心眼術………我流神刀………」


縮地から停止して一気に飛び上がり、身体を捻りながら空を両手で構えて一気に奴の心臓付近に刃を突き刺した。


「がはっ⁉︎」

「…………‘‘雷神降臨”」


俺にしか出すことが出来ない妙技‘‘雷神降臨”。突き出した刃に纏わせた氣が鋭く漏れ出し、それがまるで雷神が発する雷のように見えることから考え出した技だ。

突き刺した空を韓忠の身体から力強く引き抜き、奴の身体が地面に倒れる直前に空を振るって血を飛ばし、鞘に納めた。


「ふ………ふふふ……ま…負けた…か……」

「………そうだな」

「流石は………み…御遣い……だ…………」


俺は死んでいくこいつを見下ろしながら遺言に耳を傾ける。


「北郷………お前は……これからも……その…武で……気に入らない奴等…………ぶちのめし………」


力が無くなっていく中、韓忠は最後の力を振り絞って指差す。やがてそれも小さく音を立てながら地面に落ちた。


「…………俺は信じる道を進むだけだ……」


そういいながら俺は振り返って桃華達のところへ向かう。

やがて周りにいた子供達の洗脳が韓忠の死によって解かれていき、自我を取り戻した子達はそれぞれの家や両親の下に帰っていった。


俺が韓忠に勝利して暫く、戦局は決した。


俺達が黄巾軍本隊を引きつけている間に鉅鹿に俺が渡しておいた密書に従って回り込んだ曹操軍が大規模な奇襲を仕掛けて張角、張宝、張梁は自らが放った火によって焼死。

荊州に展開していた大規模な軍勢も‘‘江東の小覇王”とされる孫策の軍勢と董卓軍が殲滅。

豫州も白蓮と星達の活躍により沈静化に向かい、ここに黄巾の乱は終息した。


だがこの勝利は各地で敗走していた漢室にとって衰退と無能を露わにしただけとなり、権威は奈落の底に落ちた。

もはや漢室は腐敗の一途を辿り、やがては朽ち果てるだろうが今の俺達にそれを止める術はない。


黄巾軍が消滅しても残る不安と苦しむ民。だが今は少しでも勝ち取った平和を満喫したい。

俺達は軍を纏めて駐屯地に凱旋するのであった……………。




黄巾の乱が終結して暫く、各地で奮闘した陣営に漢室より褒美が与えられていたが、一刀達には一向に来なかった。

そこに噂を聞いた文官の張鈞という男が帝に進言するが、ある十人の男達が現れ………。


次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”

[十常侍の暗躍]

漢室に寄生する獅子身中の虫。大木を倒そうと蝕んでいった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ