聞かないでって顔ですね
「あっ、この人はどこまでもコキ使えますよ。実は最終学歴が中学校ですから」
「おい、言うなよ。悲しい事実」
別に勉強しなかったからという意味ではない。家柄がそういう家庭で、俺はそういう生き方しか出来なかったというだけである。それに無職ではないし。
「構わない、学歴よりもサンタクロースの肩書きが重要だ。寧ろ時間が有り余っているなんて私には都合がいいしな」
そうですか、まだ俺はここで働くなんて言っていないのだが。ここでいなくなったら、彼らとしても困り果てるだろうが。既に散々と兵糧丸をメニューに加えると豪語してしまったし。口コミで集まった客を捨て置く真似は出来ないだろう。
「どうしてサンタクロースの名前に拘るのですか。カフェとサンタなんて関係ないでしょう」
店長は首を大きく振った。
「都合が合う人間が集まっていたほうがいいのだ。それにこの店はサンタクロースにしか見せたくない物もあるし」
見せたくない物だと? 本場の北欧から無断で仕入れているコーヒー豆でもあるのか?
「聞かないでって顔ですね」
「聞かないで」
本気で怒っている顔をしている気がする。シツコイ男は嫌われると聞いたが、ここは大人しく原因究明を諦め、好奇心を捨て、誘導に従おう。俺はロリコンだから、例え本当の姿は婆でも身を引いてやろう。
「それで? シフトは? いつにするかまだ聞いてないよ」
「えっ、そうですね」
まだ頭の中で整理がついていなかった。時間ならいくらでもある。美橋に合うチャンスなら、ここでもいいはずだ。
「ほぼ毎日OKですよ。適度に人数がいる場所に、
休みを入れてください。時間は取り敢えず、午前中と午後くらいで」
「よし。助かった」
こうして、俺の仕事の第二幕は、美橋の家に侵入する為に、カフェでバイトするという目に見えるような遠回りをすることとなった。




