でも感謝はしていないぜ
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決定打に欠ける、というか自分が上手く事を運んでいるの分からない。
「制覇様との会話はいつも疲れるな……もうちょっと噛み砕いて欲しい」
思わせぶりすぎるのだ。何が言いたいのか、こっちに分からないようにわざと喋っているような気がする。それが俺をどれだけ困らせているのか、わからないのか。って、言っても無駄なのだろうけどさ。
「なんか具合が悪い……」
作戦はもう手詰まりって程に完璧にいっているはずだ。出来る手段は全て抑えているはずだ。なのに心が収まらない、気分が回復しない。なんで心に不安感があるのだろうか。
「また下らない事で悩んでいるのか。悩むよりも実行だ、少年」
お前みたいな単細胞と一緒にするな。俺には使命がある、誰かの為に戦わなくてはならない身にあるのだ。金髪マッスルが部屋で寝転んでいる。コスプレイヤーは、今度はパンダの格好をして笹を食べるふりをしている。この二人……暇なのか?
「こんな時間に帰ってきて悪いな。夜の一時か。バイトと制覇様への報告があったから」
「構わない、構わない。俺たちも仕事があったあら、殆どお前と同じ時間で帰ってきたから」
仕事だと? この『クタバレ』と『ゴミクズ』に仕事があるのか?
「お前らって何をしているんだよ」
「あぁ? 決まっているだろ。制覇様のロボットの設計とか、人間の手が必要な接合とかチェックとかだよ」
……確かにそれなら仕事になるかもな。体格はいいが、格闘技や武道に精通していないであろうこいつらが、警備員として仕事を全うしていると思えなかった。その他にも警備員の専門や、メイドも存在したが、こいつらのポジションが分からなかった。ようやくはっきりしたな。
「お前らはエンジニアだったんだな」
「そんな格好良い存在じゃねーよ。会社が潰れて、捨てられたゴミクズとクタバレだよ」
「制覇様は僕らみたいな失業者に仕事を与えてくれるんだよね」
失業者か……俺も同義だな。忍者にはなれなかったし。さっきから変なポーズをして、反対方向を向いていたコスプレイヤーが話に参加してきた。
「でも感謝はしていないぜ。奴は条件が悪い人間を集めて、上手く利用してやがるんだ。自分の崇高なる目的の為に」
制覇様の崇高なる目的……俺もそれを狙う為に仕事をさせられている。だが、彼女は絶対に、その秘密を教えてくれない。極めて特殊な夢だとは想像がつくのだが。俺は未だに一部分も聞かされていない。
「僕は感謝しているかな……やっぱり仕事ないと寂しいし」
「お前は甘いんだよ。俺は確かに桜台制覇様に忠誠を誓ったが、善悪の基準は別だ。あの人の本質は根っからの悪だ」
……子供は無力だ。だからこそ『無邪気』という単語が当て嵌る程に、悪意を孕んでいない。全ての行動が好奇心だと思っている。そこに悪意はないのだ。そう俺はロリコンとして信じたいと思っている。だが、俺が贔屓目に見ているだけで、現実は違うのだとしたら。