第20話:軍神の義心
留守を任された愛紗に曹操が歩み寄る。
ご主人様と姉上が官軍の軍議に参加されている頃、私は陣地にて偃月刀の手入れをしている最中だ。
鈴々は昼食を食べにいき、朱里と雛里は曹操軍の軍師と共に策の打ち合わせ。桜と吹雪は兵站の確保と各陣営への挨拶へと向かっている最中で、義勇軍陣地には私しかいない。
外からは鍛錬に励むご主人様の親衛隊‘‘劉天牙”の掛け声と休息中の兵達の笑い声が聞こえてきていた。
私的にはもっと規律を強めた方がいいと思うのだが、‘‘メリハリをつける”というご主人様のご指示で公私の切り替えもしっかりやらせている。
その成果か、劉天牙は我が軍の中でも諸侯とは引けを取らぬ精強な部隊となり、私達の頼もしい仲間となった。
そんな光景を見ながら偃月刀の手入れを続けていると兵が入って来て、私に客人だと伝えるとすぐにその客人が入って来た。
「あら?今日はあなた1人なのね?」
入って来た客人とは私達と行動を共にしている曹操殿だ。
「これは曹操殿。今は官軍の軍議に出られているのでは?」
「あんなのに出たって時間の無駄なだけよ。何進はただ自分が目立ちたいだけでこの討伐軍を作ったのだから」
「しかし、よろしいのか?そんなことをされては後から目を付けられてしまうのでは?」
「もうだいぶ前から目を付けられているわ。いまさら目を付けられたって痛くも痒くもないわ」
そういいながら曹操殿は私に歩み寄り、私の隣に腰を下ろす。
「ふ〜ん……」
「あの………なにか?」
「相変わらずしっとりツヤツヤの髪ね……それでいて白い肌に可愛らしい顔立ち……」
「なっ⁉︎……何を言っておられるか⁉︎」
「それでいてその初心な反応………ふふっ…私の色に染め上げてみたいわね」
「ちょっ⁉︎なぜ私の腕を触られるのですか⁉︎」
「関羽……あなた………私のものになりなさい」
いきなりの言葉に私は身体を強張らせ、理解しようと必死になる。
「あなたの春蘭達にも劣らない武勇に知勇、それに美しさ………全てこの曹 孟徳に捧げるべきものよ」
「な……ななな……何を⁉︎」
「あなたの実力ならすぐにでも私の兵達は受け入れるし、大将軍にだってなれる………少なくともあの男よりも、あなたをうまく使えるわ」
「…残念ながら、私はモノではありません。私は人として、北郷 一刀様と我が姉にお仕えしています」
「あなたが入れ込むほどの男なのかしら、あの男は?」
「はい。主として、敬愛しています」
それを聞いて、曹操はニヤリと笑う。
「…男としては、まだのようだけどね」
「はい?」
「私だったら、あなたの"女"の部分も満足させてあげられるけど?」
「ええっ⁉︎」
「臣下の者は皆"悦んで"くれるわよ?どうかしら?男にあなたを奪われたくはないし、あなたの初は私がぜひ奪いたいわね」
そういいながら曹操殿は私の顎を撫でながら顔を近付ける。私は思わずその手を振りほどき、その場から立ち上がる。
「あら?やはり可愛らしい反応「ふざけるな‼︎‼︎」………」
「我が身、我が心は常に我が主の北郷 一刀様と劉 玄徳様と共にある‼︎人の意見を弁えず、剰え気安く私の身体に触れるなど………ふざけるのも大概にしろ‼︎」
「ふふふっ……ますます可愛らしいわね…更に欲しくなったわ……」
それだけいうと曹操は立ち上がり、入り口へと歩き始める。
「今日のところは帰るわ。だけど……私は欲しいと思ったものは必ず手にいれるわ。あなたが私のものにならないのなら、あなたが敬愛している主や仲間達も纏めて私のものにしてあげる」
「断る………私は如何なる時でも主を裏切ったりはせぬ‼︎」
「そう……ならばあなたが私のものになる日を楽しみにしているわ」
横目でそういいながら曹操は天幕から出て行った。
野心の塊だというのは本当に理解していたが、まさかあそこまでとは思わなかった。
いきなり怒鳴ったので気持ちを落ち着かせるべく、机の上に置かれていたお茶を一気に飲み干した…………。
合流を果たしたその日の晩。明日に開かれる戦いに向けて念入りの打ち合わせが行なわれていた。
大将軍でる何進の命令で義勇軍は最前線に回され、本隊の盾として使われることになった。
無理難題の状況に頭を抱える一刀達に新たな義勇軍が合流した。
次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”
[二つの義勇軍]
二つの義勇軍が力を合わせる。