ロリは触れずに愛でること
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俺は早速、佐助と合流しそのまま犬小屋は可哀想だと思って部屋の中に入れた。佐助は忍犬なので、それなりに環境の変化には強いのだが、やはり一月の夜空に愛犬を放り出す鬼畜野郎はいないだろう。
「佐助、元気にしていたか?」
元気そうに俺に小さく吠える愛犬をベッドの上で抱き抱える。そんな姿を見て、同居人の二人が絶句していた。
「お前、ロリコンじゃなかったのかよ。愛犬家って肩書きの方が似合っている絵だぞ」
お前にはわかるまい。長らく命の危険を共にした愛犬との日々を。『南〇物語』や『フ〇ンダースの犬』の関係だと言っても過言ではないのだ。俺と佐助は一心同体で意気投合しているのである。
「そう言えば工場ってペットは厳禁かな」
「当たり前だろうが。玩具工場だって、精密な機械があるんだ。清潔感は何よりも大切にしているだろう。犬の毛が混ざったとなったら、洒落にならないだろうが」
それでは俺の任務の成功確率が落ちるな。俺が美橋や国谷と会話をしている時に、佐助を別働隊として工場の奥に忍び込ませ、秘蔵物を手に入れる作戦もあったのに。いや、工場内の全員に気が付かなければ、監視カメラを掻い潜れば。
「おい、犯罪者の顔をしているぞ」
「犯罪者の顔ですな」
ゴミクズとクタバレが五月蝿い。俺はロリコンであるのは、もう周知の事実だとは思うが、それでも犯罪者呼ばわりは気に入らない。真のロリコンは幼女を悲しませるような真似は絶対にしない。ロリは触れずに愛でること、これはサンタクロースの信念の合致しているのだ。
「潜入捜査は俺の専門分野だ。いくら新人とはいえ、これが出来なきゃ始まらない。だが、既に警戒されている相手への仕事はやっぱりきついな」
しかも奴は俺に対して妙な同情心を抱いていた。これを逆手に取れるなら俺も見上げた根性なのだが、そうも上手くはいかない。奴は桜台制覇様をこれ以上にないくらい警戒している。まるで俺の知らない制覇様の裏の姿を知っているかのように。
「俺に良心的で、制覇様を毛嫌いしているのが問題なんだよなぁ」
とにかく俺をそうやすやすと目的を達成させないだろう。俺の事情を踏まえた上で、何かしらの対抗策を放ってくるのだ。当事者と関係性を持ったのが、裏目に出る典型的なパターンである。
「お前、いつから行動を起こすつもりだよ。お前のことだから、そんなに鈍間じゃないだろ」
金髪が先ほど渡しそびれた缶コーヒーを渡すと、日程を聞いてきた。まあ、この二人は同じ制覇様を守護する仲間だと思っていいだろう。話しても問題ないか。
「明日、取り敢えずは美橋及火と国谷朝芽と会って、工場見学の日程を立てる予定だよ」