第10話:臥龍と鳳雛
新生劉備義勇軍に新たな仲間が加わる。
俺がこの世界に来てから半年。最初は戸惑いこそあったが、今では漢文を読んだり書いたり出来て、食文化にもだいぶ慣れた。
その間にも盗賊討伐の日々は続き、最近では愛紗や鈴々たちの武名を知らぬ者は殆どいないまでの活躍をしていた。
そして世の変化は着実に現れていた。
匪賊の横行に大飢饉。そして極めつけは疫病の猛威。
そんな世の中で人々の心が安定するはずもなく、暴力は暴力を招き、大陸全土が混沌とした空気に満たされていた
そしてついに時が来た………。
‘‘黄巾の乱”である。
「すまない、少し遅れた」
俺は侍女に連れられ玉座の間にやってきた。そこにはすでに他の仲間たちが一同に揃っていた。
「悪いな北郷。せっかくの休みだったのに……」
「構わないよ白蓮。それより揃って何か起こったのか?」
「あぁ、北郷も昨日、朝廷から使者が来たのは知っているな?」
「各地で蜂起した黄巾党の討伐だったと記憶してるよ。それで漢軍も討伐に赴いたけど敗戦に敗戦を重ねていることもね……」
ここ数日、俺は独自の情報網を作り出して情報収集にあたった。それによると各地で跋扈した黄巾党が漢軍を撃破しており、数がどんどん増えているらしい。
なお、其の間に趙雲からは真名である星。公孫瓚からは真名の白蓮を託された。
「私はすでに参戦することは決めているのだが……」
「……この好機をどうするのかだよな?」
「ああ……黄巾党鎮圧で手柄を立てれば朝廷より恩賞が賜ることになるだろう。桃香たちがその気になればそれなりの地位にはなれるはず。そうすればもっともっと多くの人たちを救えるだろ?」
「確かに……」
「残念だが、今の私にはそれほど強い力を持っていない。いずれは力をつけるつもりだが」
「それで、どうするんだ?」
「そこは桃香が決めることだ。俺達はその方針に従うよ」
「う~ん……」
桃香はしばらく手をあごに当てて悩む。というか首を傾げながら考えているので可愛い。
「そろそろ私達も独立しなきゃね。いつまでも白蓮ちゃんのお世話になってるわけにもいかないから」
「でも鈴々たちだけで大丈夫なのか~?」
「そうだな。なにより我らには手勢が多くはない。そこが問題だな」
「それと兵站と資金面もよ」
「資金面ならまだ私のツテでなんとかなるけど、流石に大規模となると不安が残るわ。なによりも兵も足りない………」
「手勢なら街で集めれば良い。な?伯珪殿」
「お….…おいおい⁉︎私だって討伐軍を編成するために兵を集めなくちゃいけないんだから、そんなの許せるはず……」
「伯珪殿。今こそ器量の見せ所ですぞ?」
「うっ……」
「私も勇を振るって働きましょうぞ」
星にそう言われて言葉が詰まる白蓮。
「それに伯珪殿の将兵達は皆勇猛ではありませんか。義勇兵の五百人や千人、友の門出に贈ってやれば良いのです」
「無茶言うなよぉ……」
「あ〜………なら俺たちは白蓮が義勇兵を集めた後に兵を集めるよ」
「ほう……よろしいのですか?」
「まぁ…本来なら集めること自体止められることだしね。無茶を言ったら悪いよ」
「う〜ん………それだったらわたしたちが集めた後なら構わないよ」
「本当⁉︎ありがとう白蓮ちゃん‼︎」
「でも、一応は言っておくけど本当に集まらないかもしれないぞ」
「いいんだよ、それならそれでまた他の方法を考えるさ」
「そうか……では今日はこの辺にしとくか。私達が募兵を終えたら報告するからな。それとせめて兵糧と武具は贈らせてもらうよ。星、兵站部に連絡して兵糧と武具を提出させてくれ」
「御意、では北郷殿。参ろうか?」
「分かった」
「鈴々も行くー‼︎」
「おう、来い来い」
トテトテと駆け寄って来た鈴々を迎え入れ、俺達は星の案内で兵站部へと向かった。
それから3日後、全ての準備を整えた俺達は出発しようとしていた。
「たくさん集まってくれたねー‼︎これなら何とかなりそうだねご主人様♪」
「確かにそうだね………白蓮がいじけてたけど……」
徴兵で集まった数はどういう訳が白蓮が2000弱に対して俺達には6000弱の兵が集まった。
その時にのの字を書きながらいじけてた白蓮
に何だが申し訳ないけど………。
「桜も吹雪も大変だっただろ?」
「そんなことないよカズ君」
「私の弟に武器商人から武器を掻き集めさせたからね」
吹雪の弟だから糜芳だろうが、あまり糜芳にはいい印象を持っていない。なんせ正史にて糜芳は恩義を仇に返して関羽を裏切り、呉に寝返ったとされている。
だけど見る限りでは提供されは武器はかなりしっかりしていて、かなりの数の武器が揃った。
その時に全員に鉄環首刀と小刀を標準化にし、それぞれ槍や戟、弓、弩、更に俺がデザインした新兵器を持たせており、カラーリングも全て黒に変更し、そこに金色の簡単な装飾をあてがえている。
「しかし……これからどうしましょう?」
「こーきんとーを探し出して片っ端から倒していくのだ‼︎」
「はははっ、勇ましいね鈴々。だけどそれだったら直ぐに兵糧が無くなってみんな空腹になっちゃうよ」
「う〜ん……ならどうすればいいのだ?」
それを言われると耳が痛い。なにしろ黄巾党の規模が予想以上に大規模な上に展開速度が速い。だから迂闊に出ると漢軍の二の舞になってしまう。
「う〜ん………ならどうしたらいいのかなぁ……」
俺達6人が考えていると………。
「しゅ…しゅみましぇん‼︎……あぅ…噛んじゃった……」
どこからともなく声が聞こえて来て、辺りを見渡すが声を発した人物が見当たらない。
「はわわ⁉︎こっちですぅ‼︎こっちですよ〜‼︎」
「えっと……」
「声はするも……」
「姿が見えず……」
「空耳か?」
「…………みんな……視線を下に下げてみようか?」
「「「「下?…………あっ」」」」
俺が促すと4人が視線をずらす。そこには………。
「こ……こんにちゅわ‼︎」
「ち……ちあ……です…」
可愛らしい帽子と歯でも生えていそうな帽子を被る可愛らしい女の子2人が緊張した赴きで立ち尽くしていた。
「えっと………こんにちは…君達は?」
「え…えっと……私はしょ……諸葛 孔明でしゅ‼︎」
「私はあの…えと…んと……ほ…ほと……ほーとうでしゅ…」
(………し……諸葛亮に……龐統……だって⁉︎)
2人の名前を聞いて驚きを隠せない俺。何しろ後の蜀における丞相となる天才軍師の諸葛亮とその諸葛亮に負けない実力と知略を持った龐統なのだから当然。
なによりもそんな凄い人物がこんな可愛らしいロリっ子なのだから更に驚きが増した。
「諸葛亮に鳳統か………あなたたちのような少女がどうしてこんなところに?」
「あ…あのですね‼︎私たち荊州にある………」
*以降の説明は本編にてご覧ください。
「だからあの……わ…私たちを……」
「あ…あの………えっと……しぇ…戦列の端に……」
「「お加えくだしゃい‼︎‼︎はう⁉︎(あう⁉︎)」」
………恐らくは舌を噛んだのだろう。その光景に何処かひいてしまう。
「うーん、どうしようか?」
「戦列の端に加えるには、歳が若すぎるような気もしますが……」
「その辺りは鈴々も同じじゃないかな?」
「それはそうだが、鈴々の武は一騎当千。歳は若くとも充分に戦力になる。しかし二人は見たところ指は細く、体格は華奢……。戦場に立つには可憐過ぎると思うが……」
確かに2人の可愛らしい容姿に武芸が出来るとは到底思えない。どちらかといえば癒し系と和み系といった処だ。
「なにも武器を持って戦場に立つことだけが将の仕事じゃないよ」
「確かにね。私はどちらかといえば外交が得意だし、吹雪も交渉や予算管理が得意。むしろそういった方が武器になるわ」
「それに俺はこの二人には期待して良いと思ってるから。ね、諸葛亮ちゃんに鳳統ちゃん?」
そういいながら俺は思わず2人の頭を撫でていた。
「はわわ」
「あわわ」
「ふむ、ご主人様と桜達がそこまで言うのなら私は異存ありません」
「ありがとう愛紗♪」
「い、いえ………」
「じゃあ決まったということで……二人とも私たちに力を貸してくれるかな?」
「は……はひっ‼︎‼︎」
「がんばりましゅ‼︎‼︎」
「私は劉備♪字は玄徳で真名が桃香だよ♪これからは桃香って呼んでね♪」
「えと⁉︎わ……私は姓が諸葛‼︎名が亮‼︎字が孔明‼︎真名が朱里でしゅ‼︎朱里って呼んでくだしゃい!」
「んと……姓は鳳で名は統で字は士元で真名は雛里って言います……あの…宜しくお願いしましゅ……あう……噛んじゃった……」
「朱里ちゃんに雛里ちゃんだね♪これからよろしくね♪」
「「は、はいっ‼︎」」
こうして俺達に頼もし過ぎる知略に長けた軍師が加わった………。
公孫瓚軍より独立した劉備義勇軍。そこで俺達は地方で暴れている黄巾党の部隊を捕捉する。
数で劣る一刀達は策を持って撃破に向かう。
次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”
[義勇軍の戦い]
天の加護を受ける義勇軍が飛躍する。