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あっと、それじゃあ……

 結局、店を閉める深夜の時間帯まで手伝わされた。バーテンダーのような格好をし、必死に皿を洗って、店の中を隅々まで掃除した。問題はその後だ、接客はしなくて良かったのだが、まさかのキッチンを任された。


 料理経験など皆無な俺が、得意料理は兵糧丸だと嘘偽りなく話したら、面白がってメニューの中に兵糧丸を加えやがった。珈琲に兵糧丸が合うはずがないのだが、お客は珍しい代物が食べられると言って、喜んでお菓子の代わりに食べていた。


 今回は最大限のアレンジを加えて、苦さ控えめに作り、無い甘さを出来るだけ強調した。美味しさを度外視し、栄養素だけを詰め込んだ料理の歴史に、泥を塗っている気分だったが、この場を乗り切ることを優先した。


 「凄く盛況だったね」


 「普通のカフェじゃ絶対に食べられない物だから」


 「うむ。これから一ヶ月は、この兵糧丸をネタに繁盛する。口コミで広がるぞ~」


 広がっては困る。俺がずっとこの場に来なくてはならなくなる。確かに暇な日々ではあるのだが、俺はサンタクロース職と、桜台制覇様の護衛をする仕事に二つある。その他にも美橋及火の家の潜入捜査をしたいのだ。


 一回で上手くいかないのは分かっている。だから、回数を踏まなくてはならないのだから。つまりチャンスを出来るだけ多く作らなくてはならない。バイトをしている暇があるとは思えないのだ。


 せめて確実に暇となるであろう学校の時間だ。だが、仮にその時間を消費しても易は無い。だって、あの二人に接近しなければ意味がないのだから。


 「おい、少年。霧隠君だったっけ」


 「はい、どうしましたか?」


 「明日は何時から来る? シフトとか一緒に考えたいのだけれど」


 もう俺がここで働くのは決定事項なのか。制覇様には任務に必要な事項だと言えば納得して貰えると思うが。次に考えるべきは、俺の他の仕事の件である。サンタクロースの仕事は安定すると思う。ここの店員は全員がサンタ関係者だと聞くし、問題はないと考える。


 制覇様の仕事だが、そもそも家庭訪問など纏まった時間がないと不可能だ。平日は無理だとして、土曜日・日曜日になるだろう。それでいて美橋の都合の良い場合ではないといけない。接点を切らない為にも奴の働く時間はいるべきだろう。


 「あっと、それじゃあ……」


 いや、でも…『彼女たちと一緒の時間で』なんて言ったら、やり口がストーカーまがいだ。隠密忍者として堂々と、『それの何が悪い』という気持ちになれれば良かったのだが。それが出来ないから忍者試験に落ちたのだろう。さり気なく時間が被るようにしなくては。単純に夕方の時間と言ってしまうか。

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