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第2話:決意する御遣い

劉備、関羽、張飛と出会った一刀。近くの町で彼女達の覚悟を聞く。

何の因果で三国志の世界に飛ばされた俺は、襲い掛かってきた黄巾党の連中を撃退し、直後に劉備、関羽、張飛と名乗る3人の少女達と出会う。


自分の状況に困惑するも、向こうの世界で朝飯を食べていなかった俺の腹の虫が派手に鳴き、仕方なく彼女達と共に近くの町に移動して話を聞くこととなった。




「‘‘天の御遣い”?」

「はい。自称‘‘大陸一の占い師”管路の予言が大陸中に広がっているのです。

“黒天を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。それは輝く純白の衣を身に纏い、光り輝く二筋の刃を手に取る勇敢なる英雄を乗せ、乱世を鎮静す。そのものは天の御遣いなり”」

「………なんとも胡散臭い予言だね……それが何で俺と関係が?」

「それでね。私達もたまたま管路さんに会って話をしたの。その時に御遣い様はあの場所に降り立つって教えてくれたの」

「………それで探していたら俺がいたって訳?」


そう尋ねると劉備は頷く。話を聞くだけでも予言と身なりが一致する。

純白の衣ってのはこの聖フランチェスカ学園の制服を表し、二筋の刃とは間違いなく‘‘神龍双牙”のことだ。しかも場所まで一致したとなると信じるしかなさそうだ。


「それで………君達が俺をどうしたいの?」

「……私たちの理想を実現するために、一刀さんの力が必要なんです」


真剣な表情をしながら助力を願う劉備。


「………詳しく聞かせて」

「はい……私たち三人は大陸各地を旅をしながら力によって虐げられている人々を助けるために旅をしてきました。賊に襲われるだけではなく、民を守るべき存在の漢軍はそんな民を見捨てて逃げ出す………」

「でも名声や権力もない今の私たちの力だけじゃ限界を感じてきて………」

「一つの村を救えても他の村が襲われちゃうのだ………」


その話なら三国志をよく読んでいたから知っている。確かにこの時期は漢室の権力は見る影もなく、宦官の専横や外戚の跋扈。

特に目に余るのは張譲率いる十常侍。奴らは帝の威光を利用して専横を極めていたらしい。

そこから露わとなったのが漢室の衰退だ。それを機に各地で戦が起き、乱世へと突入していく。


そんな事を思い出しながら俺は少し悩んでいた。

彼女たちの目には曇りがまるでない。だが全ての人間を救うだなんて夢物語でしかない。俺が父から継承した北郷流二刀心眼術は侍の意識を受け継いだ活人剣だ。


1の悪を斬り捨て9の善を救う。一殺他生の信念に基づいた剣術だ。そこで劉備に聞いてみたくなった。


「じゃあ劉備さんに一つ質問だ」

「はい」

「君は多くの人達を救いたいんだよね?」

「はい、困ってる人達を見捨てるなんて私には出来ない……」

「それは賊や宦官達も当てはまるの?」


そういうと劉備は口を閉ざした。理想だけ追い求めても現実を重んじなければ待っているのは身の破滅。

暫く沈黙が続くとようやく劉備が口を開いた。


「…………含みません」

「それはなぜ?」

「確かに賊や宦官も最初は優しかった筈だよ……だけどそれがどんな理由であっても人が人を傷付けていい理由にはならない……だから私達は力で暴れてる人達から民を守って戦うの……」


俺は真剣な表情をする劉備を見て思わず唖然とした。


(参ったな………この子は予想以上に心が強い……)


劉備の予想以上に強い心に思わず驚いてしまった。見た目からは武芸には怪しいが、優しい心と強い覚悟と決意に満ち溢れていたからだ。


それを支える関羽と張飛も決意と覚悟に満ち溢れた表情をしている。


かつてじいちゃんから俺は甘い人間だと言われた。だけどそれが俺の力だ。


力というものは使い方を誤れば自分の身ばかりか相手をも傷つけてしまうことになる。

しかし正しい力の使い方を身につければ自分だけではなく他の人をも幸せにすることだってできる。


‘‘世に生を受けるは事を為すためにあり”。じいちゃんの口癖だった。


そして彼女達からもその意志が伝わってきている。俺は軽く笑って3人を見る。


「どうかしたの?」

「………いいだろう。俺の力がどこまてわ役に立つかなんて分からないけど……君たちの理想のために力を貸そう 」

「本当ですか⁉︎」

「劉備の考えは確かに甘い。だけどその優しさは人を救うのに絶対必要な力だ。劉備の道を切り拓く懐刀となるよ。

それに……俺自身も困ってる人を見捨てるなんてやりたくない甘ちゃんだからね」

「やったのだ‼︎ありがとうなのだお兄ちゃん‼︎」

「ありがとうございます‼︎」

「それに……一食一飯の恩もあるしね」


その四文字熟語を聴いた瞬間、3人の表情が固まった。


「あ……あれ?」

「一飯の恩……」

「一飯の恩……ですか……」

「一飯の……恩……」

「えっ………えっと……ま…まさか………」

「は…はい……て…天に住んでた人なんだから…お金持ちかな〜?って思って……」

「天の御遣いのご相伴にあずかろうと………」

「つまり鈴々達はお金を持っていないのだ‼︎‼︎」


最後に元気一杯に発言する張飛。何と無く予感していたけど無一文だったなんて……既に注文した料理は俺達の胃袋に放り込んだ後だ。


呆れていると俺の背後から異様な圧迫感が押し寄せて来ていた。そして振り向くと………。


「ほぅ〜………」

「げっ⁉︎なのだ⁉︎」


青筋を額に表しているこの店の女将さんがいた。


「あんたら全員………一文無しかい?」

「あ……あははは……ち…違うんです⁉︎お金を持ってると思ったら実は持っていなくて……」


………それを無一文というんだが……。


「食い逃げなどするつもりは……」


火に油を注ぐな⁉︎


「言い訳無用‼︎逃がしゃしないよ‼︎出会え出会えぃ‼︎」

「おぅ女将さん‼︎食い逃げか?」

「このご時世にふてぇ奴等だ‼︎」

「ふんじばってやるっすよ‼︎」


何処からか現れた体格のいい男連中に包囲されてしまった。というか本当に何処か………。


「ちょっ⁉︎ちが……話を聞いて下さ〜〜〜い‼︎‼︎⁉︎⁇?」


劉備の虚しい叫び声が響く中、俺達は食べた分だけ働かせることとなった。

そして心の中で…………。


(後先……不安だ……)


……そう考えていた…………。




タダ働きでクタクタとなる一刀達。そんな中で女将さんが酒をくれる。ある事を思い出した一刀は3人を連れてある場所に向かう。


次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”

[桃園の誓い]

4人の少年少女達、絆を作り誓いを立てる。

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