試験終了...
俺は完全に敗北した、大切な愛犬を失い、自分のプライドを捨ててまで、全身全霊で打ち込んだこの課題だったが、結局はこの有り様だった。実力を発揮できなかったなんてレベルじゃない、情けないことに俺は完全に自爆したのだ。
「おや、お目覚めのようだね」
その声と共に国谷朝芽の方を見ると、目を擦りながらゆっくりと体制を戻した。先ほどの桜台の娘の発言を信用するならば、こいつは正真正銘のサンタクロースの一人ということになる。
「おはよう、サンタさん。いや、今日の挨拶はメリー・クリスマスか」
「えっと……メリークリスマス……。って、何よ、これ!!」
「歓迎会だよ、サンタさん。あなたは大事なお客様だからね。いらっしゃいませだよ。ほら、そこのロリコンも座りなよ、楽しい楽しいお食事会の時間だよ。食べ物に毒なんて一切入っていないから、安心して。試験は終わったからね」
「待てよ、じゃあ俺はどうなるんだ!!」
「制限時間内に殺害ミッションを成功出来なかったんだから、君の失格に決まっているだろう。それじゃあロリコンとしての新しい生活を頑張ってくれ。あぁ、愛犬くらいは帰してあげるよ、残りの連中は牢屋だけどね、覚悟はしていたんだろう、彼等だって文句はないさ。毒ガスとかで殺さないだけありがたいと思って欲しいね。僕はサンタと違って、優しくないんだ」
…………俺は生き残った、訳ではない。俺だって落第者だ、ロリコンの真似をしてまで、全てを捨てて望んだこの試験だったが、結果は皮肉な物だった。
「おい待て、ロリコン。これはどういうことだ。私はサンタクロースだぞ、こんなトコを、爺さん達に見られたら……マズイって!!」
「大丈夫、大丈夫。君からのプレゼントは昨晩の内にしっかり回収させて貰ったよ。本当に素晴らしい、僕が一番欲しかった物が、こうも容易く手に入った。礼と言っては何だが、ゆっくりしていってくれ」
「駄目に決まっているでしょう。だいたい、夜中にサンタが来るまで待っているなんて、『いい子』失格ね。サンタは本当に熟睡している子供の寝室にしか、入ってはいけないルールがある。それを逆にこっちを眠らせて、その隙にプレゼントを取るなんて」
なんて俺達が叫びあっている間に、テーブルに所狭しと料理の数々が並べられていく。どれも高級料理ばかりだ。忍者志望だったので、空腹くらいは耐えられるのだが、これは食欲をそそる。朝から豪華なこった、これが俗にいうクリスマスなのか?
「ごめん、ごめん。だから来年にはもう、僕はプレゼントを受け取れないだろうね。でも僕はこれさえ手に入れれば、もう十分だから」