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では得意料理を教えてくれ

 「店長、お疲れ様です」


 美橋のクールボイスが響き、視線が俺と国谷の方へと向いた。


 「えっと……やっぱりバイトするんだ」


 「俺はまだ何も話を聞いていないがな」


 だんだん不信感を感じてきたぞ。俺は美橋と仕事の話をしに来たのだ。珈琲店でアルバイトをする為に来たのではない。何故かあのロリババァ店長は、俺が国谷からバイトの話を聞いてきた事を前提に話を進めているが、それからして間違っているのだから。俺は騙されたのだ。


 「私の家に遊びに来る話でしょ。交渉なんかいらないよ。休日だったらいつでもどうぞ。工場見学の案内をしてあげる。でも……交換条件だよ」


 「バイトを手伝えという話か」


 「サンタクロースの中には一般的な人間社会の生活とは馴染めない人もいる。日本が恵まれている環境なだけ。サンタ同士が力を合わせて12月までの期間を過ごすのは、極めて一般的だよ」


 確かに、サンタクロースの仕事のメインは12月25日であるが、そこだけが重要なのではない。長い期間をかけて玩具の整理や発注の確認など、時間のかかる仕事が目白押しだ。だから纏まった休みを頂ける事が難しい職もあるかもしれない。


 だが、日本人に与えられている休日の割合って、全世界でトップレベルに少ないと聞いた。サンタクロース本場の欧州なんて、極めて長い期間の連休を頂いていると聞いたが。本当に日本人が恵まれているのだろうか。


 「では交換条件として、このバイトのお手伝いして。バイト代は貰えるから」


 「………そうだな」


 手に顎を置いて考えてみる。これが必要条件あらば、避けて通れない事項ならば、有無を言わずに俺はこのバイトとやらをしなくてはならない。まあ人様の機密工場に入るのだ。軽いペナルティと感じるべきか。


 「君にも事情があるだろうが、これでも人材不足なのだ。今日は嫌でも閉店まで働いて貰うよ。新人サンタ君」


 「まあ、俺も彼女達に貸しがあります。サンタの仕事の一貫だというならば、俺は手伝いますよ。でも喫茶店のバイトなんて経験ないし、料理も……一般人が食べれる物は得意じゃないですよ」


 兵糧丸の味付けなら得意だ。誰にも負けない自信がある。兵糧丸とは、主に戦国時代に使われていた丸薬状の携帯保存食である。忍者の主食であり、栄養価が高い。漫画の表現のように、一粒で一日分の食料になったりしないし、腕力が倍増するなど誇張した表現の現象も起きないが。


 あと、食事の中に気がつかれないように、毒を混ぜるのも得意だな。…………分かっている。カフェのバイトに何の役にも立たないことくらい。


 「君は接客は指導していないから今日はパスだ。まあ美少女が二人いるから、余計に付け足す必要もないだろう。今日の仕事はキッチンだな。私の料理を手伝って貰おうか」


 それは……厳しいな。俺が一般的な料理が得意だと思ったら大間違いだ。


 「では得意料理を教えてくれ」


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