桜台制覇の心の声
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「そうか、奴は合格したか。いやいや、嬉しい限りだよ。これで僕の計画も順調にスタートしたという証だからね。彼には驚かされたが、本当に呆れた存在だ。僕はね、奴が合格しない方に賭けていたんだよ。奴は精神が弱い、僕が見てきた人間のなかじゃトップクラスに。そして私がプレッシャーを与えた、希望という名前のね。人間は苦しむ姿ほど滑稽なものはない。人間はもっともっと絶望の淵に生きるべきだ。悪魔も忍者もサンタクロースも、もっともっと踊って歌って、朽ち果てればいい。世界を華々しく美しく終わらせるには、やはり少しの希望と強大な絶望があればいい。僕がサンタクロースに頼む品が何かも知らずに、随分と有能なピエロだ、まあ使える駒なら利用してやろう。ロリコンなんてタダの変態だ、そして馬鹿だ。馬鹿と変態は使いよう、奴は僕の命令を聞く奴隷と化したんだから。それにしても向こうから覚醒してくれるなんてね、奴をロリコンにするにはもっと時間が掛かると思っていた。奴がサンタ試験から無様に敗北して帰還した後、奴の肉体をバラバラにして改造して、神聖ロリコンロボットとして勤労させるつもりだったのに。まあ同じロボットで、性能が同じならいいか、手間が省けたと感じておこう。それにしてもあのサンタクロースの女。名前なんて忘れちゃったけどさ、馬鹿だよねぇ。今時にあんな直球な性格の人間がいるなんて。絶対に人生を損しているタイプの人間だよ、あれは。僕が本当に君如きの友達になったと思っているかい? サンタクロースのパイプが欲しかったんだ、お前はタダのプレゼント運搬機だ。これからも私の実験のために、必死に駆けずり回るがいい。友達ごっこを永遠とひとりで楽しむがいいんだ。さて、そろそろあの連中がこのモンスターキャッスルに帰る時間か。全くまた新しい女を連れているよ。あれは……大手玩具メーカーの令嬢……ふっふっふ。泳がせる物だねぇ、また私の釣り糸に玩具が引っ掛かった。さぁ、私の大いなる野望の為に必死に頑張ってくれたまえ。人形の諸君」
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「制覇様!! ただいま帰還しました!! お申し付けの通り、この私、霧隠三太は無事、サンタクロース試験に合格いたしました!!」
叫びたかった、俺の合格の嬉しさを誰かと分かち合いたかった。モンスターキャッスルの裏門から帰り着いた俺は、これから職場仲間となる二人と一緒に、桜台制覇様のいる部屋の中に入る。合格していなければ、この場へ帰る事は出来なかった。俺は勝利したのだという事実をここで思い返した。
「おかえりなさい。そしておめでとう霧隠三太君」




