サンタとの約束
「そんなに欲しかった物なのかよ、サンタからのプレゼントとやらは」
「あぁ、この方法でしか手に入らない、本当に大切な代物さ。見せてなんかあげないけどね」
別に対してみたいとは、思わねーよ。ただ国谷朝芽背負っていた白い袋は随分と大きかった。この捻くれ娘は、一体何を欲しがったのだろうか。
「ちょっと、勝手に話を進めないでよ。私はサンタなの、サンタの役目はトナカイに乗って帰るまでが仕事なの。私はこれから任務完了の報告をしに、本部に帰らなければ。こんな所で油を売っている暇は無いの」
いいよなぁ、帰る場所がある奴は、俺はこれから家を追い出されて、忍者失格の烙印を抱えて、まだ高校生なのに目標のない人生を歩まなくてはならないのだ。牢屋に入らなくてはならなかったり、暗部に始末されるよりかはマシなのかもしれないが。
「それじゃあ、サンタさん。お願いがあるんだ、今日は取り敢えず見逃してあげるから、また私のところに来てくれないだろうか。君にはとあるプロジェクトに参加して欲しいんだ。連絡先とか教えてくれたらいいのだが。勿論、サンタとしてではなく、友人としてだよ」
……俺達忍者と比べて、随分と待遇がいいな。まあ、特殊暗殺部隊と、慈善事業爺様団体と処遇を一緒にすべきと主張する方がおかしいか。忍者の任務の失敗は死を意味する。こうやって厭らしくも生き延びてる辺りが、俺は真の忍者じゃなかった証拠だろう。
「友達になりたいって訳?」
「うん、お友達になって下さい」
ここだけは声のトーンを変えた。今までのカリスマ口調を止めて、女の子らしい明るく元気な声だった。
「じゃあ、お姉さんとの約束。これからもう二度と誰かを睡眠弾で眠らせたり、困らせたり、夜遅くまで起きておかない。守れるなら、友達になってもいいよ」
いや、睡眠弾を始めに所持していたのは俺だったから。
「うん!! 約束する!!」
嘘だ!! あの笑顔の輝きは、嘘つきのする顔だ!!
睡眠弾や迷惑行為の修繕はともかく、この餓鬼が『夜更かしをしない』なんて絶対に守る訳がねぇ。
「おい、何をいい感じで終わろうとしているんだ。もう俺は家に帰らせてくれよ。忍者は例え好意であろうとも、主人以外の人間が用意した食事を口にする訳にはいかないんだ。それから佐助も返せ」
机の死角になっていたので気付かなかったが、桜台の座っていた椅子はパソコン室とかにある回転する奴だったみたいだ、正式名称は忘れた。
その起動性を利用し、首を動かさず椅子の力で俺の方を向いた。
「おや? 僕は君にロリコンとして生きるように命じたはずだぜ。という訳で、君にも僕のプロジェクトに参加して貰うよ」