暴言じゃん。
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さて、問題発生だ。サンタクロースの資格を頂いてお暇を頂いた。これで少しは休暇と思いきや、今度も制覇様からの指令である。今回の指令は重要機密の調査。潜入捜査である。確かに非力な俺を警備隊に組み込むよりは合理的だとは思うが、完全に隠密専門のポジションにされているのは気のせいだろうか。
「初任務、お疲れ様。坊主」
「やっぱり、制覇様の目に狂いはなかったようですね」
社員室にいるという表現だろうか。モンスターキャッスルに俺の部屋とベッドを貰った。これで俺も晴れて社員である。だが、不満は絶えない。個室ではないくらいに文句はない。ただ、他のルームメイトがあの金髪とコスプレイヤーだったのだ。
俺は美橋及火の家に潜入する為に、用意をしていた。奴は極めて警戒している。俺ではなく、桜台制覇をだ。奴を説得して家に上がらせて貰う約束までは成功した。だが、果たして目的の物をくれるだろうか。
「お前ら……」
そんなまた、答えのない壁に突き当たった俺の前に姿を現したのは、サンタクロースの試験を一緒に受けていた金髪マッスルと、コスプレ野郎だった。金髪は黒色のタンクトップにジーパンという極めて動き易さのみを追求したような格好である。コスプレイヤーだが、今度はパンダのぬいぐるみをしてやがる。
「辛気臭い顔をしてやがるな。どうしたんだ?」
「お前と違って悩みの種が消えないだけだ。そう言えば、お前らの名前を聞いていなかったな。教えて貰ってもいいか?」
「おいおい、俺たちはSPだぞ。本名をベラベラと喋るのはダラシないってものだろ。名前はいつでもコードネームだ」
金髪は格好良くそんな言葉を言った。ここまで引っ張ったのなら、教えろよと思った。結局、教えずに部屋を出て行ってしまったのだから、驚きである。いいよ、お前のコードネームは一生、『金髪』だ。
それと、問題はもうひとつある。あのコスプレイヤーが変な踊りというか、音頭をしているのが気になる。今は完璧に無視しているが、気になる……気になる……。だが、反応したら負けだ。パンダの格好で何をしているのだ。
「おい、お前のコードネームは? 教えろよ」
パンダに声をかけてみる。なにか威厳のある言葉で嫌がられると思ったが、奴は隔てなく教えてくれた。
「私のコードネームは『クタバレ』だ」
……ちょっとなんで。クタバレって暴言じゃん。
「ちなみにあの金髪のコードネームは『ゴミクズ』だ。皆、ここで働いている職員は一番最初に名前を呼ばれて、その言葉をコードネームにしているんだ」
俺って……知らなくて良かった。俺にも変なコードネームを付けられるところだった。というか、お互いに『クタバレ』とか『ゴミクズ』とか言い合わなくてはならないのか。




