拠点 3 朱里・雛里、桜・吹雪編
拠点ストーリー3回目。
朱里・雛里編
とある晴れた日の午後。俺達は休息を兼ねて小さな集落に3日ほど駐留することとなった。その間に必要な物資を買い揃え、必要なら集落の警邏も実施する。
戦いに明け暮れていた俺も久々に休みをもらって、街に繰り出していた。
「やっぱり月餅は美味いな」
「そうですね♪このお店のは美味しさが違います♪」
「はい、中に松の実が入っていて歯応えがいいです」
俺は朱里と雛里の2人と一緒にお茶をしていた。月餅と呼ばれる中国におけるポピュラーな焼き菓子を食べて、お茶を飲んで寛ぐ。
なお、2人は両手で可愛らしくお茶を飲んでいる。
「あわ…こうしてのんびりお茶をしていると水鏡私塾を思い出すね朱里ちゃん」
「そうだね♪」
「そういえば2人の通っていた水鏡私塾ってどんな処だったの?」
「水鏡先生の私塾ですか?」
「あぁ、有名な先生だからどんな人なのかやっぱり気になるしね」
水鏡先生………本名は司馬徽 徳操。正史にて劉備に「臥龍・鳳雛は諸葛亮と龐統のことだ」と教えたといわれる人物だ。
「はい、水鏡先生は私達や集落に住む子供達に読み書きを教えたり……」
「あと………人の真意を見抜く心眼と、戦争で親を無くした孤児を引き取ったりする素晴らしい人です…」
心眼とは異名に対して納得だ。鏡は対象者の真意を見通し、水は心を透かす。まさに水鏡だ。
「それで……私達の他に……し…朱里ちゃんのお兄さん達も通っていました……」
「えっ?お……お兄さん?」
「はい、私のお兄さんの諸葛瑾 子喩に、妹の諸葛均 子魚。後は従兄妹の諸葛誕 公休の3人です」
おいおい………魏、呉、蜀の名軍師全員が水鏡先生の教え子かよ……話からして諸葛瑾と諸葛誕が男みたいだ。
「あとは………飴里さんです」
「誰?」
「あっ……はい。飴里さんはお兄さんと従兄妹の同級生で、名前は徐庶 元直さんっていいます」
「私達のことを本当の妹みたいに面倒を見てくれて、お料理を教えてくれたのもその人なんです」
「そうなのか………」
「それに……ご主人様のお噂を教えてくれて、仕官を勧めてくれたのも飴里さんなんです」
徐庶の話を楽しそうにする2人。確かに徐庶は正史においても劉備に仕え、去り際に劉備に諸葛亮を推挙したとされている人物だ。
この世界ではそれが逆みたいだ。
「なぁ。そのみんなを仲間にすることって出来ないかな?」
「はわっ?」
「その方が朱里と雛里も喜ぶと思うんだけど………」
「あわわ………それは恐らくは無理だと思います……」
「えっ?なんで?」
「皆さんは既に仕官されているのです。兄は呉の孫策さんの処に軍師として仕官して、妹は巴蜀の劉焉さん、従兄妹は確か司馬懿という方に仕官しちゃってます」
「それと……か…飴里さんは放浪の旅に出て居場所が分からないんです……」
一歩遅かったか………。
「あぁ……残念だけど仕方が無いね。だったら2人の話を聞かせてくれない?」
「「はい♪」」
2人の話を聞きながらお茶と焼き菓子を楽しむ。その間にも2人は本当に楽しそうに話をして、俺も終始楽しむことが出来た。
やっぱり和み系と癒し系の威力は半端ない。出来るなら疲れた時には2人と一緒にお茶をしたいものだ………。
桜・吹雪編
俺は今、陣地の外にある平原に出ていた。理由としては前に桜と吹雪に頼んでいた新兵器が完成したから、そのテスト運用に立ち会う為だからだ。
この試作兵器は桜が材料を調達し、吹雪が財力を駆使して資金を提供する。
本当に優秀な外交官とスポンサーだよ。
そんなことを聞きながら俺は準備を進めている2人に歩み寄る。
「あっ‼︎カズ君‼︎」
「やぁ、準備は出来てるみたいだね?」
「出来てるよ‼︎」
「あぁ、私達の家の名前もあるからね。それに私も一応は武器商人だから、手を抜いたら信用問題になっちゃうわ」
少し前に知ったのだが、吹雪の扱う商品は主に武器関係で、彼女の家は官軍にも取引をしている代々続く武器商人らしい。
死の商人というイメージがある武器商人に少し抵抗があるが、俺達にとってはありがたい存在だ。
「それで、あれが試作品?」
「そうだよ♪吹雪」
「えぇ………いいわよ。やって」
「応っ‼︎」
吹雪が指示をすると試作品を手にした兵士が構えて少し離れた場所にある案山子に照準わ合わせる。
機能的には弩と変わらないが実は弩ではない。そこから放たれた弓矢はしっかりと案山子の額に命中。その命中精度に俺は満足する。
「うん、さすがは吹雪だね。いい命中精度だ」
「う〜ん………私的にはもうちょっと精度を高めたいけど……実戦で記録を積み重ねるしかなさそうね」
制作した吹雪は渋々だが結論を出す。
試作兵器の名前は‘‘弩咆”。一言でいえば弩と盾を一つに組み合わせた兵器で、大盾に弓矢が撃ち出せるように射出口が開けられ、その反対側に弩が設けられているという簡単な構造をしている。
重量は増すが手で構えるよりも盾の重さで重心が固定され、より正確な射撃が可能となっている。
「あとはやっぱり重量が問題よ。攻守両立で組み合わせてるけど、迅速な展開をするには重すぎるわね」
「それは仕方が無いよ。一先ずは運用方法が確立するまでは主に迎撃や伏兵で使う」
「流石はカズ君ね」
「まぁ……あとはいずれ連弩にして内側にも工夫をしたい。護衛として後ろに弓兵を配備させれば再装填の隙を埋めるとしようか?」
「御意。じゃあ一先ずは試験を終わらせるわ。他になにか要望はある?」
「そうだね…………さっき言った盾の裏側に緊急用の鉄刀に…….あとは射出口が分からないように表面は黒で塗装してくれないか?」
「分かったわ。そこは任せておいて」
ひとまずは修正案が纏まりそうだけど、実戦にデビューするにはまだ掛かりそうだ。
その間にも俺達は弩咆に付いて話し合い、2時間ほど仕様を考えてから試験を終了させる。問題はまだ山積みだが将来的にはこれを量産させ、部隊の主力としたい。
そんなことを考えながら俺は片付けを手伝うのだった……………。
戦いは急速に流れを変えようとしていた。各地の英傑達により黄巾軍は勢いを削がれていき、徐々に争いが小さくなっていく。
一刀も各地で勝利を積み重ねていく中、とある変化に悩まされる。
次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”
[心境の変化]
天の武人は確実に仁徳に惹かれていく。