第1話:舞い降りる御遣い
乱世の漢王朝に降り立った御遣い。そこで彼は最初に‘‘仁徳王”と出会う。
後漢末期。誰もが乱世の兆しを感じていた。朝廷の腐敗により政治は乱れ、宦官の跋扈や横領。民に対する重税に重なる重税により疲弊しきっていた。
しかし大陸一の占い管路が大陸中に予言を下す。
“黒天を切り裂いて、天より飛来する一筋の流星。それは輝く純白の衣を身に纏い、光り輝く二筋の刃を手に取る勇敢なる英雄を乗せ、乱世を鎮静す。そのものは天の御遣いなり”
始めは誰もがくだらない予言だと思い信じなかったが、やがて彼等は知ることになる。
占いが紛れも無い“真実”だということを・・・。
「うっ………こ…ここはどこ?」
辺り一面荒野という場所で目を覚ました少年。少しだけ茶色が混ざった黒髪を小さくポニーテールで纏め、白い服を着た中々の美少年だ。
(ど……どうなってるんだ?………確か実家の薩摩に帰郷して山の中で修行してた筈だよな?それがなんでこんな荒野………てか本当にここ日本か?)
少年がそんなことを頭の中で考えていると、3人の男に囲まれていた。
「ようにいちゃん………珍しい服を着てるじゃあねえか」
「命が欲しかったら金目のもん全部……って……」
(落ち着け、俺なんでこんな荒野にいるんだ?)
「お……おい兄ちゃん……聞いてんのか?」
(そういえば確か足を滑らせて滝に落ちたような………)
「おい‼︎聞いてんのか⁉︎」
男は少年の胸倉を掴む。考え事に夢中になっていた少年はようやく3人の男に気が付いたようだ
「うわ⁉︎ご…ごめんなさい……考えに夢中になってた……」
「人の話しはちゃんと聞きやがれ‼︎親に習わなかったのかよ⁉︎」
「すみません……ちょっと考えたら周りが見えなくなっちゃって……」
「まったく……近頃の若いもんとくりゃ………次からは気を付けるんだ「お…親方……目的忘れてませんか?」って⁉︎そうだった⁉︎」
………何かコントになっている……。
「ところで………あなた達は?」
「なんだ〜?俺達を見てわかんねえのか?俺達は黄巾党だよ‼︎黄巾党‼︎」
「黄巾党か…………え~~~~~~~~~~~~~~~~~~‼︎‼︎⁇⁇」
このとき、少年は確信したどういう理由かは解らないけれど、時を越えて三国志の世界にきてしまったと悟った。いきなり大声を出したので賊3人は驚いてしまった。
「うわっ⁉︎びっくりさせるんじゃねえよ⁉︎」
「そうだ‼︎そうだ‼︎寿命が縮むかと思ったぞ‼︎」
「あっと………ごめん」
「とりあえず、金目の物はおいてきな‼︎そうすりゃ命だけは助けてやる‼︎」
「……なぁ一つ聞きたいんだけど………ここどこ?」
「あん?何いってやがんだ?ここは幽州琢郡五台山の麓に決まってんじゃねえか」
「五台山…………相手が悪党なら問題ないか?」
場所の特定が出来たということで少年は2本ある内の片方の日本刀を抜刀し、鋒を3人に向ける。
「……おとなしく立ち去れ。この刀はお前達のような悪人が触れていいものじゃない」
「な…なんだと⁉︎俺達に刃向かうってのか⁉︎だったら容赦いらねぇ‼︎やっちまえ‼︎」
そういうと男達は一斉に剣で襲い掛かるが、少年は全て受け止めて攻撃を弾き返すとそのまま2人に峰打ちを食らわせる。
「て……てめぇ……」
「まだやるのか?」
「う……うるせぇ‼︎」
そういいながら残りの1人も刺突を繰り出してくるが、少年は両脇でその剣を挟み込み、少しだけ力を加えて剣を折った。
唖然となった男の顔に柄頭をぶつけ、そのまま地面に倒した。
「ぐあっ⁉︎」
「おいおい………戦いを仕掛けるのはいいけど……ちゃんと相手を選べ」
そういうと少年は日本刀を鞘に戻して歩き出す。
「さてと、場所は分かったとしてもこれからどうするかな?」
少年は荒野を歩きながら周りを見ているとある一つのことに気づいた。
「そこの3人。分かってるから隠れてないで岩の陰から出て来たらどうだい?」
少年がそういうと3人の女の子が出てきた。
1人は桃色の髪にパッチリとした大きな目。更には大きな胸が特徴で天然ね印象が強そうな女の子。
もう1人は長い黒髪をサイドテールにして、先程の女の子と色違いのデザインが似た服を着て、同じく負けない位の巨乳である目力が強い女の子。
最後の1人は背が小さく、赤いおかっぱ頭で虎の髪飾りを付けている元気活発の女の子だ。この3人の共通点というと………。
(か……可愛い……)
絶世の美少女だということだ。
「失礼した、隠れていたといわれては否定もできない……申し訳ない」
「駄目だよ、愛紗ちゃん初対面の人を睨みつけちゃ」
「しかし姉上…」
「にゃははは♪そうなのだ♪愛紗に睨まれたらお兄ちゃんが怖がってしまうのだ‼︎」
「こら⁉︎鈴々(りんりん)⁉︎」
3人の女の子が話している時に、少年はあることに驚いた。それは黒髪の女の子と小さい女の子が身に纏っている雰囲気である。
この雰囲気は歴戦の武人にしか漂わせることが許されない‘‘強者”の証。
そして桃色の髪の女の子からは底知れぬ優しさと固い決意。王に必要な気配だ。
「えっと……ところで君たちは一体?」
「私は劉備♪字を玄徳♪」
「……えっ?」
「鈴々は張飛なのだ‼︎」
「………はい?」
「関羽 雲長とは私のことだ」
「…………マジかよ」
黄巾党を名乗る3人組に三国志の重要人物である劉備、関羽、張飛と名乗る女の子たち。
ここは間違いなく三国志の世界だが、たしか劉備は男のはずだ。だけど目の前の3人が嘘をいっているようには見えないので、それが真実であると悟った。
「どうかされたか?」
「えっ⁉︎いや……なんでもないよ。ちょっとぼーっとしただけだから。」
少年がそういうと劉備と名乗る女の子が近づいきた。
「え~っとお兄さんの名前は?」
「俺?………俺は北郷 一刀よろしく」
そういうと青年………北郷 一刀は自身の名前を名乗る。
これが後に仁徳王となる少女と懐刀となる少年の最初の出会いであった………。
劉備、関羽、張飛と出会った北郷 一刀。彼はそこで自分が‘‘天の御遣い”だと聞かされる。混迷する世界の中で少年は決断する。
次回‘‘真・恋姫†無双 二筋の刀を持つ御遣い”
[決意する御遣い]
御遣いが心優しき少女達に手を差し伸べる。