超絶的に楽しみです
作戦実行日である。今日の目的は何度も言った通り、美橋及火の家に侵入し、目的の品を手に入れること。それだけの仕事である。機密文書の確保、忍者の仕事としては代名詞とも呼ぶべき内容だが。
「えっと……霧隠三太です。今日は工場見学にお招き頂きありがとうございます。よろしくお願いします」
結構日は約束をこじつけた日曜日である。それまでの日にちは、ほぼ全てバイトに費やした。皿を洗い、店内をピカピカにして、お客様に笑顔を振りまき、様々な兵糧丸を作った。店が繁盛する物だからいい迷惑である。しかも、美橋や国谷に会えるのは、夕方の時間帯だけ。だが、俺はそれ以外の時間も強制労働。バイト代貰えれば、いいって問題ではない。
予定の集合場所は駅前だった。俺は一番に俺の格好はラフではない。制覇様に用意して貰った、真面目なイメージの強いスーツに似た感じの服だ。ネクタイまで用意して貰った。モンスターキャッスルには、規定を守る為に忍者服で向かったが、そもそも潜入任務で忍者が、それらしい服を着ないのである。
「おはようございます」
「おはよう。ロリコンサンタ」
駅前の通学の時間帯で、そんな大声で変態を名指しするような真似は止めて欲しい。作戦の前に警察に連行されたらどうするのだ。いや、されないだろうけどさ。国谷の格好はワンピース。全体的に赤と白の色合いが多く、髪は短いままなのでイジっていないようだ。サンタらしさを服でアピールしているのだろうか。
一方、さっきから白けた目をしている美橋の服装は、こちらも結構な服装である。なんというか、年頃の女の子の格好ではない。ジーパンにTシャツって、確かに実家を歩くだけだろうから、そんなに気合を入れないのは分かるが、それでいいのかお前。
「工場内に入ったら、服装は変えた方がいいか?」
「ん? 別にいいよ。食べ物を扱っている訳じゃないし。時々、爆破事故とか数年に一回の割合で起こるけど、二人とも現役のサンタなら余裕で回避できるでしょう」
それを回避できるのは、未来予知師であってサンタには回避不可能だと思う。俺も安全面に配慮した格好をするべきだったかもしれない。
「楽しみだね。工場見学なんて!!」
「そうか? 俺は工場見学なんて胸を踊ったことはないけどな。…………嘘です。超絶的に楽しみです」
しまった、工場見学がしたいと言い出したのは俺ではないか。ここでいい加減な態度を取れば、怪しまれる。いや、もう既に……俺が工場見学以外の目的があることはバレているし、秘宝を狙っている事もバレているが。
「あっ、そうだ。三太君には言っていなかったけど、参加者がもう一人来るから」




