涙が溢れ出しそうになった
嬉しかった、ただ嬉しかった。頭の中にそれしか感想が無かった。勝利の後の感激という物を人生で初めて味わった気分である。涙が溢れ出しそうになったのをほ必死で堪えた。
「あ…ありがとうございます……」
感動を味わった、ようやく自分が生きているという感じがした。
「君がサンタクロースになってくれた事で、僕の作戦がようやくスタート出来るという物だよ。そうだ、君たちも座ってくれ。お祝いをしよう。使用人、食事の用意をしてくれ」
付いてきた二人も喜んでいるようだった。国谷は制覇様と笑顔で手を触り合っている。美橋もボーっとした顔で制覇様を見ている。打ち解けてくれるといいのだが。
腕を耳の近くでポンポンと音をたてると、数十人のSPが寄って集まり長テーブルの上に古今東西様々な豪華料理が並ぶ。すぐに席が用意された。俺も明日からはこいつらのようなSPとしての仕事に邁進するのだろう。今更、後悔はない。これが俺の選んだ道なのだから。
「さぁ、今日は偉大なる記念日だ。遠慮はいらないよ。存分に霧隠三太君のサンタクロース試験合格を祝いましょう」
悪意の微塵のない完璧な笑顔だった。その瞳には以前の時に合ったような悪戸さは一切感じられず、心の底からの人の愛情という物を体感できた。満足だった、全てが満足だった。
「おい、兄ちゃん。合格おめでとう」
「あぁ、ありがとう……ってぇ。お前は試験の時に同じ部屋だった金髪!!」
「おう。俺もここで働いているんだ。実は制覇様からお前のアシストを頼まれていたんだよ。あと、お前が途中敗退した時の保険な。俺だけじゃないぞ。ほれ、あそこでねーちゃん達に肉を渡そうとしている男。狸のぬいぐるみを着た変な格好をしている奴がいるだろう。見覚えがないか?」
……二次試験の開始時に、席を間違えたとか言って近寄ってきた野郎だ。なんでまだコスプレを続けているのかは知らないが、どうやらそんなキャラらしい。というか、あの試験の開始前に俺の服に制覇様との通信機を設置したのも奴だな。敵を欺くには味方から、やってくれた訳である。奴が一瞬だけこっちを見た、グッジョブサインを出してきたが、腹が立つので無視をする。
「これで晴れて俺もモンスターキャッスルのSPかぁ。サンタクロースとしての仕事も頑張らなきゃな」
恐らく彼女の性格からして俺は休暇など、殆ど貰えないだろう。だが、これは本望である、俺が望んでいる事だ。寧ろ頼りにされない方が困る。